John Coltrane / Transition

1965年5月と6月の録音。しかし、アルバムがリリースされたのはコルトレーンの死から3年後の1970年7月。5年間もお蔵入りしていたのだが、ジャケットにはnew recordings never previously availableと書かれている。さらに、2曲目のDear Lordのドラムはエルビン・ジョーンズではなくロイ・ヘインズであるにもかかわらず、ジャケット裏のパーソネルには彼の名前がない。謎の多いアルバムである。

コルトレーンは、アルバム『至上の愛』を超えることをここで目指したのだろう。だが、『至上の愛』によって一つの頂点を極めてしまったメンバーにとっては、新たな境地を開拓することは難しかったようだ。コルトレーン自身がそれを感じ、この録音をお蔵入りさせてしまった気がする。そして、それを切り拓くように、このアルバムの約2週間後に集団即興演奏のレコーディング『アセッション』に臨むことになった。『至上の愛』と『アセッション』に挟まれ八方塞がりとなったアルバムと言える。

1. Transition
2. Dear Lord
3. Suite
- Prayer And Meditation: Day
- Peace And After
- Prayer And Meditation: Evening
- Affirmation
- Prayer And Meditation: 4 A.M.

John Coltrane - tenor saxophone
McCoy Tyner - piano
Jimmy Garrison - bass
Elvin Jones - drums (tracks 1,3)
Roy Haynes - drums (track 2)

Recorded on May 26 and June 10, 1965 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

John Coltrane / KULU SE MAMA

収録は3曲のみで、それぞれの録音日とメンバーが異なり、録音の逆順で収録。つまり、タイトル曲Kulu Sé Mamaを1965年10月に録音してから、6月に録音していた2曲を組入れてアルバム化したことになる。しかも、タイトル曲はコルトレーンの作品ではなく、ボーカルというか詩の朗読をしたJuno Lewis(ジュノ・ルイス)によるもの。

英文ライナーノーツは、ルイスの紹介から始まる。ドラマー、歌手、作曲家。1931年にニューオーリンズで生まれ、ロサンゼルスを拠点に活動。コルトレーンとの互いの友人を通して録音前に知り合ったとのこと。Kulu Sé Mama とはJuno Sé Mamaの意味で、ルイスの母親に捧げた詩。LPの見開きジャケット右には、この詩とルイスを描いたと思われるイラストが記載されている。ということで、コルトレーン名義ながら、ルイスを前面にフィーチャーしたアルバムなのである。コルトレーンのアルバムの中では異色な一枚。

1. Kulu Se Mama
2. Vigil
3. Welcome

John Coltrane - tenor saxophone
Pharoah Sanders - tenor saxophone (track 1)
Donald Rafael Garrett - bass, bass clarinet (track 1)
McCoy Tyner - piano (tracks 1,3)
Jimmy Garrison - bass (tracks 1,3)
Frank Butler - drums (track 1)
Elvin Jones - drums
Juno Lewis - vocals, percussion (track 1)

Track 1
Recorded on October 14, 1965 at Western Recorders, Los Angeles.

Tracks 2 & 3
Recorded on June 10 (track 3) & 16 (track 2), 1965 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

John Coltrane / Ascension

40分に渡る11人編成でのアンサンブルを1日で2回録音している。40:49 (Edition II)、38:30 (Edition I) というデータ。当初Edition IがLP化されたものの、すぐにEdition IIへ取り替えられて発売。その後、再度Edition Iが発売されて、敢えてタイトルにEdition Iと記載されている。

40分の集団即興を2回録音するというのは、ちょっと異常としか思えないのだが、曲の構成はほぼ同じ。〈アンサンブル〉〈ソロ〉〈アンサンブル〉を繰り返し、ソロの順番はほぼ同じ。ベースデュオの後、クロージングのアンサンブルで終結。ただし、Edition Iにはクロージングの前に、エルビン・ジョーンズの30秒ほどのソロが入る。何故に差替えがあったのかは不明だが、2回目の演奏に全体調和をコルトレーンは感じたのだろう。CDではII、Iの順で収録され計79分19秒。見事にCDの録音時間内に収まっている。ちなみに、Ascensionは「上昇」の意味。Theを冠すれば「キリストの昇天」らしい。そして、ジャケットではコルトレーンがソプラノを手にしているが、本作で吹いているのはテナーのみである。

1. Ascension (Edition II)
2. Ascension (Edition I)

John Coltrane - tenor saxophone
Pharoah Sanders - tenor saxophone
Archie Shepp - tenor saxophone
Marion Brown - alto saxophone
John Tchicai - alto saxophone
Freddie Hubbard - trumpet
Dewey Johnson - trumpet
McCoy Tyner - piano
Art Davis - bass
Jimmy Garrison - bass
Elvin Jones - drums

Recorded on June 28, 1965 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.