山下洋輔 / It Don't Mean A Thing

山下洋輔のアルバムは36枚所有している。改めて調べたところピアノソロは7枚で、その中のInvitationとIt Don't Mean A Thingがライブ。Invitationの録音は1979年2月22日でフジテレビ・ギャラリー。それから5年後に新宿ピットインでのピアノソロに挑戦。しかし、録音と編集の関係だろうか、拍手がイマイチで盛り上がりに欠けるのが気になる。

ヨースケの一つの真骨頂は、バトンの受け渡しにあると思っている。サックス(例えば坂田明)からもらったフレーズを要素分解して自分流に組み立て、剛速球でドラム(例えば森山威男)に投げつける。この受け渡しに醍醐味がある。ピアノソロで勝負するとき、ヨースケは誰と会話(キャッチボール)するのだろうか。ピットインの観客が冷静にヨースケのピアノを聴いているとなると、鍵盤の上でボールを転がすしかない。CD化で3曲増え曲順も大きく変わったが、全体的な雰囲気はLPと変わらない。

ちなみに、このアルバムのタイトルに関わらず、It Don't Mean A Thingという曲は、邦題「スイングしなけりゃ意味がない」とされ、Doesn'tではなくDon'tなのは南部黒人の方言。

1. 'Round Midnight
2. Hamp's Blues
3. My Funny Valentine
4. Mt. Senba
5. Jamaican Parrot
6. My One And Only Love
7. It Don't Mean A Thing
8. Memories

山下洋輔 - piano

録音 1984年2月12日 / 新宿ピットイン

山下洋輔 / In Europe 1983

CD化でAlone TogetherとBattle Royalの2曲が追加され、LPでは4分33秒にカットされていたPanja Suiteが17分34秒のノーカットで収録。曲順もライブ演奏通りに並べ替えられたようだ。凄みある武田和命のテナーによるスタンダード曲Alone Togetherがアルバムの中間に配置され、ひとつのアクセントとなっている。

洋輔のアルバムは36枚所有。ジャケットを眺めて見ると、彼の変遷がよくわかる。日本を制し、ヨーロッパ、そしてアメリカへと進出。その間に、日本の童謡・落語を題材にし、円周率やピカソを遊び相手にしてきた。1969年9月に山下洋輔トリオ名義でアルバムをリリース。そのブランドを14年間続け、このアルバムで終止符を打った。ある意味、彼の自信と野望を示したアルバムとも言える。ピカソを演じてブランドを脱ぎ捨てたのだ。

1. Panja Suite
2. Strawberry Tune
3. Alone Together
4. Honeymoon Suite
5. Battle Royal
6. Picasso

武田和命 - tenor saxophone
林栄一 - alto saxophone
山下洋輔 - piano
小山彰太 - drums

Recorded on July 8, 1983 at Heidelberger Jazztage.

山下洋輔 / Picasso

洋輔のアルバムは40枚近く所有しているが、このアルバムはワーストに近い。心が揺さぶられないのだ。ヨースケの面白さは想定外にある。10人ものミュージシャンが集まったので、それぞれがまとめようとしたと想像する。まとめればまとめるほど、ヨースケの音楽はつまらなくなる。ピカソという題材を持ち出したのだから、もっと奇想天外な演奏をしてもよかったはず。さらに、1曲目のみのライブ演奏は、たまたまPAからラインアウトしてカセットテープに録音したもの。アルバムとしての一貫性はない。

CD化でトラック5から9の5曲が追加され、その「奇想天外」を期待したが、残念ながら期待外れだった。このアルバムの録音から1年後、83年7月のハイデルベルガージャズテージで演奏したPicassoは、「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランチェスカ・デ・パウラ・フアン・ネポムセーノ・マリア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピニアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ」のピカソだった。

1. Introduction - First Bridge
2. Leavin' And Laughin'
3. Call Of Dawn
4. Picasso
5. Another Picture
6. The Other Picture
7. Knocking Darkness
8. Several Encounters And The Pilgrim
9. Tae's Theme

山下洋輔 - piano
川端民生 - bass
村上ポンタ秀一 - drums

Track 1
ペッカー - percussion
Tracks 2 - 9
岡野等 - trumpet
粉川忠範 - trombone
松風鉱一 - alto saxophone
武田和命 - tenor saxophone
ボブ斉藤 - tenor saxophone
杉本喜代志 - guitar

Track 1
録音1982年8月9日(六本木ピットイン)
Tracks 2 - 9
録音1982年8月31日 & 9月1, 4 & 5日(テイチク堀之内スタジオ)、9月9 & 18日(テイチク会館スタジオ)、9月10日(サンライズ・スタジオ)