Miles Davis / Water Babies

1976年末にリリースされた未発表作品集。前半3曲がアルバムNefertitiと同時期、後半3曲がアルバムFilles De Kilimanjaroの後に録音。今なら新たな音源発掘となるだろうが、アルバムAghartaとPangeaのリリース後、つまりマイルスの一時的な引退時期の発売なので、商業的な匂いがプンプンするアルバム。

だが、演奏は余り物ではない。1960年代後半の変貌するマイルスをしっかり捉えている。問題はジャケットのイラスト。このアルバムを含めてマイルスの数枚のジャケットは、明らかにロックを意識している。安売りの感じだ。決して当時のロックのジャケットが貧相だったという訳ではなく、安易に迎合したと言いたい。タイトル曲Water Babiesの連想で、黒人の子供達が消火栓で水遊びはないだろう。

1. Water Babies
2. Capricorn
3. Sweet Pea
4. Two Faced
5. Dual Mr. Anthony Tillmon Williams Process
6. Splash

Tracks 1, 2 & 3
Miles Davis - trumpet
Wayne Shorter - tenor saxophone, soprano saxophone
Herbie Hancock - piano
Ron Carter - bass
Tony Williams - drums
Recorded on June 7, 13 & 23, 1967 at Columbia 30th Street Studio, NYC.

Tracks 4, 5 & 6
Miles Davis - trumpet
Wayne Shorter - tenor saxophone, soprano saxophone
Chick Corea - electric piano
Herbie Hancock - electric piano
Dave Holland - bass
Tony Williams - drums
Recorded on November 11, 1968 at Columbia Studio B, NYC.

Miles Davis / Filles De Kilimanjaro

ちょうど8年前の2013年8月25日(日)、このアルバムについて以下のように書いた。数年間、戸井十月氏の仕事を手伝ったので、その時のブログを残しておく。ちなみに、ジャケットは録音当時に結婚したBetty Mabry(ベティ・メイブリー)であり、5曲目Mademoiselle Mabryは彼女の作品とされている。そして、町田Nica'sはライブハウスとしてその後復活した。

* * *
「戸井十月の新たな旅立ちを見送る会」に参列してきた。帰りに大音量でジャズが聴きたくなり、四谷の『いーぐる』へ行きたかったが、日曜日はお休み。そこで、町田に出てNica'sを目指した。事前にホームページで調べたら、9月一杯で一旦閉めるとあった。ならば、なおさらJBL C34の音が聴きたくなった。ところが、ビル入り口の看板に電気が入っていない。いやな予感がしたが、店の3Fまで階段を上がった。案の定、鉄の扉には鍵がかかっていたのだ。彷徨えるジャズオヤジ。結局は、自宅で小音量のマイルス。

Miles In The Sky以降のエレクトリック・マイルスは、大音量で聴かなければならない。なぜなら、マイルス自身がロックに打ち勝つために8ビートや電気楽器を導入したのだから。だが、本アルバムがロック的かと言うと、決してそんなことはない。民族音楽やフォーク的な要素が盛り込まれている。そして、ピアノとベースは曲によってメンバーを変えている。つまり、次へ進むための実験的アルバムと位置付けることができる。ジャケットのデザインも、方向性がまだ定まっていないことを暗示しているようだ。

1. Frelon Brun
2. Tout De Suite
3. Petits Machins
4. Filles De Kilimanjaro
5. Mademoiselle Mabry
6. Tout De Suite [alternate take]

Tracks 1, 2, 4 & 6
Miles Davis - trumpet
Wayne Shorter - tenor saxophone
Herbie Hancock - Fender Rhodes electric piano
Ron Carter - electric bass
Tony Williams - drums
Recorded on June 19 & 20, 1968 at Columbia 30th Street Studio, NYC.
Recorded on June 21, 1968 at Columbia Studios, Studio B, NYC.

Tracks 3 & 5
Miles Davis - trumpet
Wayne Shorter - tenor saxophone
Chick Corea - piano, RMI electra-piano
Dave Holland - double bass
Tony Williams - drums
Recorded on September 24, 1968 at Columbia Studios, NYC.

Miles Davis / Miles In The Sky

マイルスがいよいよロック畑へ踏み込んだアルバム。ギタリストの起用、ロン・カーターがエレキベースを、そしてハービー・ハンコックがエレキピアノを演奏した。ただし、全曲での取り組みではないので、まだ実験段階だと言える。ギターの導入実験が1968年1月16日、ピアノとベースの電気化実験が5月17日。明らかに様々な構想の中で作り込んだアルバム。

これらの実験の成果は?少なくともジョージ・ベンソンを起用したことは失敗だった。ベンソンのギターは、丸みがあり過ぎて緊張感を阻害している。カーターのエレキベースは楽器特有の味を出し切れていない。結局のところ、マイルスが描いた構想は未完成に終わったアルバム。だが、大事なことは、マイルスがそれを踏み台にして次のステージに向かったことだ。タイトルMiles In The Skyとは、もう飛び続けるしかないという意思の表れだったのだろう。

1. Stuff
2. Paraphernalia
3. Black Comedy
4. Country Son
5. Black Comedy [alternate take]
6. Country Son [alternate take]

Miles Davis - trumpet
Wayne Shorter - tenor saxophone
George Benson - electric guitar (track 2)
Herbie Hancock - electric piano (track 1), piano (tracks 2-6)
Ron Carter - electric bass (track 1), bass (tracks 2-6)
Tony Williams - drums

Recorded on January 16 (track 2) and May 15 (track 4,6), 16 (track 3,5) & 17 (track 1), 1968 at Columbia Studios, Studio B, NYC.