山下洋輔 / First Time

1979年6月29日、山下トリオはニューポート・ジャズ・フェスティバルに初出演。その模様がアルバムHot Menuに収録された。それに先立って、AEOC(アート・アンサンブル・オブ・シカゴ)の主要メンバー〈Joseph Jarman(ジョセフ・ジャーマン)、Malachi Favors Maghostus(マラカイ・フェイヴァース)、Famoudou Don Moye(ドン・モイエ)〉と、ヨースケがスタジオ録音したのが本作First Timeである。

全曲がヨースケの作品であり、3人の共演者の頭文字からFor D, For M, For Jと曲名がついた。岩浪洋三氏によるライナーノーツではこう書かれている(1979年9月付け)。「山下洋輔はこのセッションには大変満足だったという。ニューヨークも黒人ジャズメンとの共演もみんなはじめてだったので、アルバムタイトルは〈ファースト・タイム〉とつけられた」。AEOCの3人も日本のジャズ、そしてヨースケのジャズに爽快感を得たのではないだろか。問題は1つ。Hot MenuはCD化されたが、First Timeは未だにCD化されていない。権利交渉が面倒なのだろうか。

1. For D
2. For M
3. For J
4. Thus We Met
5. Cymbal Bird

山下洋輔 - piano
Joseph Jarman - alto saxophone, flute
Malachi Favors Maghostus - bass
Famoudou Don Moye - drums, cymbals, gongs, percussion

Recorded on June 26 & 27, 1979 at Generation Sound Studio, NYC.

山下洋輔 / Invitation

ピアノソロ・ライブである。ギャラリーを会場としたライブ録音。本アルバムの商品紹介には、「画家、谷川晃一の個展とのコラボレーション」とある。ところが、ジャケット裏面の英文ライナーノーツに、次の一文を発見。by a coincidence, an exhibition was being held there by Japan's pioneer of "art pop" namely KOICHI TANIKAWA.(偶然にも、日本の「アートポップ」のパイオニアである谷川晃一による展覧会が東京で開催されていた)。コラボレーションは間違いではないが、事前に企画されたものではない。

話は変わるが、セシル・テイラーの1981年のピアノソロ・ライブGardenには失望した。テイラーのソロは、演じる側と聴く側に一つの境界が存在する。一方の洋輔のソロは、聴く側を包み込む、ないしは引きずり込む印象を受ける。芸術と演芸の違いとも言えるかも知れない。なお、本作は完成度の高いアルバムなのだが、CD化はされていない。

1. Green Sleeves
2. On The Road
3. Mokujiki - 木喰
4. Let's Cool One
5. I Can't Get Started
6. A Night In Tunisia
7. Prelude To A Kiss

山下洋輔 - piano

録音 1979年2月22日 / 東京・フジテレビ・ギャラリー

山下洋輔 / 砂山

山下トリオでは、これまで「赤とんぼ」入りのゴーストが大きな反響を呼んでいた。そして、積極的に童謡を取り入れたのが、このアルバム。全て中山晋平の曲である。タイトルは「砂山」だが、「きいちのぬりえ」にすべきだったと思う。さて、「あの町この町」はメロディーが明確に聴こえるが、どこが「砂山」で、どこから「うさぎのダンス」なのか?昔、我が家に遊び(飲み)に来た友人に、アルバムタイトルを隠して聴いてもらったが、回答は得られず。

「ソソラ ソラソラ ウサギのダッダー」…と「ダンス」が「ダッダー」になり、「ダッダー」がキーフレーズとして展開されていく。これが洋輔の真骨頂だろう。恐らく、洋輔はシメタ!と思ったに違いない。「ソソラ ソラソラ」は「ダッダー」へ行くための助走。「ダッダー」のフレーズだけで何でもできそうだと…。ズ・ル・イ。

1. 砂山
2. うさぎのダンス
3. あの町この町

山下洋輔 - piano
坂田明 - alto saxophone, alto clarinet
小山彰太 - drums

清水靖晃 - tenor saxophone
岡野等 - trumpet
中沢健次 - trumpet
向井滋春 - trombone
杉本喜代志 - guitar

録音 1978年6月21 & 22日 / 東京・ビクタースタジオ