Miles Davis / Rubberband

2019年9月リリース。しかし、本作を知ったのは2021年の末。タイムリーに情報が自分に舞い込んでこなかったということは、いくらマイルスといえども、衝撃的なアルバムではなかったということだろう。本作を入手してからもう10回以上も聴いた。たしかにマイルスのトランペットは鳴っているものの、アルバム全体の雰囲気は自分にとってはポップスでしかなく、新鮮さを感じることもない。2017年、当時のプロデューサーが中心となって、1985年の音源に新たな音を被せて完成させたようだ。以下は、商品説明からの抜粋。

「1985年、マイルスは30年にも渡り所属していたコロンビアを離れ、新たにワーナーと契約し、世界中に衝撃を与えた。同年10月、ロサンゼルスにあるAmeraycan Studiosにてアルバム〈ラバーバンド〉のレコーディングを開始、マイルスはこの作品で、ファンクやソウルのグルーヴを大胆に取り入れ、急進的なサウンド・スタイルという方向性を打ち出した。しかし、最終的にこの作品は日の目を見ることなく、マイルスは新たな作品をレコーディング、今や歴史的名盤として知られる傑作〈Tutu〉をもって、移籍第一弾作品としてリリースする。結果、この〈ラバーバンド〉は30年以上もの間、そのまま誰にも聴かれることなく、誰にも触れられないままの状態となっていた」。マイルス自叙伝②を読んでも、本作のセッションに関しては一切触れられていない。勝手に音を被せたアルバムに、天国のマイルスは何を感じるだろうか。

1. Rubberband Of Life
2. This Is It
3. Paradise
4. So Emotional
5. Give It Up
6. Maze
7. Carnival Time
8. I Love What We Make Together
9. See I See
10. Echoes in Time / The Wrinkle
11. Rubberband

Miles Davis - trumpet, keyboards, synthesizers
Randy Hall - on "I Love What We Make Together", production on 1985 sessions
Lalah Hathaway - vocals on "So Emotional"
Ledisi - vocals on "Rubberband Of Life"
Michael Paulo - tenor saxophone, alto saxophone, flute
Mike Stern - lead guitar on "Rubberband"

Recorded in January 31 - February 4, 1985 at Easy Sound Studio, Copenhagen, Denmark.
Recorded in October 1985 - January 1986, at Studio Ameraycan Studios, Utopia Studios, The Village, Dot's Way Recorders.
Released on September 6, 2019.

Miles Davis / Aura

マイルスは、1984年末にレオニー・ソニング音楽賞を受賞。これは、デンマークによって、音楽的に著しい成果を上げた人物に対して贈られる賞で、主にクラシック奏者が対象。マイルスが初めてのジャズミュージシャン、そして黒人だった。この受賞式典前に、ソニング財団からデンマークの作曲家Palle Mikkelborg(パレ・ミッケルボルグ)へマイルスをソロリストとするオーケストラ作品の制作依頼があったらしい。そいう背景で、本作は85年初頭に録音された。

ところが、マイルス自叙伝②を読むと奇妙なことが書いてある。「コロンビアがレコードを出すはずだったが、約束を取り消されて、オレは〈オーラ〉というタイトルになる予定だったこのレコーディングを終わらせるために、連邦芸術基金の助成金を貰わなきゃならなかった。そもそもそれが、オレとコロンビアの関係の終わりのきっかけだった」。

ここでのレコーディングとはマスタリングを示していると思うが、助成金によってその費用と版権を得ようとしたのだろうか? さらに、調べていくと、コロンビアはマイルスの自叙伝発刊と本作の同時発売を考え、リリースを先延ばしする計画だった。結局、本作は89年9月に自叙伝と共に発売され、ジャケットの写真と自叙伝の表紙が、トランペットを持った同じ服装のマイルスになっている。

1. Intro
2. White
3. Yellow
4. Orange
5. Red
6. Green
7. Blue
8. Electric Red
9. Indigo
10. Violet

Miles Davis - trumpet
Benny Rosenfeld, Idrees Sulieman, Jens Winther, Palle Bolvig, Perry Knudsen - trumpet, flugelhorns
Jens Engel, Ture Larsen, Vincent Nilsson - trombone
Ole Kurt Jensen, Axel Windfeld - bass trombone
Axel Windfeld - tuba
Jesper Thilo, Per Carsten, Uffe Karskov, Bent Jædig, Flemming Madsen - reeds, flute
Bent Jædig, Flemming Madsen, Jesper Thilo, Per Carsten, Uffe Karskov - saxophones, woodwinds
Kenneth Knudsen, Ole Kock Hansen, Thomas Clausen - keyboard
Bjarne Roupe, John McLaughlin - guitar
Niels-Henning Ørsted Pedersen - bass
Bo Stief - Fender bass and fretless bass
Vincent Wilburn jr., Lennart Gruvstedt - drums
Vince Wilburn - electric drums
Ethan Weisgaard, Marilyn Mazur - percussion
Lillian Thornquist - harp
Niels Eje - oboe, English horn
Eva Hess-Thaysen - vocals
Palle Mikkelborg - producer, additional trumpet and flugelhorn

Recorded in January 31 - February 4, 1985 at Easy Sound Studio, Copenhagen, Denmark.

Miles Davis / You're Under Arrest

マイルスなので聴き通せる。つまり、我慢ができる。ポップスとして聴くなら随所に楽しみがあるが、ジャズとして聴くと何度聴き込んでも新たな発見はほとんどない。この音楽でUnder Arrest(逮捕された)感覚にはならないのだ。マイルスは、ジャズを、そして音楽を自ら切り開いてきたミュージシャンであることは間違いない。だからこそ「帝王」と呼ばれた。だがしかし、このアルバムでは他者を意識して作った感じがする。

マイルス自叙伝②によると、本作のコンセプトは、どこに行っても黒人と警官の間に存在する問題を基にしたとある。そして、こう語っている。「今は核による大虐殺にさらされ、精神的にも閉じ込められている。〈中略〉Then There Were None(そして誰もいなくなった)という曲では、シンセサイザーで、核爆発を思わせる、風がうなって炎が燃え上がるようなサウンドを作り出したんだ。その後で聞こえてくるオレの物悲しいトランペットは、泣き叫ぶ赤ん坊とか、生き延びて悲しむ人々の泣き声を意味するものだ」。なんとも、詰め込み過ぎという印象。

1. One Phone Call / Street Scenes
2. Human Nature
3. MD 1 / Something's On Your Mind / MD 2
4. Ms. Morrisine
5. Katia Prelude
6. Katia
7. Time After Time
8. You're Under Arrest
9. Medley: Jean Pierre / You're Under Arrest / Then There Were None

Miles Davis - trumpet, "Police voices, Davis voices" (track 1), synthesizer (tracks 5,6)
John McLaughlin - guitar (tracks 4-6)
John Scofield - guitar (tracks 1-3,7-9)
Bob Berg - soprano saxophone (track 1), tenor saxophone (tracks 8,9)
Al Foster - drums (tracks 1,7-9)
Vince Wilburn, Jr. - drums (tracks 2-6)
Robert Irving III - synthesizers, celesta, organ, clavinet
Darryl Jones, aka "the munch"- bass
Steve Thorton - percussion, Spanish voice (track 1)
Sting (under his real name Gordon Sumner) - French policeman's voice (track 1)
Marek Olko - polish voice (track 1)
James Prindiville, aka "J.R." - sound of handcuffs (track 1)

Recorded in January 26, 1984 - January 10, 1985 at Record Plant Studio, NYC.