McCoy Tyner / 13th House

LPのライナーノーツ(1982年4月19日付け)で悠雅彦氏は、次のように書いている。「このアルバムがマイルストーンにおけるマッコイ・サウンドの頂点の一環を形成していることだけは、認めておいてよいだろう。逆にいえば、このアルバムは1つの句読点である。すなわち、この試みを最後にマイルストーンで彼がやりたいと思ったことはすべてやりおおせてしまったのではないか、ということである」。

ちょっと歯切れが悪い表現。「認めておいてよいだろう」ということは、必ずしも100%の価値を置いていないとも読める。このアルバムを録音したのは、1980年10月。マイルストーンからコロンビアへ移籍直後のアルバムThe Legend Of The Hourは1981年録音。すなわち、マッコイは契約の関係から、録音を早く終える必要があった。全5曲中の2曲が再録で、スコアの焼き直しがそれを示している。Search For PeaceはアルバムThe Real McCoy(67年4月)、Love SambaはアルバムAtlantis(74年8月)で録音しているのだ。この事実から、マッコイ・サウンドの頂点の一環とは、決して言うことができない。敢えて言うならば、頂点を過ぎ下り坂に入ったマッコイを見ているようである。

1. Short Suite
2. 13th House
3. Search For Peace
4. Love Samba
5. Leo Rising

Ricky Ford - tenor saxophone, soprano saxophone
Frank Foster - tenor saxophone, soprano saxophone, clarinet
Joe Ford - alto saxophone, soprano saxophone, flute
Oscar Brashear - trumpet
Kamau Muata Adilifu - flugelhorn
Slide Hampton - trombone
Gregory Williams - French horn
Bob Stewart - tuba
Hubert Laws - piccolo, flute
McCoy Tyner - piano
Ron Carter - bass
Jack DeJohnette - drums
Airto Moreira - percussion
Dom Um Romao - percussion

Recorded in October 1980 in NYC.

McCoy Tyner / Four Times Four

1970年代後半のハービー・ハンコック率いるV.S.O.P.により、4ビートジャズの復活のみならず、「売れる」ジャズへの転換があった。その勢いに乗って、企画モノのアルバムが作られるようになった。このアルバムは分かりやすい例。マッコイ・タイナー、セシル・マクビー、アル・フォスターをバックの布陣に据え、4人のフロントを迎えている。プロデューサーであるオリン・キープニューズはV.S.O.P.に勝つための作戦を練った訳である。ところが、フロントの一人はV.S.O.P.のメンバーだったフレディ・ハバード。明らかにミスキャスト。国内盤LPの悠雅彦氏のライナーノーツ(1980年11月24日付け)によると、当初はウディー・ショウが予定されていたらしい。

輸入盤CDを購入し、それにはキープニュース自身による英文解説(1993年付け)が載っていた。3月10日(月)朝、キープニュースがリハーサルのためにショウの自宅へ迎えに行ったが不在。すっぽかされたと言うことで、ハバードに代役が回ってきたということだ。3つのセッションが3月上旬録音なのに、ハバードのセッションだけ、5月末の理由はそこにあった。さらに、タイトルFour Times Fourには、2枚組LP計4面の意味も含まれていたらしい。CD化で、その隠れた意味はなくなってしまった、とキープニュースは書いている。

1. Inner Glimpse
2. Manha De Carnaval
3. Paradox
4. Backward Glance
5. Forbidden Land
6. Pannonica
7. I Wanna Stand Over There
8. The Seeker
9. Blues In The Minor
10. Stay As Sweet As You Are
11. It's You Or No One

Tracks 1, 2 & 3
Freddie Hubbard - trumpet, flugelhorn
McCoy Tyner - piano
Cecil McBee - bass
Al Foster - drums
Recorded on May 29, 1980 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Tracks 4 & 5
John Abercrombie - electric mandolin
McCoy Tyner - piano
Cecil McBee - bass
Al Foster - drums
Recorded on March 5, 1980 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Tracks 6, 7 & 8
Bobby Hutcherson - vibraphone
McCoy Tyner - piano
Cecil McBee - bass
Al Foster - drums
Recorded on March 6, 1980 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Tracks 9, 10 & 11
Arthur Blythe - alto saxophone
McCoy Tyner - piano
Cecil McBee - bass
Al Foster - drums
Recorded on March 3, 1980 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

McCoy Tyner / Horizon

CD化によって追加されたタイトル曲Horizonの別テイクを除いた5曲のうち、2曲がマッコイのオリジナル。残り3曲中、2曲がバイオリニストのブレイク、1曲がベーシストのファンブローの曲である。このバランスから、マッコイは自身の構想を無理やり推し進めるのではなく、メンバーとの協調作業を重視していたのだろう。それゆえに、アルバムSaharaやFly With The Window、そしてAtlantisなどに見られる強力なマッコイ・サウンドはここにはない。手探りながら、80年代へ向けての自分のサウンドを模索していたではないだろうか。

悠雅彦氏が1980年4月22日付けのライナーノーツで、このアルバムを詳しく分析している。悠氏の結論としては、1970年代の有終の美を飾ったすぐれた記録として高く評価している。反論するつもりはない、その通りだと思う。1980年代初めの評価としては。しかしながら、マッコイは、80年代に入ると迷走を始めた。残念ながら、有終の美を飾ったにもかかわらず、地平線の先に新天地はなかった。

1. Horizon
2. Woman Of Tomorrow
3. Motherland
4. One For Honor
5. Just Feelin'
6. Horizon [alternate take]

Joe Ford - alto saxophone, soprano saxophone, flute (tracks 1-3,5)
George Adams - tenor saxophone, flute (tracks 1-3,5)
John Blake - violin (tracks 1-3,5)
McCoy Tyner - piano
Charles Fambrough - bass
Al Foster - drums
Guilherme Franco - congas (tracks 1-3,5)

Recorded on April 24 & 25, 1979 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.