山下洋輔 / Clay

1974年6月、西ドイツ・メールスで行われた第3回ニュー・ジャズ・フェスティバルでのライブアルバム。LPのライナーノーツは竹田賢一氏が担当し、こんな解説をしている。

「山下トリオを高く評価していた油井正一氏や悠雅彦氏は、いつもスローで出て腹の探り合いをしながら緊張を高めるという定形化が唯一の弱点と指摘している。だが、カタストローフへ向かうエネルギー曲線が同じパターンを辿ること自体にしびれていた。熱狂していた映画・網走番外地シリーズ。刑務所から出た後の高倉健はいつものパターン。やくざ映画に感情移入することはなくなったが、山田洋次映画に出てくる高倉健は見たくない」。

これは、『幸福の黄色いハンカチ』を暗に示している。映画の公開は77年10月。レーベルenja(エンヤ)のディスコグラフィーを調べると、原盤は74年リリース。国内盤LPはライブから3年以上経過して発売されたのだろうか。ドイツ、エンヤ、ハンカチの3つのキーワードが今のところは結びつかない。それより、山下トリオの生年月日を確認するとこうなる。山下洋輔:1942年2月26日、坂田明:1945年2月21日、森山威男:1945年1月27日。つまり、30歳代に入った山下、30歳代を迎える坂田と森山。彼らはドイツの聴衆を完全にノックアウトした。遠いアジアの島国から来た30歳前後の若者に対して、ヤンヤの喝采。

1. Mina's Second Theme
2. Clay (Dedicated to Muhammad Ali)

Yosuke Yamashita - piano
Akira Sakata - clarinet, alto saxophone
Takeo Moriyama - drums

Recorded on June 2, 1974 at the open-air-III. New Jazz Festival in Moers, Germany.

山下洋輔 / 山下洋輔トリオ

ジャケットは1974年合歓『ジャズイン』の写真を使っているが、73年8月25日のスタジオ録音である。そして、間違いなく一発録り。ここに収められた3曲を、この3人がテイク2などをやるはずがない。録り直しても何の意味もないのだから。そもそもが、2トラ38で販売されていた音源らしい。CDのラベルがそれを示している。この「2トラ38」で会話できる相手は僅かだろう。一眼レフのレンズ「サンニッパ」と同じ。

機械そのものが、ある種のステータスを持っていた時代。ではなぜに、この音源をLPに刻み込まなかったのか。このLPという2文字を説明するのも難しくなってきてしまったのだが。想像できる理由は3つ。まず、演奏時間。収録順に18:50, 10:43, 14:21という長さで、LP両面を埋め尽くすには足りなかった。次に、この過激な演奏はレコード針に悪いと言う評判を恐れた。最後は、レコードをプレスしても在庫を抱えそうなので、オンデマンドでテープコピーの販売とした。さて? いずれにしても、山下トリオ第2期の原点がここにある。

1. ズーボ
2. ミナのセカンドテーマ
3. ミトコンドリア

山下洋輔 - piano
坂田明 - alto saxophone, clarinet
森山威男 - drums

録音 1973年8月25日 / モウリスタジオ

山下洋輔 / Mina's Second Theme

山下洋輔トリオの最初のスタジオアルバム(1969年10月14日録音)。69年9月21日のサンケイホールでのライブConcert In New Jazzがファーストアルバムである。この2枚に共通する曲はGuganのみだが、Concert ... はLPの録音時間の都合でMina's Second Themeの演奏が割愛されている(CDでは収録されたが廃盤状態)。なので、ライブのイメージをスタジオに持ち込もうとしたのだろう。

従って、RoihaniはアルバムMina's ... で初めて録音された曲になるのだろう。タイトルの由来は山下ファンにはよく知られている。12音階の全音「ドレミファソラシド」は「CDEFGABC」。「A」から「イ」を当てはめると「ハニホヘイロハ」となる。「BACD」という音階(ある種の演奏のきっかけ)を思いついて、曲名は「ロイハニ」となった。お見事!一方、Guganの出だしは「グガン、グガン、ダパトトン、グガン、ダパトトン」。森山威男は「ダパトトン」から太鼓を叩き始めるので、森山にとっての曲名「だぱととん」と山下は書いている。

1. Mina's Second Theme / ミナのセカンド・テーマ
2. Roihani / ロイハニ
3. Gugan / グガン

山下洋輔 - piano
中村誠一 - tenor saxophone
森山威男 - drums

Recorded on October 14, 1969. (日本ビクター第2スタジオ)