McCoy Tyner / Together

マッコイに一番似合う言葉は「全速力」。間(ま)とかインタープレイなどの表現方法とは、対極的な位置に存在するジャズピアニスト。だからこそ、コルトレーンはマッコイを手放さず、マッコイはコルトレーン亡き後、自身のジャズを貫き、アルバムAtlantisとFly With The Windの2つの金字塔を打ち建てた。そこから先が難しい。それなりのスコアがあって、強力なメンバーを集められれば、ビジネスになるアルバムは作れる。だが、1980年代迎えるにつれ、新たな方向性を打ち出すジャズでないと、ファンは徐々に見捨てるようになってきた。つまり、ファンはコルトレーン後継者のような亡霊は追いかけなくなった。

このアルバムは、マッコイの作品が2曲、そして、ヒューバート・ロウズ、ジャック・ディジョネット、フレディ・ハバード、ボビー・ハッチャーソンの作品を加えて計6曲で構成。タイトルTogetherの意味はそこにある。さらに、ジャケット裏には、各曲のソロを担当したプレイヤーの名前が記載。Togetherなので全員参加を示したかったのだろうが、参加メンバーに同じ楽器のプレイヤーはいないから、ちょっとお節介な感じ。気になるのは、フレディの作品One Of Another Kind。アルバムV.S.O.P. The QuintetでOne Of A Kindという曲名で1977年7月にライブ演奏している。さらに、79年7月に田園コロシアムでも演奏。ハンコックに持ち込んだ曲を、フレディはマッコイにも提供した。新鮮さを示そうとしたTogetherではあったが、寄せ集めだった。

1. Nubia
2. Shades Of Light
3. Bayou Fever
4. One Of Another Kind
5. Ballad For Aisha
6. Highway One

Bennie Maupin - tenor saxophone, bass clarinet
Freddie Hubbard - trumpet, flugelhorn
Hubert Laws - flute, alto flute
Bobby Hutcherson - vibraphone, marimba
McCoy Tyner - piano
Stanley Clarke - bass
Jack DeJohnette - drums
Bill Summers - congas, percussion

Recorded on August 31 and September 3, 1978 at Fantasy Studios, Berkeley, CA.

McCoy Tyner / The Greeting

マッコイ・タイナーが、自作曲Fly With The Windをライブで演奏すると言うのは、それなりの勇気があったはずだ。本作の2年前に出したアルバムFly With The Windは、スタジオ録音で完璧の演奏だった。敢えて、この曲をライブで取り上げたということは、自らへの挑戦だったのだろう。この頃のマッコイは、コルトレーンの音楽を継承しながらも、独自の音楽スタイルを築いていた時期だったと言える。

そのポテンシャルをさらに向上していくため、マッコイは当時としては新鋭のジョージ・アダムスをメンバーに加えた。この時、アダムスはすでに38歳であったが、プロとして活動を始めてまだ5年目。マッコイとアダムスとのアルバムでの初共演である。マッコイがそれをどこまで意識したのかは分からないが、タイトルThe Greetingとは、そんな意味を込めていたのだと思う。

1. Hand In Hand
2. Fly With The Wind
3. Pictures
4. Naima
5. The Greeting

George Adams - tenor saxophone, soprano saxophone, flute
Joe Ford - alto saxophone, flute
McCoy Tyner - piano
Charles Fambrough - bass
Woody "Sonship" Theus - drums, bells
Guilherme Franco - conga, berimbau, percussion

Recorded on March 17 & 18, 1978 at Great American Music Hall, San Francisco, CA.

McCoy Tyner / Inner Voices

社会人になって二子玉川のアパートに住み始めた頃、週末は渋谷のディスクユニオンに行くのが習慣だった。財布に余裕がある時は、新宿のユニオンまで足を延ばして…。渋谷か新宿かは覚えていない。このアルバムの前知識は何もなかったものの、輸入盤中古LPが数百円だったので、他のLPと一緒に購入。アパートに戻り、ターンテーブルに載せたときは驚いた。いきなり男女混声コーラス。マッコイは血迷ったかと思いながら、Inner voicesってそういことかと溜息をついた。全5曲中、4曲がコーラス入り。

で、Amazonで格安の輸入盤中古CDを最近見つけてしまい、性懲りもなくまたもや購入。LPではスクラッチノイズが多く、変にコーラスに集中してしまった記憶があった。改めてCDでじっくり聴いてみると、全体のモチーフが見えてくるのだが、コーラスに重点を置いたマッコイの意思を受け止めることができない。同じタイトルで、同じジャケットで、同じメンバーで、だけどコーラスを抜いても、緊迫感のあるアルバムに仕上がったのではないかと思うのである。

1. For Tomorrow
2. Uptown
3. Rotunda
4. Opus
5. Festival In Bahia

Alex Foster - tenor saxophone (tracks 2,4,5)
Joe Ford - alto saxophone (tracks 2,4)
Jerry Dodgion - alto saxophone (tracks 2,4), flute (track 5)
Ed Xiques - baritone saxophone (tracks 2,4), alto saxophone (track 5)
Cecil Bridgewater, Jon Faddis, Eddie Preston - trumpet (tracks 2,4)
Ernie Royal - trumpet (tracks 2,4,5)
Dick Griffin, Janice Robinson, Charles Stephens - trombone (tracks 2,4)
Earl McIntyre - trombone (tracks 2,4,5)
Earl Klugh - guitar (tracks 2,3,5)
McCoy Tyner - piano
Ron Carter - bass
Eric Gravatt - drums (tracks 2,4)
Jack DeJohnette - drums (tracks 3,5)
Guilherme Franco - percussion (track 5)
Adrienne Anderson, Benjamin Carter, Fran Dorsey, Bessye Ruth Scott, Carl Scott, Suzanne Simmons, Joan Taylor - voices (tracks 1,3-5)

Recorded on September 1, 2, 6, 7 & 8, 1977 in NYC.