McCoy Tyner / Dimensions

マッコイがMilestoneからColumbiaへレーベルを移籍し、リリースしたアルバムThe Legend Of The Hour(1981年録音)とLooking Out(82年録音)には、骨抜きにされたマッコイがいた。マッコイ自身はそれを分かっていて、足早にColumbiaを去った。そして、82年に設立されたジャズレーベルElektra/Musicianから、本アルバムをリリース。

マッコイ作の1曲目One For Deaで、久し振りのマッコイ節が戻って来た。2曲目以降にマッコイの作品はないものの、ヴァイオリンを入れたり、2曲目Prelude To A Kissはピアノソロ、4曲目Just In Timeはピアノトリオと、アルバム全体が平坦にならないように工夫している。ジャケット裏面には、各曲の紹介をマッコイが書き、"I wish you many hours of good listening."と結んでいる。マッコイ復活の一枚。

1. One For Dea
2. Prelude To A Kiss
3. Precious One
4. Just In Time
5. Understanding
6. Uncle Bubba

Gary Bartz - alto saxophone (except tracks 2,4)
John Blake - violin (except tracks 2,4)
McCoy Tyner - piano, synthesizer
John Lee - bass (except track 2)
Wilby Fletcher - drums (except track 2)

Recorded on October 6, 7 & 18, 1983 at Unique Recording Studios, NYC.

McCoy Tyner / Looking Out

岡崎正通氏のLPライナーノーツから抜粋。「このアルバムに針を下ろした時に多くのファンは、ある種の戸惑いを感じるかもしれないが、演奏が進むにつれてやはりマッコイ・タイナーは、いまゝでのマッコイ・タイナー以外の何物でもないのだということを実感してゆくことだろう。僕自身はこのアルバムを、いまゝでのマッコイ・タイナーの音楽の延長上にあってしかもいまゝで考えられなかったようなミュージシャン達と一緒にレコーディングした、彼の新たな意欲の表れであると捉えたい」。

一方、CDのライナーノーツ。原田和典氏は、このアルバムに参加したフィルス・ハイマンとカルロス・サンタナについて多くを語っている(2015年8月付け)。評論家とは因果な商売である。岡崎氏が本音で書いたとは思えない。マッコイ・ファンの多くが、このアルバムを「意欲の表れ」とは決して受け取らないはずである。原田氏について言えば、録音から30年以上経っても、このアルバムの位置付けを評価できず、二人のミュージシャンを語るしかなかった。

結局のところ、MilestoneからColumbiaへレーベルを移籍後、アルバムThe Legend Of The HourとLooking Outをリリースしたものの、Columbiaを去っている。この時期、マッコイが意欲的にアルバム制作に取り組んだとは思えない。Columbia在籍のサンタナとは、無理やり共演させられたのだろう。

1. Love Surrounds Us Everywhere
2. Hannibal
3. I'll Be Around
4. Senor Carlos
5. In Search Of My Heart
6. Island Birdie

Gary Bartz - alto saxophone
Carlos Santana - guitar
Charles W. Johnson, Jr. - guitar
Denzil Miller - synthesizer
James W. Alexander - synthesizer
McCoy Tyner - piano, synthesizer
Stanley Clarke - electric bass, double bass
Buddy Williams - drums
Ndugu Leon Chancler - drums
Ignacio Berroa - percussion
Gerry Gonzalez - percussion
Phyllis Hyman - vocals

Recorded in May 9 - April 22, 1982.

McCoy Tyner / The Legend Of The Hour

LPのライナーノーツから一部を抜粋(悠雅彦氏、1981年9月16日付け)。「新レーベルCBSへの移籍を契機として新天地を開拓すべく、あるいは昨今とりわけ著しいストレイト・アヘッド・ジャズへの回帰といった時代風潮を考えるとき、もっと大胆な変化を期待する向きも当然あるだろうし、その点でマッコイのこの新作にいささか物足りなさを感じる人だっているに違いないが、しかしそれだけでこのアルバムを評価することは、やはりやや早計に過ぎるといわなければならないだろう。タイナーという人は無器用なくらい自分の信念に忠実なミュージシャンであり・・・」。悠氏のジャズに対する見方は、常に自分の糧となっているのだが、この文章はいただけない。明らかにマッコイを擁護。マッコイが無器用かどうかは関係ない。マッコイを聴き続けてきたファンにとっては、間違いなく彼の変革を求めてきた。

CDでは、2015年9月付けで村井康司氏が「マッコイがモード・ジャズの延長線上でラテン・ジャズに親和性を覚えても、何の不思議もないのではないか」と書いている。この文章はさらに酷い。マッコイを擁護すらしていない。好きにすればと突き放しているのだ。4曲目のWalk Spirit, Talk Spiritが、このアルバムの本質を表している。モントルーのライブアルバムEnlightenment(1973年7月7日録音)で、怒涛の演奏を繰り広げた曲が、まるでBGMになってしまった。まさしくスピリッツが消え失せたのだ。

1. La Vida Feliz (The Happy Life)
2. Ja'cara (A Serenade)
3. La Habana Sol (The Havana Sun)
4. Walk Spirit, Talk Spirit
5. La Busca (The Search)

Chico Freeman - tenor saxophone
Paquito D'Rivera - soprano saxophone, alto saxophone
Marcus Belgrave - trumpet, flugelhorn
Hubert Laws - flute
Bobby Hutcherson - vibraphone, marimba
Harold Kohan, John Blake, Karen Milne, Elliot Rosoff - violin
Jesse Levine, Julien Barber - viola
Kermit Moore, Jonathan Abramowitz - cello
McCoy Tyner - piano
Avery Sharpe - acoustic bass
Ignacio Berroa - drums
Daniel Ponce - percussion
William Fischer - conductor

Recorded in 1981 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.