Keith Jarrett / Tokyo '96

アルバムStandards(1983年1月録音)で旗揚げしたキース・ジャレット、ゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネットによるトリオ。やがて「スタンダーズ・トリオ」と呼ばれるようになった。それから13年を経て東京でのライブアルバム。彼らは決してスタンダード曲に固執した訳ではないだろうが、世間がそういうレッテルを貼ってしまった。ジャケットのキースは、それを苦笑いしているかのようだ。

ということは、終わり方、閉め方を彼らに委ねたことになる。つまり、スタンダード曲から脱却した「スタンダーズ・トリオ」は許されなくなってしまったのだ。このライブでも、彼らの演奏以上にスタンダード曲に対して、会場から拍手が沸いてきている感じ。ジャズとは変化することが宿命の音楽。それを封じ込めてしまったのはメディアであり、それを歓迎してきたのが聴き手。このライブアルバムでは、日本の観客の甘さを感じる。「いい加減に、スタンダードから足洗え!」と、ブーイングが出ても可笑しくないのだ。

1. It Could Happen To You
2. Never Let Me Go
3. Billie's Bounce
4. Summer Night
5. I'll Remember April
6. Mona Lisa
7. Autumn Leaves
8. Last Night When We Were Young / Caribbean Sky
9. John's Abbey
10. My Funny Valentine / Song

Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Jack DeJohnette - drums

Recorded on March 30, 1996 at The Bunkamura Orchard Hall, Tokyo.

Keith Jarrett / At The Deer Head Inn

演奏者と観客が一体となった真のライブアルバム。それだけではなく、このアルバムを聴いていると、まるで自分が観客の一人であるかのような気分になってくる。キースのピアノは凄いんだけど、あの唸り声だけは勘弁してくれという人がいる。まぁ、その気持ちは分かるのだが、だったらキースを聴くなよと言いたい。あの唸り声を含めてキースの「芸」なのだ。さて、キースがライナーノーツを書いていて、以下のように締め括っている(訳:坂本信氏)。

「暖かくて湿気が多く、雨模様の霧のかかった秋の夜、ポコノの山間での演奏だった。店の中にはたくさんの人で埋まり、入りきれない人たちは外で網戸越しに聴いていた。友人のビル・グッドウィンがこの模様を、ぼくのためにレコーディングしておいてくれたけど、あとで聴いてみたとき、これはいつか発表しなければと思った。皆さんもこのテープの演奏から、ジャズの何たるかを聴き取ることができると思う」。キース自身が評価しているライブアルバムなのだ。

1. Solar
2. Basin Street Blues
3. Chandra
4. You Don't Know What Love Is
5. You And The Night And The Music
6. Bye Bye Blackbird
7. It's Easy To Remember

Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Paul Motian - drums

Recorded on September 16, 1992 at The Deer Head Inn, Delaware Water Gap, PA.

Keith Jarrett / Bye Bye Blackbird

マイルスが65歳で死去した1991年9月28日から二週間後の録音。当時、マイルスのLPを片っ端から聴いた記憶がある。一方、キースはこの録音を決意した。キースの唸り声がしっかりと聴き取れる。マイルスへの想いが多くの言葉(唸り)になったのだろう。マイルスが愛した曲で構成されているが、5曲目のFor Milesはキース、ピーコック、ディジョネットによる合作。曲と言うよりマイルスへの哀悼文。そして、3人の連名による実際の哀悼文がジャケット内に記載されている。その最初と最後を訳してみた。

「Miles was a medium, a transformer, a touchstone, a magnetic field; the authentic minimalist (where, although there were so few notes, there was so much in those few notes). ..... Miles never forgot the music; we will never forget Miles. マイルスは媒体、変換器、試金石、磁場であり、本物のミニマリストだった(数少ない音に多くのものを含んでいた)。 ..... マイルスは音楽を決して忘れなかった。我々もマイルスを決して忘れない」。来月末には、マイルスが旅立ってから早30年になる。

1. Bye Bye Blackbird
2. You Won't Forget Me
3. Butch And Butch
4. Summer Night
5. For Miles
6. Straight, No Chaser
7. I Thought About You
8. Blackbird, Bye Bye

Keith Jarrett - piano
Gary Peacock - bass
Jack DeJohnette - drums

Recorded on October 12, 1991 at Power Station, NYC.