森山威男 / Green River

CD帯によるアルバム紹介がコンパクトによくまとまっている。「和ジャズ最強ドラマーの一人、森山威男が1984年のドイツで大暴れ!ニュルンベルクで行われたジャズ祭に井上淑彦、榎本秀一、望月英明を従えハードコアなピアノレス・カルテットで出演した強烈なパワーで圧倒するライブ作品!」。

全7曲54分。会場からの拍手もライブ演奏の成功を示している。少し気になるのが、アンコールはなかったのだろうか。森山らの大熱演に観客も疲れ果てたということか。ライナーノーツで、岩浪洋三氏(LP、1984年11月付け)も田中英俊氏(CD、2019年12月付け)も、そのことに全く触れていない。

1. Ta-Ke
2. Night Story
3. Gradation
4. Green River
5. Tohku
6. Non Check
7. Fields

井上淑彦 - tenor saxophone, soprano saxophone
榎本秀一 - flute, soprano saxophone, tenor saxophone
望月英明 - bass
森山威男 - drums

Recording on July 6, 1984 at The East-West Jazz Festival, Nuernberg, Germany.

森山威男 / East Plants

オリジナルLPは1983年にVapからリリース。もちろん所有していたが、CD化をずっと待ち望んでいた。UKの名門BBEレコードが「J-Jazz: deep modern jazz from Japan 1969-1984'」として編纂し、このアルバムがUKからリリースされた。逆輸入の形で解説書付き国内盤も発売されたが、割高なので輸入盤を購入。解説は当然ながら英語であるが、オンラインOCRとGoogle翻訳の力を借りて全文を訳した。このシリーズを編纂したTony Higginsは森山の経歴を詳細に説明し、East Plantsの分析も次のように非常に優れている。

「森山と井上淑彦のアレンジで、East Plantsは洗練された特質ながらもシンプルで美しく演出されています。忙しすぎたり雑然とした感じはありません。間(ま)と空気、速度とエネルギーがすべて微妙なバランスで存在しています。私の考えでは、これらすべては当時の最も精巧で洗練されたジャズアルバムの1つであり、エンジニアリングとプロダクションの品質は格別で、そして控えめながらもインパクトを与えるスタイリッシュなアートワークである」。

さらに、2018年のCD発売に際して、森山のコメントが載っている。日本語から英語、そして日本語という訳なので、微妙にニュアンスが違うかも知れない。

「私はほとんどすべての人から影響を受けています。クラシック、ポピュラー音楽、童謡、演歌、詩吟など様々なジャンルから影響を受けてきました。映画や演劇にも影響を受けました。ドラマーに関しては、エルビン・ジョーンズの魅力にとても感動しました。私にとって彼の音楽は民俗音楽のように聞こえます。音符を見てもわからない。日本の民謡を楽譜で表現するのと同じです。そうなると、元の民謡のテクスチャが崩れてしまいます。楽譜は同じ情報を多くの人と共有するのに便利なツールですが、自分の音楽の特徴、その響きや音色などを誰かに伝えるには不便なツールです。一緒に演奏しながら相手の魅力を発見し、お互いの喜びを分かち合うのが嬉しいのです。私は73歳を過ぎました。これまで自分でプレーできたことに感謝しています」。

二人のコメントに付け加えることは何もない。

1. East Plants
2. Ta-Ke
3. Ka-Ge-Lo-U
4. Ka-Ze
5. Fields
6. To-O-Ku

井上淑彦 - tenor saxophone, soprano saxophone
榎本秀一 - tenor saxophone, soprano saxophone
望月英明 - bass
森山威男 - drums
定成庸二 - percussion

Recorded on September 8 & 9, 1983.

森山威男 / My Dear

LPのライナーノーツは青木和富氏が担当で、こう始まる。「ぼくは、昔から日本には2人の天才的ドラマーがいると思っている。一人は富樫雅彦であり、そして、もう一人は、いわずと知れた森山威男だ。この2人以外には、日本にはジャズドラマーはいないとさえ思っている」。前半は同感なのだが、後半は問題発言。「とさえ・・・」と逃げ道を作りながらも、ジョージ大塚、渡辺文男、日野元彦、村上寛、古沢良治朗、小山彰太らは、太鼓は叩いてもジャズをやっていないと言っているのだ。ジャズ評論家が自己主張するのは当たり前だが、少なくとも日本のジャズ界を後押する立場にあることは間違いない。

さて、ピアノレス、フロント2管による新生・森山グループのファーストアルバム。LPの発売と同時に購入し長年愛聴してきた。そして、ようやくCDを最近手に入れることができた。森山は山下トリオを脱退後、1977年にアルバムFlush Upをリリース。それ以来、ベースの望月英明と組んでいる。当初はピアノの板橋文夫の存在が大きかったが、ピアノレスになって望月が舵取り役となった。本アルバムは、森山と望月のコンビネーションを中心に聴くと、いろいろと発見できるのだ。

1. Non Check
2. My Dear
3. No More Apple
4. Stormy Silence

井上淑彦 - tenor saxophone
藤原幹典 - tenor saxophone, soprano saxophone
望月英明 - bass
森山威男 - drums

Recorded on May 7, 8, 9 & 10, 1982 at Teichiku Suginami Studio #1.