Joseph Jarman / Inheritance

1983年12月12日録音。LPを購入したのは、1984年4月8日。その証拠がライナーノーツに押印されている。もう38年前のことである。当時は、もらった給料から生活費を先に抜いて、残りはレコードに費やしていた(今もあまり変わらないけど)。インターネットは未整備で、ホームページやブログがなかった時代。ジャズの情報を得るのは月刊誌『スイングジャーナル』であり、購入したアルバムの記録を残すのは、「紙」ベースであった。

ジョセフ・ジャーマン。AEOC - Art Ensemble Of Chicago のメンバー。AEOCで活動しながら、リリースしたリーダーアルバム。ある種、コルトレーン後期、いや晩期と言うべき演奏スタイルも感じられ、80年代の新たな流れを作ろうとしたのかも知れない。ただ、それは決して野心的でもなく、商業ベースの思惑もなかったはず。ジャーマンは、1979年6月に山下洋輔とアルバムFirst Timeを録音している。それから4年後に、このアルバムに取り組んだ。7曲目は「オー先生に捧げる」。武術の先生だったらしい。山下とのセッションを通じて、日本のジャズや文化に興味を抱いたジャーマン。タイトルInheritanceは遺産継承の意味。CD化はされているものの、中古市場にはほとんど出回っていない。継承されていないのだ。

1. Inheritance
2. Petite Fleur
3. Old Time South Street Dance
4. Blues For Alice
5. Unicorn In Shadows
6. Love Song For A Rainy Monday
7. Oh Sensei Ni Sasageru

Joseph Jarman - soprano saxophone, tenor saxophone, c flute, b flute
Geri Allen - piano, synthesizer
Fred Hopkins - bass
Famoudou Don Miye - percussion

Recorded on December 12, 1983 at Vanguard Recording Studios, NYC.

Joe Henderson / The State Of The Tenor Live At The Village Vanguard Vol.2

ビレッジ・バンガードでの、テナー、ベース、ドラムのトリオとなると、どうしてもロリンズを連想してしまう。ロリンズの場合は、1957年11月3日の一晩のライブが3枚のLPに分かれて発売された。本作は3日連続のライブが2枚のCDに分散。ロリンズは一発カウンターパンチ、ジョー・ヘンダーソンはじわじわ効いてくるボディーブロー。50年代と80年代、ジャズの環境の違いも当然ながら影響している。

ロリンズのライブと比較するのは、本質的に無意味だが、本作は明らかに気迫に欠ける。と、ここまでは、Vol.1にも書いた。Vol.1は1985年11月14日から1曲、15日4曲、16日2曲という構成。Vol.2は15日2曲、16日5曲。このバラマキ配曲によって、各アルバムに特徴を出せなくなってしまった。では、なぜに巷では本作が名盤と呼ばれているのか。1980年録音のアルバムMirror, Mirror以来の5年振りのリーダー作だからということなのだろう。つまり、ヘンダーソン・ファンからすれば、待ちに待ったアルバム。「命盤」という感じ。

1. Boo Boo's Birthday
2. Cheryl
3. Y Ya La Quiero
4. Soulville
5. Portrait
6. The Bead Game
7. All The Things You Are

Joe Henderson - tenor saxophone
Ron Carter - bass
Al Foster - drums

Recorded on November 15 (tracks 3,5) & 16 (tracks 1,2,4,6,7), 1985 at The Village Vanguard, NYC.

Joe Henderson / The State Of The Tenor Live At The Village Vanguard Vol.1

ビレッジ・バンガードでの、テナー、ベース、ドラムのトリオとなると、どうしてもロリンズを連想してしまう。ロリンズの場合は、1957年11月3日の一晩のライブが3枚のLPに分かれて発売された。本作は3日連続のライブが2枚のCDに分散。ロリンズは一発カウンターパンチ、ジョー・ヘンダーソンはじわじわ効いてくるボディーブロー。50年代と80年代、ジャズの環境の違いも当然ながら影響している。

ロリンズのライブと比較するのは、本質的に無意味だが、本作は明らかに気迫に欠ける。その大きな要因はバックにある。ロン・カーターとアル・フォスターは、うまくまとめようとして、ヘンダーソンを煽っていない。結果的にヘンダーソンの演奏が平面的になっている。特にロンのベースの特徴は、良い意味でも悪い意味でも、先の読める演奏をすること。つまり、この編成ではハプニングが期待できないのだ。そのことが自然と観客にも伝わり、拍手にも気合いが入っていない。バンガードではないライブハウスでやれば、こんな風には叩かれなかっただろう。

1. Beatrice
2. Friday The 13th
3. Happy Reunion
4. Loose Change
5. Ask Me Now
6. Isotope
7. Stella By Starlight

Joe Henderson - tenor saxophone
Ron Carter - bass
Al Foster - drums

Recorded on November 14 (track 3), 15 (tracks 1,2,5,7) & 16 (tracks 4,6), 1985 at The Village Vanguard, NYC.