坂田明 / Fisherman's.com

坂田明が自身のサイトで次のように語っている。「もう長いことBILL Laswellとのプロジェクトをやっているが、ここらでバシッと決めないと俺もしめしがつかないな、と思っていた。民謡も色々とやってみたが、もう自分で歌うしかない、というところまで来た。ニューヨークで堂々と自分を出すには、今はこれしかない」。

そして、ライナーノーツでは、なかにし礼が『命の叫び』と題してこう書いているのだ。「坂田明はこのCDの試みによって、アジアとヨーロッパの合体に成功した。この声を聴いてふるえるものは、日本人としての魂などという生易しいものではない。人間の根元的な命の叫びに、私たちの命が呼応するのである」。十分にこのアルバムのことが語られているので、これ以上書くことはない。ジャケットの装丁も素晴らしい。三つ折りになっていて、自筆のCDラベルと演目。

1. 貝殻節(鳥取県民謡)
2. 音戸の舟唄(広島県民謡)
3. 斉太郎節(宮城県民謡)
4. 別れの一本杉(作詞/高野公男, 作曲/船村徹)

Akira Sakata - vocals, alto saxophone, synthesizer
Bill Laswell - electric bass, synthesizer bass
Pete Cosey - electric guitar
Hamid Drake - drums, conga

Recorded on October 17 & 18, 2000 at Orange Music Sound Studio, New Jersey.

Shannon Jackson / Street Priest

清水俊彦の著書『ジャズ転生』では、1980年代のジャズを鋭く批評しているのだが、その第1章でこのアルバムが登場する。

「80年代に入って、アメリカ黒人の創造的音楽は、オーネット・コールマンのハーモロディック理論を主要な跳躍台として、ラディカリズムへの一つの突破口を開いた。フリー・ファンクと呼ばれる動きだが、そのなかで成功と独創性をフルに体現しているのがロナルド・シャノン・ジャクソンである。〈中略〉このバンドは、リーダー(ジャクソン)のドラム奏法の卓越さと即興性と作曲力を反映している」と始まり、「ヴァイオレンスにおいてこれほど浄化的に、リリシズムにおいてこれほど物悲しくサウンドするバンドを、ぼくはまだ聴いたことがない」と締め括る。

調和/不調和をごちゃ混ぜしたこんな音楽を、ジャクソンは40年以上前に演奏していた。その頃、ミュージシャンは、表現の自由を追い求めていたに違いない。そして、ジャクソンは1987年12月に坂田明のアルバム『蒙古』に参加。だが、2013年10月に73歳で惜しくも逝ってしまった。ちなみに、本作の中古CDは74,733円で取引されている。それだけ価値が高いアルバム。自分には手を出せないが。

1. Street Priest
2. Sperm Walk
3. City Witch
4. Sandflower
5. Hemlock For Cordials
6. Chudo Be

Lee Rozie - saxophone
Zane Massey - saxophone
Vernon Reid - electric guitar
Reverend Bruce Johnson - electric bass
Melvin Gibbs - electric bass
Ronald Shannon Jackson - drums

Recorded on June 13, 14, 15 & 16, 1981 at Studio Nord, Bremen.

鈴木勲 / Hip Dancin'

FM東京の渡辺貞夫の番組『マイ・ディア・ライフ』に鈴木勲がゲスト出演して、8弦のセロを使って演奏したことを覚えている。基本の4弦に共鳴するような構造にしたと言っていた。その番組が、このアルバムのリリース前だったのか、後だったのか。たしか、アローン・トゥゲザーをソロで演奏していた記憶があり、こういうジャズもあるのかと興奮した。

その興奮は、ラジオから流れてくるある種のライブ演奏で、しかもソロだったからだろう。このアルバムからは、その時の興奮が伝わってこない。主役のセロに対して、ピアノ、ギター、ベース、ドラムという構成が、互いの瞬発力を妨げている。特にエレクトリックピアノが入る曲では、セロの響きを台無しにしているのだ。

1. Hip Dancin'
2. We'll Be Together Again
3. Sack O' Woe
4. Falling In Love With Love
5. Alone Together

渡辺香津美 - guitar
辛島文雄 - piano, electric piano
鈴木勲 - cello
Sam Jones - bass
Billy Higgins - drums

Recorded on April 17, 1976 at Onkyo House, Tokyo.