山下洋輔 / Umbrella Dance

ジャケットはあたかも童話の世界。猫が傘をさして空中散歩。その感覚でレコードに針を落としたら、今ではCDを挿入してプレイボタンを押したら、猫が光速を超えて宇宙空間へ飛び出す勢い。猫踏んじゃった。ではなく、猫飛んじゃった。なのである。

LPでは2曲目のPart IIがIIaとIIbに分断され4曲構成だった。4曲の組曲で起承転結。いや稀少天傑。こんなジャズトリオは他に例がなく稀少で、天も揺るがす傑作を生みだしてきた。CDは分断が解消して3曲構成になり、勢いがさらに加速。猫ぶっ飛んじゃった。

1. Umbrella Dance Part I
2. Umbrella Dance Part II
3. Umbrella Dance Part III

山下洋輔 - piano
坂田明 - alto saxophone
小山彰太 - drums

Recorded on June 16, 1977 at Tonstudio Bauer, Ludwigsburg, West Germany.

山下洋輔 / Inner Space

1976年6月録音のヨースケとアデルハルト・ロイディンガーのデュオアルバムA Day In Munichに続く一枚。前作では、ヨースケに対抗してロイディンガーがベースを弾き過ぎていると感じたが、ここでは互いの言い分を認め合っている。初手合いでは自分の力を発揮することに集中し、2度目の対戦では相手の力をうまく利用しようとしている。結果、観戦する側としては、後者の方が断然面白い。

LPで聴いていた時は、レコードを回す、針を落とす、針を上げて盤を裏返す、という手間があるので、あまり感じなかったが、4曲35分でCDは終わってしまい物足りないのが残念。

1. Country Walk
2. Tight Pants
3. Soft Waltz
4. Green Wave

山下洋輔 - piano
Adlehard Roidinger - bass

Recorded on June 24, 1977 at Europe-Sound Studio, Offenbach.

山下洋輔 / Montreux Afterglow

1曲目はアルバート・アイラーのGhostsだが、ただのGhostsではない。坂田明が「赤とんぼ」を放り込み、さらには雄叫びまで飛び出してしまう。ジャズが持っている自由さ、奥深さ、そしてスピードと奔放さ。坂田の真骨頂がここにある。西洋人から見れば、このアルバムのジャケットはまさしく「ヤクザ」。演奏に腰を抜かし、ジャケットで恐れおののくだろう。1976年7月9日、日本のジャズがヨーロッパで勝利した日。この日を祭日にしよう!

ライナーノーツで野口久光氏がこう書いている。「山下洋輔トリオの演奏、山下洋輔の主張する音楽のすばらしさを適確に言葉で表すことはかなりむずかしいのだが、彼のもつオリジナリティ、演奏によって自分自身を百パーセント表現しているその姿勢がまず好きだ。彼の音楽はいうところのフリージャズの範疇に入るジャズだが、彼の音楽にはこの系列のジャズに多い難解さ、独善的なところがなく、きいていて爽快で心たのしくなる」。同感。「爽快ジャズ」なのだ。

1. Ghosts
2. Banslikana

Yosuke Yamashita / 山下洋輔 - piano
Akira Sakata / 坂田明 - alto saxophone, vocal
Koyama Shota / 小山彰太 - drums

Recorded in live on July 9, 1976 at Montreux Jazz Festival, Casino De Montreux, Switzerland.