高田渡 / 渡

前作『ねこのねごと』から10年を経て発売されたアルバム。ここに、高田渡というミュージシャンの生き方が見えてくる。アルバムによるマーケットでの評価には一切関心がなく、旅回りをして歌い続けた。2005年4月3日、北海道白糠町でのライブ終了後に倒れ、釧路市内の病院に入院。同月16日、病院で心不全により死去。享年56だった。

渡は、必ずしも自身の作品にこだわっていない。歌いたくなる詩に出会えれば、それに曲を付ける。もしくは、トラディショナル曲のメロディーを組み合わせる。渡の代表曲である「生活の柄」も、山之内貘の詩に渡が曲を付けた。そして、「イキテル・ソング ~ 野生の花」はアメリカ民謡、「風」はイギリス民謡からメロディーを拝借している。このアルバムでの渡自身だけによる作品は「仕事さがし」と「酒心」。「酒心」は次のように歌い始める。詩というより、つぶやき。なので、この曲だけはバック・ミュージシャンはいなくて、ギターの弾き語り。

雨が降るといっては呑み
晴れれば 晴れたで呑む
雪で 一杯
紅葉 で一杯
夏の夕立後は さわやかに一杯

1. 仕事さがし
2. スキンシップ・ブルース
3. 病い
4. 相子
5. イキテル・ソング ~ 野生の花
6. ホントはみんな
7. こいつは墓場にならなくちゃ
8. 夕暮れ
9. 酒心
10. 生活の柄
11. さびしいといま
12. 風

発売 1993年5月25日

高田渡 / ねこのねごと

結局のところ、ワタル的生き方でいいのではないかと。その日の始まりは「おじいさんの古時計」、夕食を迎える時は「私の青空」。そんな一日をたんたんと唄って、飲み干してしまうワタル。

人生を唄っている訳ではない。その日を唄っているだけ。そこに、ワタル的な歌があって唄がある。

1. おじいさんの古時計
2. 冬の夜の子供の為の子守唄
3. 石
4. ねこのねごと
5. 酒が飲みたい夜は
6. ライムロック
7. いつか
8. バイバイ
9. なまけもの
10. 私の青空

発売 1983年10月

高田渡 / ヴァーボン・ストリート・ブルース

1977年のリリースだが、CDでの再発時に高田渡自身が1992年9月25日付けで次のように書いている。「結成というか、湧き出したのは1975年?頃だと思う、当時デキシーランド・ジャズに狂っていたテナー・バンジョーの小林清君、でその友達でベースの大庭昌浩君、そしてボク・高田渡、何でも演れる佐久間順平君。なんか面白いの演ろうよ!とオリジナル四人衆の出来上がり。〈ヒルトップ・ストリングス・バンド〉はいつも8~10台程の楽器を持ち歩いた。バンドボーイ、マネージャーも無しで、この楽器達を両脇にかかえ、日本中を旅した」。本作の根っこは、デキシーランド・ジャズなのだ。

そして、2005年に旅立った高田渡を追悼し、2008年4月に紙ジャケットで復刻。ベースの大庭氏による追悼文から抜粋。「(本作を)録音する事になり、銀座の音響スタジオを集まりました。この時、驚いたのは、この立派なスタジオに酒屋が来て、ビール1ケースに日本酒、ウイスキー、カワキモノなど配達に来たのです。いつのまにか高田さんがたのんでいたのです。酒を飲みながら録音するとはびっくりしました」。どうしようもなくジャズなのである。

1. ヴァーボン・ストリート・ブルース
2. 夜汽車のブルース
3. ウイスキーの唄
4. シグナルは青に変わり汽車は出てゆく
5. G・M・S(グラフィス・マンドリン・ソサエティ)
6. その向こうの
7. ダイナ
8. 猿股の唄
9. 座蒲団
10. すかんぽ(哀れな草)
11. リンゴの木の下でドミニクは世界の日の出を待っていた

高田渡 - vocal, guitar, autoharp, mandolin, ukulele
佐久間順平 - mandolin, violin, bouzoukee, vocal, guitar, ukulele
小林清 - banjo, vocal, guitar, ukulele
大庭昌浩 - bass
外山義雄 - trumpet
後藤雅広 - clarinet
池田幸太郎 - trombone
池田光夫 - bandoneon

Recorded on June 6 & 13, 1977 at ONKIO HAUSE.