Sonny Rollins / Nucleus

1966年5月にアルバムEast Broadway Run Downを録音。6年間の空白をおいて、Next Album(72年7月)を録音。その後、Horn Culture(73年6-7月録音)、In Japan(73年9月ライブ)、The Cutting Edge(74年7月ライブ)、Nucleus(75年9月録音)と完全復帰を果たしたロリンズ。ただし、空白期間の66年11月にオーストリア、68年9月にはデンマークでライブ演奏しているので、実質的には、ジャズの世界から身を引いたのは4年間。活動休止は3度目の出来事。

アルバムタイトルの由来。ロリンズは、野球選手Donald Newcombe(ドン・ニューカム)と顔が似ていると良く言われていたらしい。で、ロリンズのニックネームはニューカム。57年9月には、アルバムNewk's Timeを録音。エムトゥーメがさらに工夫してNucleusという作品を書いた。このアルバムの最大の聴きどころは、一曲目のLucille。学生時代に何度も練習した。不思議なことに、ロリンズはこの曲をほとんど演奏していない。Lucilleとはロリンズの奥さん(2004年11月27日に76歳で他界)の名前。

1. Lucille
2. Gwaligo
3. Are You Ready?
4. Azalea
5. Newkleus
6. Cosmet
7. My Reverie

Sonny Rollins - tenor saxophone, soprano saxophone
Bennie Maupin - tenor saxophone, bass clarinet, saxello, lyricon
Raul de Souza - trombone
George Duke - piano, electric piano, synthesizer
Chuck Rainey - electric bass
Bob Cranshaw - electric bass
Roy McCurdy - drums
Eddie Moore - drums
Mtume - congas, percussion

Recorded on September 2, 3, 4 & 5, 1975 at Fantasy Studios, Berkeley, CA.

Sonny Rollins / The Cutting Edge

ロリンズのジャズは駆け引きではない。駆け引きは、集中して聴かないとその本質の面白さが分からない。ロリンズの演奏は、ごく単純な「駆け」だけ。どれだけ攻め進んでグループのポテンシャルを上げるかが鍵になる。演奏中に、ロリンズがメンバーから刺激をもらい、あらたな発想を得るということもない。これは、ジャズの世界では珍しい。リーダーとメンバーという形が明確に築かれている演奏形態。「豪快な」とか「豪放な」と常に形容されるロリンズだからこそのジャズ。

1974年の第8回モントルー・ジャズ・フェスティバルで、ロリンズ・ジャズは炸裂。2千人以上の観客を圧倒した。前作In Japanは、中野サンプラザでの73年9月のライブ。ロリンズの十八番であるSt. Thomas, Alfie, Moritatなどが中心の演奏。いま一つ盛り上がりに欠けた。つまり、観客はいまのロリンズが聴きたいのである。The Cutting Edgeに収録された5曲は、アルバムとしては全て初演。最後のSwing Low, Sweet Chariotでは、バグパイプ奏者のRufus Harley(ルーファス・ハーレー)が登場。ハーレーには、かなりの自由が与えられている。ジャズには縁のないバグパイプを使うことで、ロリンズはアイデアを得ようとしたのだろう。

1. The Cutting Edge
2. To A Wild Rose
3. First Moves
4. A House Is Not A Home
5. Swing Low, Sweet Chariot

Sonny Rollins - tenor saxophone
Yoshiaki Masuo - guitar
Stanley Cowell - piano
Bob Cranshaw - electric bass
David Lee - drums
Mtume - congas
Rufus Harley - bagpipes (track 5)

Recorded on July 6, 1974 at The Montreux Jazz Festival, Switzerland.

Sonny Rollins / In Japan

中野で育った。サンプラザが開業したのは1973年6月。高校2年の時だった。建設中の頃、あの急な斜面をどうやって登ろうかと、中学の悪友と話していたことを思い出す。高2ぐらいからジャズを少しずつ聴き始めた。ロリンズと出会ったのはその先。なので、このライブのことは全く知らなかった。それより、同じ年にローリングストーンズの来日公演のチケットを入手するために、授業を抜け出し徹夜で読売新聞近くに並んだ。だが、麻薬所持によって来日公演は夢と消えたのだった。

このライブアルバムは、当時のロリンズを知るには良い材料。ほとんど冒険していないという意味でも。2枚組CDのコンプリート版には、3曲(Sais, God Bless The Child, Hold 'Em Joe)が追加。その中にサプライズがあるとは思えない。Alfieでのロリンズのアドリブには、Softly, As In A Morning Sunriseのフレーズが出てくる。ロリンズらしい遊び心だけど、観客がまったく反応していない。この瞬間だけを捉えると、失敗に終わったコンサート。サンプラザが解体される前に、冒険心一杯のロリンズ節を聴きたい。もう89歳だから無理かなぁ。

1. Powaii
2. St. Thomas
3. Alfie
4. Moritat

Sonny Rollins - tenor saxophone
Yoshiaki Masuo - guitar
Bob Cranshaw - bass
David Lee - drums
Mtume - percussion

Recorded on September 30, 1973 at Nakano Sun-Plaza, Tokyo.