Miles Davis / Star People

マイルスが復帰してからの3作目。研ぎ澄まされたトランペットの音はわずかであって、リズム楽器の中に埋もれてしまう感じだ。それでも、当時はマイルスが復活したと叫ばれたのである。マイルス自筆によるアルバムジャケットも話題をよんだ。ペットもイラストも下手くそと思ったことを思い出す。しかし、自分は最期までマイルスを追いかけて行った。ギル・エバンスの参加が注目すべき点であるが、マイルス自叙伝②によると、アレンジはラスト曲Star On Cicelyのみのようだ。さらに、自叙伝では以下のように続く。

「タイトル曲Star Peopleは長いブルースで、オレのソロは最高の出来だったと思っている。〈中略〉It Gets Betterでは、マイク・スターンのバックでの演奏とともに、ジョン・スコフィールドがリード・ソロリストとしてフィーチャーされている。これも、すごいブルースだ。ジョンがバンドに入って以来、ロック志向が強かったマイクだけの時よりも、オレはブルースを演奏するようになった。ブルースはジョンのお得意だったし、彼はそれに、気の利いたジャズのタッチを付け加えることができた。だから彼とブルースをやる時は、すごく安心できた」。つまり、本作はマイルスのブルース回帰アルバムと言っても良いだろう。

1. Come Get It
2. It Gets Better
3. Speak
4. Star People
5. U'N'I
6. Star On Cicely

Miles Davis - trumpet, keyboards, concept
Bill Evans - tenor saxophone, soprano saxophone
Mike Stern - electric guitar
John Scofield - electric guitar (track 2,3)
Marcus Miller - electric bass (except track 3)
Tom Barney - electric bass (track 3)
Al Foster - drums
Mino Cinelu - percussion
Gil Evans - arranger (track 6)

Track 1
Recorded on August 28, 1982 at Jones Beach Theater, 1st set, Long Island, NY.

Track 2
Recorded on January 5, 1983 at The Record Plant, NYC.

Track 3
Recorded on February 3, 1983 at Cullen Auditorium, University Of Houston, Houston, TX.

Tracks 4 & 5
Recorded on September 1, 1982 at Columbia Studios, Studio B, NYC.

Track 6
Recorded on August 11, 1982 at Columbia Studios, Studio B, NYC.

Miles Davis / We Want Miles

1981年の3つのライブを集めたアルバム。その1つが新宿西口広場(現在の都庁がある場所)での10月4日のライブ。もう38年前のことなので詳しく覚えていないが、初日の10月2日(金)に仕事を休んで観に行ったと思う。ビル風が強く、警備員の声もうるさく最悪の会場だった。レーザー光線と舞台の上を歩き回るマイルスだけが印象に残っている。だが、再生マイルスと時代を共有できたのは自分にとっては大きな財産。

1980年代初め、ジャズは混迷の時代だった。それは、ジャズだけではなく、フォークロックも同様だった。ボブ・ディランの作品も視点が定まらなかった。そんな中で、発表されたアルバム。We Want Milesというタイトルは、リスナーの心を捉えた。ジャケットもシンプルかつインパクトがあった。マイルスは「オレの地を這う音楽を聴いてくれ」とジャケットで表現してくれた。トランペットを地面に向け、肩でMILESの文字を背負っている。

1. Jean Pierre
2. Back Seat Betty
3. Fast Track
4. Jean Pierre
5. My Man's Gone Now
6. Kix

Miles Davis - trumpet, electric piano
Bill Evans - soprano saxophone, tenor saxophone
Mike Stern - electric guitar
Marcus Miller - bass guitar
Al Foster - drums
Mino Cinelu - percussion

Track 1 & 4
Recorded on October 4, 1981 at Shinjuku Nishi-Guchi Hiroba, Tokyo, 2nd set.

Track 2
Recorded on July 5, 1981 at The Avery Fisher Hall, NYC.

Tracks 3, 5 & 6
Recorded on June 27, 1981 at The KIX, Boston, MA.

Miles Davis / The Man With The Horn

6年の沈黙を破って復活を果たしたマイルス。生気に満ち溢れたマイルスがここにいる訳ではないが、ジャズ界が活気づくと期待したのを憶えている。1981年夏発売後の10月2日から11日まで来日コンサートが行われた。自分自身は4日の新宿西口特設会場でのコンサートを体感したが、演奏そのものはあまり覚えていない。会場にはレーザー光線が飛び交い、足を引きずって舞台に登場したマイルスを見ることができただけで大満足だった。マイルス自叙伝②では、本作のリリースについて以下のように書かれている。

「コロンビアは、1981年の7月に〈ザ・マン・ウィズ・ザ・ホーン〉を出した。よく売れたが、オレの演奏には十分な力が感じられず、批評家連中も過去のオレの影にしかすぎないとか言って、受けは良くなかった。オレだって、唇の調子を取り戻すには、時間がかかることくらいわかっていた。それでも毎日、吹くたびに力がついてくるのが感じられたし、練習もしていた。だがコロンビアは、オレがこの先ずっと長い間演奏は続けられないだろうと踏んで、ほとんどのコンサートをライブレコーディングするよう手配していた。文句はなかったが、オレ自身は身体がどうしようもなくならない限り、引退しないつもりだった」。逆に言えば、復活までの間に引退もやむを得ない状態が続いていたということだ。

1. Fat Time
2. Back Seat Betty
3. Shout
4. Aida
5. The Man With The Horn
6. Ursula

Track 1
Miles Davis - trumpet
Bill Evans - soprano saxophone
Mike Stern - electric guitar
Marcus Miller - electric bass / Al Foster - drums / Sammy Figueroa - percussion
Recorded in March 1981 at Columbia Studios, NYC.

Tracks 2, 4 & 6
Miles Davis - trumpet
Bill Evans - soprano saxophone, tenor saxophone, flute
Barry Finnerty - electric guitar
Marcus Miller - electric bass / Al Foster - drums / Sammy Figueroa - percussion
Recorded in January 1981 at Columbia Studios, NYC.

Track 3
Miles Davis - trumpet
Bill Evans - soprano saxophone, tenor saxophone, flute
Robert Irving - electric piano
Randy Hall - synthesizer
Barry Finnerty - electric guitar
Felton Crews - electric bass / Vincent Wilburn - drums / Sammy Figueroa - percussion
Recorded on May 6, 1981 at Columbia Studios, NYC.

Track 5
Miles Davis - trumpet
Bill Evans - soprano saxophone, tenor saxophone, flute
Robert Irving - synthesizer
Randy Hall - electric guitar, celeste, synthesizer, vocals
Felton Crews - electric bass / Vincent Wilburn - drums
unknown singers - vocals
Recorded on May 1, 1980 at Columbia Studios, NYC.