Miles Davis / Amandla

マイルスの実質的なラストアルバム。自分が所有するマイルスのアルバムは90枚。今更ながら、よくこれだけのアルバムを集めたなと思ってしまう。どうなんだろう。ジャズという分野に限ったとしても、一人のミュージシャンがアルバムとして世の中に出せる数は、100枚を超えることはありえないのだろう。ちなみに、所有するコルトレーンのアルバムは84枚。

活動してきた期間やアルバム枚数で評価されることでは決してないが、マイルスという「男」は、時代を創ってきたことに間違いはない。このアルバムは集大成ではなく、単純に1990年代を前にしてマイルスがやりたかった音楽。結果的にラストアルバムとなってしまっただけ。Wikipediaによると、Amandla とはa word in several Nguni languages, including Zulu and Xhosa, meaning "power"とあった。南アフリカの言語で「パワー」を意味するそうだ。ただし、このタイトル曲は、マイルスではなくマーカス・ミラーの作品。マイルスが他界したのは1991年9月28日。享年65。あれから30年以上の歳月が流れ、ジャズという音楽の舵取りができるミュージシャンが見当たらない。それはそれで寂しい限りだ。

1. Catembe
2. Cobra
3. Big Time
4. Hannibal
5. Jo-Jo
6. Amandla
7. Jilli
8. Mr. Pastorius

Miles Davis - trumpet, cover art
George Duke - keyboards, Synclavier, arranger
Omar Hakim - drums
Steve Khan - guitar
Joe Sample - piano
Jean-Paul Bourelly - guitar, percussion
Don Alias - percussion
Foley - guitar soloist
Bashiri Johnson - percussion
John Bigham - guitar, keyboards, drum programming, arranger
Mino Cinelu - percussion
Paulinho Da Costa - percussion
Joey DeFrancesco - keyboards, photography
Al Foster - drums
Kenny Garrett - soprano & alto saxophone
Michael Landau - guitar
Rick Margitza - tenor saxophone
Jason Miles - synthesizer, synthesizer programming
Marcus Miller - bass, bass clarinet, guitar, arranger
Billy Patterson - wah wah guitar
Ricky Wellman - drums

Recorded in December 1988 - Early 1989.

Miles Davis / Siesta

このアルバムが録音されたのは、1987年1月から2月。そして、リリースされたのは11月である。岩波洋三氏によるライナーノーツの日付も87年11月。ところが、ジャケット内にはThis album is dedicated to GIL EVANS The Masterとある。この一文からエバンスへの追悼アルバムであるとネットや雑誌に書かれている。例えば、文藝別冊『マイルス・デイビス 未来の音楽のための巨人』245ページには、「ギル・エバンス追悼作」とある。しかしながら、ギル・エバンスが他界したのは88年3月20日。つまり、ここでのdedicated toとは単純に「捧げる」だけの意味と解釈できる。

アルバム全体はスパニッシュ・サウンド。ギル・エバンスとの「スケッチ・オブ・スペイン」(1960年3月作)を思い出される。本アルバムには、アコースティック・ギターが2曲で使われていて非常に効果的なのだが、もっと多用して欲しかった。改めてマイルス自叙伝②を読むと、次の文章を見つけることができた。『ギル・エバンスが死んですぐに「シエスタ」が出た。「スケッチ・オブ・スペイン」に近い音楽だったから、「シエスタ」には〈ザ・マスター:ギル・エバンスに捧ぐ〉というクレジットを入れた』。これは、マイルスの記憶違い。エバンスの死を受けて、ジャケットを差し替えたということなのだ。

1. Lost In Madrid Part I
2. Siesta / Kitt's Kiss / Lost In Madrid Part II
3. Theme For Augustine / Wind / Seduction / Kiss
4. Submission
5. Lost In Madrid Part III
6. Conchita / Lament
7. Lost In Madrid Part IV / Rat Dance / The Call
8. Claire / Lost In Madrid Part V
9. Afterglow
10. Los Feliz

Miles Davis - trumpet
Marcus Miller - bass, bass clarinet, etc.
John Scofield - acoustic guitar (track 2)
Omar Hakim - drums (track 2)
Earl Klugh - classical guitar (track 8)
James Walker - flute (track 10)
Jason Miles - synthesizer programming

Recorded in January - February 1987 at Sigma Sound Studio, NYC and Amigos Studio, Hollywood.

Miles Davis / Tutu

デズモンド・ツツ司教が、2021年12月26日に90歳で他界した。「南アフリカのアパルトヘイト撤廃に向けた運動を率い、1984年にノーベル平和賞を受賞。86年、黒人として初めての南アフリカのキリスト教指導者の最高位に就任。大統領になったネルソン・マンデラ氏が率いるアフリカ民族会議が武装闘争を進めた一方、ツツ氏は非暴力を貫き、対話と相互理解による民主化を目指し続けた」とネット情報。そのツツ氏をタイトルにしたアルバム。89年秋に出版されたマイルス自叙伝には「ツツという名前を聞いた途端、うん、これだと思った。そして、Full Nelsonという曲はネルソン・マンデラに因んだものだ」と記されている。

2012年1月21日に死去した石岡瑛子氏によるプロデュースのジャケット。モノクロであり、マイルスやタイトルの文字が全く記載されていない。マイルスの「顔」が全てを語っているはずというのが、石岡氏のコンセプトだったのだろう。「マイルス」という日本語での4文字によって、自分は言わばジャズの虜になってしまった。しかしながら、その先にあったのはマイルスの眼光鋭い「顔」だったのだ。このアルバムには、マイルスから勝負を挑まれた音楽が詰まっている。

1. Tutu
2. Tomaas
3. Portia
4. Splatch
5. Backyard Ritual
6. Perfect Way
7. Don't Lose Your Mind
8. Full Nelson

Miles Davis - trumpet
Marcus Miller - bass guitars, guitar, synthesizers, drum machine programming, bass clarinet, soprano sax, other instruments
Jason Miles - synthesizer programming
Paulinho da Costa - percussion (tracks 1,3-5)
Adam Holzman - synthesizer solo (track 4)
Steve Reid - additional percussion (track 4)
George Duke - all except percussion, bass guitar, trumpet (track 5)
Omar Hakim - drums and percussion (track 2)
Bernard Wright - additional synthesizers (tracks 2,7)
Michael Urbaniak - electric violin (track 7)
Jabali Billy Hart - drums, bongos

Recorded in February 6 - March 25, 1986 in NYC and Los Angeles.