Thelonious Monk / With John Coltrane

全6曲のうち、5曲でコルトレーンが演奏しているので、アルバムタイトルに嘘はないのだが、決してモンクとトレーンの一騎打ちという内容ではない。コルトレーンとピアノトリオのセッションが3曲、コルトレーンを含めたフロント4管のセッションが2曲、モンクのソロが1曲(アルバムThelonious Himselfに収録された曲Functionalの別テイク)という3つのセッションで構成されている。

つまり、モンクが、というかリバーサイドがコルトレーンの名前を使い売り上げを目論んでリリースしたアルバムである。モンクの曲を精一杯消化するコルトレーンの姿が浮かんでくるが、カルテットのセッションだけは、録音日が特定されていないという迷盤なのだ。

1. Ruby, My Dear
2. Trinkle, Tinkle
3. Off Minor
4. Nutty
5. Epistrophy
6. Functional

Tracks 1, 2 & 4
John Coltrane - tenor saxophone
Thelonious Monk - piano
Wilbur Ware - bass
Shadow Wilson - drums
Recorded in July, 1957 at Reeves Sound Studios, NYC.

Tracks 3 & 5
John Coltrane - tenor saxophone
Coleman Hawkins - tenor saxophone
Gigi Gryce - alto saxophone
Ray Copeland - trumpet
Thelonious Monk - piano
Wilbur Ware - bass
Art Blakey - drums
Recorded on June 25 & 26, 1957 at Reeves Sound Studios, NYC.

Track 6
Thelonious Monk - piano
Recorded on April 12, 1957 at Reeves Sound Studios, NYC.

Thelonious Monk / Monk's Music

モンクのアルバムの中で最もユニークなジャケット。完全なる脇見運転。しかも、左手には火のついた煙草。ジャケットにthelonious monk septet with coleman hawkins, art blakey, gigi gryceとあるが、コルトレーンの名前はない。まだまだオマケみたいな存在だったことが分かる。演奏の中身も、これまたユニーク。というか間違いが多発。普通なら録り直しのはずだが、モンクは腹が減っていたのか、眠かったのか、とっとと終わらせたかったに違いない。それを許してしまったプロデューサーのオリン・キープニュースも太っ腹である。

ということで、これがモンクの音楽Monk's Musicというタイトルにしたことが、このアルバムの価値を妙に高めている。アドリブが入るタイミングの間違いなんて取るに足りないこと。ジャズとはそういうものだ。間違いではなく、そうしたかっただけで一件落着。学生時代のジャズ研の頃。「ベースのリズム、走っていないか?」「走りたいから…」。それで終わりである。「研究の進捗、遅れていないか?」「じっくりやりたいから…」。そんなもんである。

1. Abide With Me
2. Well, You Needn't
3. Ruby, My Dear
4. Off Minor [take 5]
5. Off Minor [take 4]
6. Epistrophy
7. Crepuscule With Nellie [take 6]
8. Crepuscule With Nellie [take 4 & 5]

Coleman Hawkins - tenor saxophone
John Coltrane - tenor saxophone
Gigi Gryce - alto saxophone
Ray Copeland - trumpet
Thelonious Monk - piano
Wilbur Ware - bass
Art Blakey - drums

Recorded on June 26, 1957 at Reeves Sound Studios, NYC.

Thelonious Monk / Thelonious Himself

このアルバムは全9曲中の8曲がモンクのピアノソロ。そして、コルトレーンとウィルバー・ウェアのベースによるトリオでのMonk's Moodが最終曲に組み込まれている(CD化でラウンド・ミッドナイトの創作過程の録音がラストに追加)。この最終曲が、本作に見事な余韻を残している。モンクらしい不協和音の連続ではないが、緊張感が溢れ、ちょっと油断すると降り注ぐ音が指の隙間から零れ落ちてしまう。

CDのライナーノーツには、スイングジャーナル1962年12月号に掲載された藤井肇氏のレビューがある。「何の掣肘(せいちゅう)も受けず、独り無我の境地にあって陶酔しているモンクの姿は、むしろ孤独を楽しむ高僧といった感が深い」。見事に確信をついた一文。このアルバムは、孤高のモンクと対峙して聴かなければならない。たとえジャズ喫茶であっても、コーヒーカップの鳴る音すら邪魔になるアルバム。ジャズを、そしてモンクを長年聴いてきて良かったと思える一枚。

1. April In Paris
2. (I Don't Stand) A Ghost Of A Chance With You
3. Functional
4. I'm Getting Sentimental Over You
5. I Should Care
6. 'Round Midnight
7. All Alone
8. Monk's Mood
9. 'Round Midnight (In Progress)

Tracks 1 - 7 & 9
Thelonious Monk - piano
Recorded on April 12, 1957 in NYC.

Track 8
John Coltrane - tenor saxophone
Thelonious Monk - piano
Wilbur Ware - bass
Recorded on April 16, 1957 at Reeves Sound Studios, NYC.