Thelonious Monk / Brilliant Corners

「50年代のジャズをじっくり聴いてみたいのですが?」と問われたら、迷わず差し出すアルバム。「じっくり」がなければ、ロリンズのSaxophone Colossusを紹介するだろう。どちらも1956年の作品で、ロリンズは6月にリーダーアルバムSaxophone ... を録音し、その半年後に本作に声がかかった。ちなみに、ドラムのマックス・ローチはどちらにも参加。

この2枚の決定的な違い。ロリンズはロリンズになることを目指していた。モンクはモンクであることを証明しようとしていた。モンクの緊張感がある和音、そして不安定な音階。これこそがジャズの醍醐味。ロリンズは、このアルバムに参加してしまったことで、永遠のロリンズ探しの旅に出てしまったのではないだろうか。

1. Brilliant Corners
2. Ba-Lue Bolivar Ba-Lues-Are
3. Pannonica
4. I Surrender, Dear
5. Bemsha Swing

Tracks 1, 2, 3 & 4
Sonny Rollins - tenor saxophone
Ernie Henry - alto saxophone
Thelonious Monk - piano
Oscar Pettiford - bass
Max Roach - drums
Recorded on October 9 & 15, 1956 at Reeves Sound Studios, NYC.

Track 5
Sonny Rollins - tenor saxophone
Clark Terry - trumpet
Thelonious Monk - piano
Paul Chambers - bass
Max Roach - drums
Recorded on December 7, 1956 at Reeves Sound Studios, NYC.

Thelonious Monk / The Unique

ジャケット裏にはサブタイトル的にvery personal treatments of great standardsと書かれている。「名高いスタンダード曲の極めて個人的な奏法(解釈)」と、タイトルThe Uniqueを補足している形だが、そもそもジャズとはそういう音楽なので、モンクの場合は、「他のミュージシャンとは全く異なる奏法」と補足すべきだろう。粟村政昭氏は、ライナーノーツの最後で次のように結んでいる。粟村氏はサブタイトルに気がつかなかったようだ。

ここに収められた7曲のスタンダードナンバーに聞かれるモンクの解釈は、いわゆるスタンダード曲なるものに対する聞き手のイメージを、皮肉な笑みを浮かべながら次々に覆していくような、小さな意外性の連続となっている。言うならば、これがモンク流の乾いたユーモアということなのであろうが、もしアルバムタイトルの『ザ・ユニーク』という言葉がこの点を指しているものとするならば、ここに収められた音楽に対する献辞は、まさにユニークなる言葉以外の何物でもあり得まい。

1. Liza
2. Memories Of You
3. Honeysuckle Rose
4. Darn That Dream
5. Tea For Two
6. You Are Too Beautiful
7. Just You, Just Me

Thelonious Monk - piano
Art Blakey - drums (tracks 1,3-7)
Oscar Pettiford - bass (tracks 1,3-7)

Recorded on March 17 and April 3, 1956 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Thelonious Monk / Plays Duke Ellington

モンクのアルバムの中では、「非」個性的な一枚である。モンクがエリントンの曲を演奏しても、当然ながらモンクに変わりはないのだが、モンクらしさが霧の中に隠れてしまっている。自分自身とは葛藤せずに、まとめることに注力。しかし、それを望んだのはモンクではない。LPのライナーノーツでは、油井正一氏がこのアルバムの経緯を詳しく書いている。

当時、モンクが在籍していたプレスティッジにはマイルスやMJQがいて、モンクは不遇であった。ナット・ヘントフにリバーサイドへの移籍を勧められ移ったものの、オリン・キープニュースらの企画によって、大衆受けを狙ったエリントン作品集を演奏させられてしまった。ヘントフは、その結果にがっかりして失敗作と評価。その評価が尾を引き、やがては入手困難となって「幻の名盤」に。ジャケットはルソーの「ライオンの食事」。『モンク=ライオン』とすれば、モンクをうまく手なずけたという意味だろうか。

1. It Don't Mean A Thing (If It Ain't Got That Swing)
2. Sophisticated Lady
3. I Got It Bad (And That Ain't Good)
4. Black And Tan Fantasy
5. Mood Indigo
6. I Let A Song Go Out Of My Heart
7. Solitude
8. Caravan

Thelonious Monk - piano
Oscar Pettiford - bass
Kenny Clarke - drums

Recorded on July 21 & 27, 1955 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.