Wynton Kelly / Wynton Kelly!

日本では「枯葉」のタイトルで親しまれてきたアルバム。だが、ジャケットには収録曲のとしてAutumn Leavesの小さい文字があるだけ。で、タイトルはというとビックリマークのついたWynton Kelly!なのである。新譜「ウィントン・ケリー!」では混乱するので日本人に馴染み深い「枯葉」としたのだろう。1曲目の「降っても晴れても」や8曲目の「風と共に去りぬ」でも問題なかったが、文字数が多すぎるということだろうか。

CDをずっと探していたが、2枚組しか市場には出ていなかった。2枚目は別テイクを集めたものなので自分には必要なかったものの、格安の2枚組中古CDを見つけて購入。すると、LPにはなかったマスターテイクの2曲Someday My Prince Will ComeとChar's Bluesが追加されていた。結果的には、2枚組を購入して正解。

ディスコグラフィーを詳しく調べると、不思議な点が浮かび上がってきた。1961年7月20日と21日の録音。20日は、ベースのポール・チェンバースを迎えて15テイクが録音されている。翌21日は、同じメンバーで9テイク。その後、ベースをサム・ジョーンズに変えて4テイク。いや、もしかするとチェンバースが大幅に遅刻し、スタジオを借りる時間の関係から、ジョーンズが急に呼び出されて21日のセッションは始まったのかも知れない。いずれにしろ、2日間で28テイクも録ったのでビックリマークなのだ。

Disc 1 [master take]
1. Come Rain Or Come Shine
2. Make The Man Love Me
3. Autumn Leaves
4. Surrey With The Fringe On Top
5. Joe's Avenue
6. Sassy
7. Love, I've Found You
8. Gone With The Wind
9. Someday My Prince Will Come
10. Char's Blues

Disc 2 [alternate take]
1. Autumn Leaves [take 1]
2. Autumn Leaves [take 2]
3. Autumn Leaves [take 3]
4. Char's Blues [take 1]
5. Char's Blues [take 2]
6. Joe's Avenue [take 1]
7. Joe's Avenue [take 4]
8. Joe's Avenue [take 8]
9. Joe's Avenue [take 9]
10. Someday My Prince Will Come [take 6]
11. Surrey With The Fringe On Top [take 3]

Master take: Tracks 3 - 5, 7 - 9 & 10
Wynton Kelly - piano
Paul Chambers - bass
Jimmy Cobb - drums
Recorded on July 20 (tracks 3,5,9) & 21 (tracks 4,6-8,10), 1961 at Bell Sound Studio A, NYC.

Master take: Tracks 1, 2 & 6
Wynton Kelly - piano
Sam Jones - bass
Jimmy Cobb - drums
Recorded on July 21, 1961 at Bell Sound Studio A, NYC.

Wynton Kelly / Kelly At Midnite

ここには名曲はないが、名盤である。なぜ名盤かと言うと、フィリー・ジョー・ジョーンズのドラムが唄っているから。この「唄っている」という感覚をドラムで表現するのは極めて難しい。単なるリズムではなく、単なるスイングでもない。ある種の語りかけてくる感覚。ピアノトリオのアルバムであるが、ドラムに神経を集中させて聴くと、ケリー、チェンバース、ジョーンズの3人は凄い演奏をしていることが分かる。

このアルバムが録音されたのは1960年4月。自分が所有するアルバムで、同年同月に録音されたアルバムを調べてみた。ちょうど10枚。当たり年、当たり月であった。チェンバースは、このアルバムを含めて3枚に登場。

1. Temperance
2. Weird Lullaby
3. On Stage
4. Skatin'
5. Pot Luck

Wynton Kelly - piano
Paul Chambers - bass
Philly Joe Jones - drums

Recorded on April 27, 1960 at Bell Sound Studios, NYC.

Wynton Kelly / Kelly Great

このアルバムは、賛否両論があるだろうな。メンバーを見れば文句なし。ただ、アルバムとしての全体構成が、どうもメリハリがない。一日で録り切って、「ハイ、ご苦労様でした」という感じ。つまり、このメンバーなら当たり前のことをやった、と思えてしまうのだ。冒険した気配がしない。

しかしである。全5曲中のMama "G"とSydneyの2曲はウェイン・ショーター作品であり、ショーターのディスコグラフィーを見ると、このアルバムが最初に出てくる。そして、3ヶ月後に初リーダーアルバムIntroducing Wayne Shorterを録音しているのだ。ウィントン・ケリー名義なのだが、ショーターのデビューアルバムとして聴くと、全く意味合いが違ってくる。ショーター・グレイト!

1. Wrinkles
2. Mama "G"
3. June Night
4. What Know
5. Sydney

Wayne Shorter - tenor saxophone
Lee Morgan - trumpet
Wynton Kelly - piano
Paul Chambers - bass
Philly Joe Jones - drums

Recorded on August 12, 1959 at Fine Sound Studios, NYC.