Miles Davis / Aura

マイルスは、1984年末にレオニー・ソニング音楽賞を受賞。これは、デンマークによって、音楽的に著しい成果を上げた人物に対して贈られる賞で、主にクラシック奏者が対象。マイルスが初めてのジャズミュージシャン、そして黒人だった。この受賞式典前に、ソニング財団からデンマークの作曲家Palle Mikkelborg(パレ・ミッケルボルグ)へマイルスをソロリストとするオーケストラ作品の制作依頼があったらしい。そいう背景で、本作は85年初頭に録音された。

ところが、マイルス自叙伝②を読むと奇妙なことが書いてある。「コロンビアがレコードを出すはずだったが、約束を取り消されて、オレは〈オーラ〉というタイトルになる予定だったこのレコーディングを終わらせるために、連邦芸術基金の助成金を貰わなきゃならなかった。そもそもそれが、オレとコロンビアの関係の終わりのきっかけだった」。

ここでのレコーディングとはマスタリングを示していると思うが、助成金によってその費用と版権を得ようとしたのだろうか? さらに、調べていくと、コロンビアはマイルスの自叙伝発刊と本作の同時発売を考え、リリースを先延ばしする計画だった。結局、本作は89年9月に自叙伝と共に発売され、ジャケットの写真と自叙伝の表紙が、トランペットを持った同じ服装のマイルスになっている。

1. Intro
2. White
3. Yellow
4. Orange
5. Red
6. Green
7. Blue
8. Electric Red
9. Indigo
10. Violet

Miles Davis - trumpet
Benny Rosenfeld, Idrees Sulieman, Jens Winther, Palle Bolvig, Perry Knudsen - trumpet, flugelhorns
Jens Engel, Ture Larsen, Vincent Nilsson - trombone
Ole Kurt Jensen, Axel Windfeld - bass trombone
Axel Windfeld - tuba
Jesper Thilo, Per Carsten, Uffe Karskov, Bent Jædig, Flemming Madsen - reeds, flute
Bent Jædig, Flemming Madsen, Jesper Thilo, Per Carsten, Uffe Karskov - saxophones, woodwinds
Kenneth Knudsen, Ole Kock Hansen, Thomas Clausen - keyboard
Bjarne Roupe, John McLaughlin - guitar
Niels-Henning Ørsted Pedersen - bass
Bo Stief - Fender bass and fretless bass
Vincent Wilburn jr., Lennart Gruvstedt - drums
Vince Wilburn - electric drums
Ethan Weisgaard, Marilyn Mazur - percussion
Lillian Thornquist - harp
Niels Eje - oboe, English horn
Eva Hess-Thaysen - vocals
Palle Mikkelborg - producer, additional trumpet and flugelhorn

Recorded in January 31 - February 4, 1985 at Easy Sound Studio, Copenhagen, Denmark.

Miles Davis / You're Under Arrest

マイルスなので聴き通せる。つまり、我慢ができる。ポップスとして聴くなら随所に楽しみがあるが、ジャズとして聴くと何度聴き込んでも新たな発見はほとんどない。この音楽でUnder Arrest(逮捕された)感覚にはならないのだ。マイルスは、ジャズを、そして音楽を自ら切り開いてきたミュージシャンであることは間違いない。だからこそ「帝王」と呼ばれた。だがしかし、このアルバムでは他者を意識して作った感じがする。

マイルス自叙伝②によると、本作のコンセプトは、どこに行っても黒人と警官の間に存在する問題を基にしたとある。そして、こう語っている。「今は核による大虐殺にさらされ、精神的にも閉じ込められている。〈中略〉Then There Were None(そして誰もいなくなった)という曲では、シンセサイザーで、核爆発を思わせる、風がうなって炎が燃え上がるようなサウンドを作り出したんだ。その後で聞こえてくるオレの物悲しいトランペットは、泣き叫ぶ赤ん坊とか、生き延びて悲しむ人々の泣き声を意味するものだ」。なんとも、詰め込み過ぎという印象。

1. One Phone Call / Street Scenes
2. Human Nature
3. MD 1 / Something's On Your Mind / MD 2
4. Ms. Morrisine
5. Katia Prelude
6. Katia
7. Time After Time
8. You're Under Arrest
9. Medley: Jean Pierre / You're Under Arrest / Then There Were None

Miles Davis - trumpet, "Police voices, Davis voices" (track 1), synthesizer (tracks 5,6)
John McLaughlin - guitar (tracks 4-6)
John Scofield - guitar (tracks 1-3,7-9)
Bob Berg - soprano saxophone (track 1), tenor saxophone (tracks 8,9)
Al Foster - drums (tracks 1,7-9)
Vince Wilburn, Jr. - drums (tracks 2-6)
Robert Irving III - synthesizers, celesta, organ, clavinet
Darryl Jones, aka "the munch"- bass
Steve Thorton - percussion, Spanish voice (track 1)
Sting (under his real name Gordon Sumner) - French policeman's voice (track 1)
Marek Olko - polish voice (track 1)
James Prindiville, aka "J.R." - sound of handcuffs (track 1)

Recorded in January 26, 1984 - January 10, 1985 at Record Plant Studio, NYC.

Miles Davis / Decoy

前作Star Peopleから半年後に録音されたアルバム。ジャケットのマイルスの表情から、「どう、こんな感じの音楽は?」と聞こえてくる。決して自信に満ち溢れている訳でもなく、評価は任せたよと言っているようだ。自信と不安が入り混じった表情である。これはジャズだろうか。マイルスがやればジャズなのだが、聴き手側が熱くなる瞬間には出会えない。「そりゃそうだろう。このアルバムは、次へ繋げるためのDecoy(おとり)なんだ。つまらないなら、レコードから針を離しなよ」とも聞こえてくる。以下はマイルス自叙伝②からの抜粋。

「1983年の夏の終わりから秋の初め頃には、〈デコイ〉のレコーディングに取りかかった。その一部はライブレコーディングでやることになったが、スタジオではブランフォード・マルサリスのソプラノサックスと、バンドに欲しいと思っていたシンセサイザーが弾けるロバート・アービングを加えた。そして、ギル・エバンスがいくつかアレンジを書いた。オレは、ブランフォードをレギュラー・メンバーにしたかったが、ウイントンとの仕事があって、できなかった」。マイルスのディスコグラフィーで確認すると、マイルスとブランフォードの共演は、本作中の3曲のみで終わっている。

1. Decoy
2. Robot 415
3. Code M.D.
4. Freaky Deaky
5. What It Is
6. That's Right
7. That's What Happened

Miles Davis - trumpet, synthesizer, arrangements
Bill Evans - soprano saxophone, tenor saxophone, flute (tracks 5,7)
Branford Marsalis - soprano saxophone (tracks 1,3,6)
Robert Irving III - synthesizer, synthesizer bass & drum programming (tracks 1-3,6)
John Scofield - guitar (tracks 1,3,5-7)
Darryl "The Munch" Jones - bass (except track 2)
Al Foster - drums (except track 2)
Mino Cinelu - percussion
Gil Evans - arrangements (track 6)

Tracks 1, 2, 3 & 6
Recorded on September 5 & 10, 1983 at Record Plant Studio, NYC.

Track 4
Recorded on June 30, 1983 at A&R Studio, NYC.

Tracks 5 & 7
Recorded on July 7, 1983 at Theatre St. Denis, Montreal.