Miles Davis / Blue Moods

マイルスがミンガス、そしてエルビン・ジョーンズと共演。どうして、こんなメンバーを集められたのか。Swing Journal Mook "Oh! Miles"(1985年8月1日発行)の中で、寺島靖国氏がこう紹介している。「いっこうに借金を返済しないマイルスに業を煮やしたデビュー・レコードのオーナー、チャールス・ミンガスが借金のかたに競演したくもないマイルスをレコーディングに呼んだ」。寺島氏の情報源が書かれていないので、どこまでが事実なのかは不明。彼らが集まった理由は別として、演奏内容は緊張感溢れるバラード集となった。問題は、品のないジャケットと4曲しか含んでいないこと。

マイルス自叙伝①には、次のように書かれている。「チャールス・ミンガスと、彼が持っていたデビュー・レコードにレコーディングした。この頃のミンガスは、現存する最高のベーシストと言われていたが、立派な作曲家でもあった。だが、このレコーディングは、何か問題があってすべてがうまく嚙み合わず、熱気のない演奏になってしまった。なんのせいだったかはよくわからない。アレンジのせいかもしれないが、明らかにうまくいかなかった。ミンガスはエルビン・ジョーンズを使ったが、あいつだったら、誰にだって火をたきつけることができたはずだ。それなのに、演奏はなぜか火がつかなった。ちょうど、『カフェ・ボヘミア』に出る自分のバンドのリハーサルをしていたから、集中できなかったのかもしれないな」。マイルスは借金のことには一切触れていない。テラシマを信じるかマイルスを信じるかは別として、少なくともマイルス、ミンガス、エルビンがスタジオに集まったのは事実。しかもピアノレス。それだけで十分。

1. Nature Boy
2. Alone Together
3. There's No You
4. Easy Living

Miles Davis - trumpet
Britt Woodman - trombone
Teddy Charles - vibraphone
Charles Mingus - bass
Elvin Jones - drums

Recorded on July 9, 1955 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Miles Davis / The Musings Of Miles

マイルスのワンホーン。1955年6月7日のセッション1回のみ。ディスコグラフィーを確認すると、全曲一発録り。トリプル・ワンのアルバム。この時、マイルスは29歳。バックの3人は32 - 33歳で、見事にマイルスを支えている。マイルスのトランペットをじっくり聴くには最適なアルバム。

注目したいのは5曲目の「チュニジアの夜」。すでにジャズのスタンダードとなっていた曲。所有するマイルスのアルバム90枚以上の中で、この曲が収録されているは、このアルバムを除くと僅か2枚。どちらもライブ演奏で、フロントはマイルスを含めた2管。1952年のLive At The Barrelと57年のAmsterdam Concertで、観客へのサービス的な選曲だったのだろう。

1. Will You Still Be Mine?
2. I See Your Face Before Me
3. I Didn't
4. A Gal In Calico
5. A Night in Tunisia
6. Green Haze

Miles Davis - trumpet
Red Garland - piano
Oscar Pettiford - bass
Philly Joe Jones - drums

Recorded on June 7, 1955 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Miles Davis / The Modern Jazz Giants

1954年クリスマスセッション。Bags Grooveのみが、そのタイトルアルバムに収録され、残りのセッションが本作へ。発売が遅れたのは、曲数が足りなかったのだろう。56年10月26日のマラソンセッションから'Round Midnightが選ばれ収録。Prestige 7000 seriesのマイルス名義のアルバムは次の通り。Relaxin'の後に本アルバムが発売されている。「Walkin' - 7076, Cookin' - 7094, Bags Groove - 7109, Relaxin' - 7129, The Modern Jazz Giants - 7150, Workin' - 7166, Steamin' - 7200」。以下はマイル自叙伝①から。喧嘩セッションなどと言われているので、長文ながら掲載する。

「この日、モンクとオレの間にあったとされるいさかいについて、たくさんの誤解がまかり通っている。だが、その噂は、ほとんど意味のないことが真実になってしまうまで、勝手に繰り返し語られつづけたものにすぎない。あの日の真実は、オレ達全員がすばらしい演奏をしたという、ただそれだけだ。まあ、オレとモンクの間にあったことを、一度きっぱり明らかにしておこう。

オレはただ、モンクが作った”ベムシャ・スイング”以外では、オレのソロのバックでピアノを弾くな、休んでろ、と言っただけだ。理由は、ホーン・プレイヤーのバックでの演奏について、モンクがあまり理解していなかったからだ。モンクと一緒にやって良いサウンドを作れたのは。ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、チャーリー・ラウズだけだ。みんなサックス・プレイヤーだ。オレの意見だが、モンクはたいていのホーン・プレイヤー、特にトランペットとの演奏は得意じゃなかった。トランペットは、演奏できる音符の数が限られている。だからリズムセクションには、目一杯演奏させなきゃならない。だがモンクのやり方は、それとは正反対だった。トランペッターは、リズム・セクションがホットじゃないとダメなんだ。たとえバラッドを吹いていてもだ。あの追い立てるような感じが必要なんだが、そいつはモンクのスタイルじゃなかった。〈中略〉

あのレコーディングでのモンクは、オレが期待したとおりに自然で、とても良く聞こえる。オレがこう演じて欲しいと言ったものが、彼がやろうとしていたことでもあったわけだ。オレが吹き終わって少し経ってから演奏に入ってきてくれと、最初に言ったとおりに、モンクはやっただけだ。なんの口論もなかったし、なぜオレとモンクがケンカしたという話になったか、まったくわからないな」。

1. The Man I Love [take 2]
2. Swing Spring
3. 'Round Midnight
4. Bemsha Swing
5. The Man I Love [take 1]

Tracks 1, 2, 4 & 5
Miles Davis - trumpet
Milt Jackson - vibraphone
Thelonious Monk - piano
Percy Heath - bass
Kenny Clarke - drums
Recorded on December 24, 1954 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Track 3
Miles Davis - trumpet
John Coltrane - tenor saxophone
Red Garland - piano
Paul Chambers - bass
Philly Joe Jones - drums
Recorded on October 26, 1956 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.