Herbie Hancock / Five Stars

自分も体験した「あの伝説の雨の田園コロシアム」。その直後にスタジオで録音されたアルバム。当時、話題を集めていたダイレクト・カッティングという方式で録音された。テープを介さずに、直接レコードに刻みを入れていく方式。確かに最高の音質を確保できるのだろうが、LPのA面・B面に収めるための時間的制約があるのは事実。

なので、超一流のジャズマンの演奏であるが、最高のパフォーマンスになっていない。CD化によって、Skaglyと Finger Paintingは2つのテイクが収録。それぞれの2つの演奏時間はほとんど同じ。Skaglyは9分58秒と10分15秒。Finger Paintingは6分45秒と6分43秒。つまり、アドリブの勝負ではなく、時間厳守が勝負所。そもそも、ライブでの一発勝負を本領にしたV.S.O.P.のメンバーをスタジオに押し込め、時間制約まで課して制作したアルバム。音質重視とは作り手の自己満足とも言えるのだ。

1. Skagly [take 2]
2. Finger Painting [take 2]
3. Mutants On The Beach
4. Circe
5. Skagly [take 1]
6. Finger Painting [take 1]

Wayne Shorter - soprano saxophone, tenor saxophone
Freddie Hubbard - trumpet, flugelhorn
Herbie Hancock - piano
Ron Carter - bass
Tony Williams - drums

Recorded on July 29, 1979 at CBS Sony Studio, Tokyo.

Herbie Hancock / Herbie Hancock Trio

CD帯から。「81年の来日時にレコーディングされた珠玉のトリオアルバム。ハービー、ロン&トニーによる究極のアコースティック・ジャズ決定盤」。この短い文章に間違いが2ヵ所ある。「究極」と「決定」。安易に使ってはイケナイ漢字。

三人の最高プレイヤーによる演奏であることは間違いなし。だけど、最高のプレイヤーが三人集まれば、究極のプレイになるとは限らない。ましてや、それが決定的なはずがない。考えてみれば分かる。このアルバムの録音のためだけに、この三人が来日する訳がない。スケジュールは組まれていたのだろうが、一日で録音は終えている。つまり、やれることをやっただけ。「うまい」けど「(印象に)残らない」。最高のプレイで、最低のジャズ。しかも、トニー・ウィリアムス作のラスト曲La Maison Goreeは、唐突に終わる。尻切れトンボのアルバムでもある。

1. Stable Mates
2. Dolphin Dance
3. A Slight Smile
4. That Old Black Magic
5. La Maison Goree

Herbie Hancock - piano
Ron Carter - bass
Tony Williams - drums

Recorded on 27 July 1981 at CBS Sony Shinanomachi Studio, Tokyo.

Horace Silver / The Tokyo Blues

ホレス・シルバーは1961年末に初来日し、翌年1月から全国で19回の公演を行った。残念ながら、その音源は残っていないようだ。このアルバムは、その来日をきっかけに公演時と同じメンバー構成で制作されている。従って、収録曲のタイトルは日本に因んだもので、ジャケットの写真もそれに合わせている。Francis Wolff(フランシス・ウルフ)による撮影で、ニューヨークの日本庭園らしい。オリジナルのライナーノーツには、シルバー自身のコメントがあり、その全文と要約した翻訳を以下に記載。日本のイメージとラテンのリズムを組み合わせた作品であることが分かる。ちなみに、4曲目のCherry Blossom以外は、シルバーの作品。

This album is dedicated to all of our many fans in Japan and to all of the Japanese people who were so very kind to us while we were making our concert tour there. It is our wish to return again someday soon. While in Japan, I noticed that the Japanese people were very fond of Latin music, which I also am very fond of. In writing some of these compositions I have attempted to combine the Japanese feeling in the melodies with the Latin feeling in the rhythms. I hope you enjoy them.

このアルバムは、日本の多くのファン、そしてコンサートツアーで親切にしてくれた日本人に捧げたものです。いつかまた日本に戻って来られることを願っています。ツアーの期間、日本人はラテン音楽が好きだと気づきました。私も大好きです。メロディーに日本、リズムにラテンのそれぞれの感覚を組み合わせ作曲しました。

1. Too Much Sake
2. Sayonara Blues
3. The Tokyo Blues
4. Cherry Blossom
5. Ah! So

Junior Cook - tenor saxophone (tracks 1-3,5)
Blue Mitchell - trumpet (tracks 1-3,5)
Horace Silver - piano
Gene Taylor - bass
John Harris Jr. - drums

Recorded on July 13 & 14, 1962 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.