Miles Davis / At The Blackhawk Vol.2

CDはボーナストラックが付く事が多々ある。ところが、このCDにはLPにあったOn Green Dolphine Streetを削除。つまり、鋏が入っていた他の曲の完全復活を優先。例えば、1曲目のWell, You Needn'tは、LPでは4分45秒だったのが、CDでは8分11秒になった。CDのライナーノーツを担当した中山康樹氏は、そのことには一切触れていない(2013年11月付け)。データ重視の中山氏が気づかないはずはなく、口止めされたのだろう。

Vol.1とVol.2に分かれたアルバムで、前者はFriday Night、後者はSaturday Nightのタイトル。1961年4月21日は金曜日。Vol.1は21日の演奏を収録しているが、Vol.2は21日(Fran-Dance / Oleo / If I Were A Bell)と22日(Well, You Needn't / So What / Neo)からの収録である。中山氏は22日のライブと書いているが、これは間違い。マイルスのライブアルバムとしては、最初にリリースされたAt The Blackhawkだが多くの問題点を残した。そもそも、このライブ演奏には、やる気のなかったマイルスなのだ。

1. Well, You Needn't
2. Fran-Dance
3. So What
4. Oleo
5. If I Were A Bell
6. Neo

Miles Davis - trumpet
Hank Mobley - tenor saxophone
Wynton Kelly - piano
Paul Chambers - bass
Jimmy Cobb - drums

Recorded on April 21 & 22, 1961 at The Blackhawks, San Francisco.

Miles Davis / At The Blackhawk Vol.1

マイルス自叙伝②には、以下のように書かれている。妥協を許さないマイルスであるが、ブラック・ホークでのライブにハンク・モブレーの代役を当てることはできなかったのだろう。たしかに、注意深くアルバムを聴くと、マイルスとモブレーの駆け引きは一切ない。CDのライナーノーツによると、1961年4月4日から30日までブラックホークに出演したらしい。マイルスにとっては退屈な一か月間だった訳である。

「その1961年の春、4月だったと思うが、サンフランシスコの『ブラックホーク』の仕事に、自分で車を運転していくことにした。ニューヨークでは『ビレッジ・バンガード』に出ていたが、ハンク・モブレーがイマイチだったから、音楽に飽きがきはじめていた。〈中略〉ハンクとの演奏は、オレの創造力を刺激しなかったし、およそ面白くないものだった。そんなこともあって、オレは自分のソロが終わると、次の出番まで、ステージを降りるようになった。〈中略〉コロンビアは、オレ達を『ブラックホーク』でライブレコーディングしたが、バンドの連中もオレも、クラブに持ち込まれたたくさんの機材が気になってやりにくかった。スタッフが寄ってたかって音量のレベルなんかを調べたりして、調子が狂ってしまった」。

1. Walkin'
2. Bye Bye Blackbird
3. All Of You
4. No Blues
5. Bye Bye
6. Love, I've Found You

Miles Davis - trumpet
Hank Mobley - tenor saxophone
Wynton Kelly - piano
Paul Chambers - bass
Jimmy Cobb - drums

Recorded on April 21, 1961 at The Blackhawks, San Francisco.

Miles Davis / Someday My Prince Will Come

マイルス自叙伝②で、マイルスはこう説明している。『プロデューサーのテオ・マセロは、「ポーギーとベス」や「スケッチ・オブ・スペイン」辺りから、テープを切ったりつないだりして編集するようになっていたが、このレコードも、そうやって作ったんだ。さらにオレとトレーンは、ソロを後からレコーディングしたりもした。この編集方法はテオのトレードマークのようになったが、当時は珍しくて変わった、興味深いやり方だった。「サムディ・マイ・プリンス・ウイル・カム」で初めて、ジャケットに黒人の女性を使うようコロンビアに要求した。それで、フランシスがあのレコードのジャケットに登場したってわけだ。オレのレコードだったし、オレはフランシスの「プリンス」でもあったから、当然だろ。それから、プフランシングという曲は、彼女のために書いたんだからな』。

テオ・マセロによるテープの切り貼りは知っていたが、ソロを別に録音して被せるという手法まで導入していたとは思わなかった。恐らく、ハンク・モブレーが抜けた5曲目のTeoで試みたのだろう。輸入盤CDには、本作の詳しい録音データが掲載されている。Teoはモブレーを含めて1961年3月20日に録音したが、完成に至らず。翌21日にモブレー抜きで2回録音している。1回目の録音テープを流しながら、マイルスとコルトレーンはソロの部分を録り直したということだろうか。そして、フィリー・ジョー・ジョーンズが1曲だけ参加したBlues No.2は、LPには収録されなかったが、CDではボーナストラックとなった。それまでは、オムニバス盤Circle In The Roundに収まっていたのだ。

1. Someday My Prince Will Come
2. Old Folks
3. Pfrancing
4. Drad-Dog
5. Teo
6. I Thought About You
7. Blues No.2
8. Someday My Prince Will Come [alternate take]

Miles Davis - trumpet
Hank Mobley - tenor saxophone (tracks 1-4,6-8)
John Coltrane - tenor saxophone (tracks 1,5)
Wynton Kelly - piano
Paul Chambers - bass
Jimmy Cobb - drums (except track 7)
Philly Joe Jones - drums (track 7)

Recorded on March 7, 20 & 21, 1961 at Columbia 30th Street Studios, NYC.