ホレス・パーラン名義のアルバムだが、タイトルから分かるようにJoe Van Enkhuizen(ジョー・ヴァン・エンキューゼン)が実質的なリーダーである。ジャケットもそれを意識し、二人の名前を赤く強調している。だったら、ジョーの名義にして勝負すれば良かったのでは、と思うのだが。オランダのタイムレス・レーベルは、宣伝広告費が限られていたに違いない。ジョー名義では、市場に訴求できないと思ったのだろう。演奏内容は中々のものだが、1980年代後半の録音であることを考えると、斬新さが足りない感じがする。
ジャケットをよく見ると、タイトルの下に括弧書きでCANTIGA PARA MEU PAIとある。これはポルトガル語で、「私の父のための歌」の意味。では何故にポルトガル語表記を入れたのか。レナード・フェザーの英文ライナーノーツには、次の一文がある。"My mother was of Irish and Negro descent, my father of Portuguese origin"(母はアイルランドとニグロの血を引き、父はポルトガル系)。まさしく、ホレス・シルバーが父親に捧げたアルバムなのだ。
ところで、6曲目Lonely Womanはシルバー自身の作品で、これは母親の苦労を描いたのかも知れない。オーネット・コールマンがアルバムThe Shape Of Jazz To Come(59年5月録音)に収録した同名曲とは異なる。ちなみ、パット・メセニーのアルバムRejoicing(83年11月)では、シルバーのLonely Womanを収録。以上の背景を知って本作を聴くと、シルバーはなおさら掛け値なしでカッコイイ。ジャズをある意味で「芸能」にした男である。
1. Song For My Father 2. The Natives Are Restless Tonight 3. Calcutta Cutie 4. Que Pasa 5. The Kicker 6. Lonely Woman 7. Sanctimonious Sam 8. Que Pasa 9. Sighin' And Cryin' 10. Silver Treads Among My Soul
Tracks 1, 2, 4 & 5 Joe Henderson - tenor saxophone Carmell Jones - trumpet Horace Silver - piano Teddy Smith - bass Roger Humphries - drums
Tracks 3, 6 - 10 Junior Cook - tenor saxophone Blue Mitchell - trumpet Horace Silver - piano Gene Taylor - bass Roy Brooks - drums
Tracks 1, 2, 4 & 5 Recorded on October 26, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.
Tracks 3, 6, 7 & 8 Recorded on October 31, 1963 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.
Tracks 9 & 10 Recorded on January 28, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.
ボサノバRecado Bossa Novaを中心に、ご機嫌な曲が並ぶ。バラードI See Your Face Before Meの挿入もよし。ハンク・モブレー名義のアルバムは10枚所有しているが、そのどれもがスタジ録音。モブレーのディスコグラフィーを調べてみたら、リーダーとしてのライブアルバムは極めて少なかった。ジャズ・メッセンジャーズに属していた時は、アルバムAt The Cafe Bohemia(1955年録音)やAt The Jazz Corner Of The World(59年)、マイルスの下ではAt The Blackhawk(61年)を残したのだが…。逆に言えば、そういう経験があったからこそ、一発勝負のライブアルバムの怖さを知ったのかも知れない。