Horace Parlan / Joe Meets The Rhythm Section

ホレス・パーラン名義のアルバムだが、タイトルから分かるようにJoe Van Enkhuizen(ジョー・ヴァン・エンキューゼン)が実質的なリーダーである。ジャケットもそれを意識し、二人の名前を赤く強調している。だったら、ジョーの名義にして勝負すれば良かったのでは、と思うのだが。オランダのタイムレス・レーベルは、宣伝広告費が限られていたに違いない。ジョー名義では、市場に訴求できないと思ったのだろう。演奏内容は中々のものだが、1980年代後半の録音であることを考えると、斬新さが足りない感じがする。

なお、ジョーがクレジットされた所有アルバムは、この1枚のみ。スイングジャーナル1976年4月臨時増刊『世界ジャズ人名辞典』に、彼の名前はない。Wikipediaによると、「1939年6月24日生まれ、オランダのジャズミュージシャン(アコーディオン、サックス)および作曲家」とあり、2000年以降はサックスの代わりにアコーディオンを演奏したとのこと。タイムレスの作戦は成功したようだ。

1. Alfie's Theme
2. God Bless The Child
3. Bluesville
4. Willow Weep For Me
5. Wadin'
6. F.S.R.

Joe Van Enkhuizen - tenor saxophone
Horace Parlan - piano
Rufus Reid - bass
Al Harewood - drums

Recorded in July 1986.

Horace Silver / Song For My Father

ジャケットをよく見ると、タイトルの下に括弧書きでCANTIGA PARA MEU PAIとある。これはポルトガル語で、「私の父のための歌」の意味。では何故にポルトガル語表記を入れたのか。レナード・フェザーの英文ライナーノーツには、次の一文がある。"My mother was of Irish and Negro descent, my father of Portuguese origin"(母はアイルランドとニグロの血を引き、父はポルトガル系)。まさしく、ホレス・シルバーが父親に捧げたアルバムなのだ。

さらに、ジャケットにはTHE HORACE SILVER QUINTETの表記があるが、正確には「2つのグループによる」と追記すべき。シルバーのアルバムは12枚所有。その中で、参加メンバーが異なるセッションで構成されているのは本作のみ。1963年10月と64年1月のセッションを終え、アルバム作りは中断。新メンバーによる64年10月のセッションで本作は完成。父親へのアルバムは難産だった。

ところで、6曲目Lonely Womanはシルバー自身の作品で、これは母親の苦労を描いたのかも知れない。オーネット・コールマンがアルバムThe Shape Of Jazz To Come(59年5月録音)に収録した同名曲とは異なる。ちなみ、パット・メセニーのアルバムRejoicing(83年11月)では、シルバーのLonely Womanを収録。以上の背景を知って本作を聴くと、シルバーはなおさら掛け値なしでカッコイイ。ジャズをある意味で「芸能」にした男である。

1. Song For My Father
2. The Natives Are Restless Tonight
3. Calcutta Cutie
4. Que Pasa
5. The Kicker
6. Lonely Woman
7. Sanctimonious Sam
8. Que Pasa
9. Sighin' And Cryin'
10. Silver Treads Among My Soul

Tracks 1, 2, 4 & 5
Joe Henderson - tenor saxophone
Carmell Jones - trumpet
Horace Silver - piano
Teddy Smith - bass
Roger Humphries - drums

Tracks 3, 6 - 10
Junior Cook - tenor saxophone
Blue Mitchell - trumpet
Horace Silver - piano
Gene Taylor - bass
Roy Brooks - drums

Tracks 1, 2, 4 & 5
Recorded on October 26, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Tracks 3, 6, 7 & 8
Recorded on October 31, 1963 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Tracks 9 & 10
Recorded on January 28, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Hank Mobley / Dippin'

ボサノバRecado Bossa Novaを中心に、ご機嫌な曲が並ぶ。バラードI See Your Face Before Meの挿入もよし。ハンク・モブレー名義のアルバムは10枚所有しているが、そのどれもがスタジ録音。モブレーのディスコグラフィーを調べてみたら、リーダーとしてのライブアルバムは極めて少なかった。ジャズ・メッセンジャーズに属していた時は、アルバムAt The Cafe Bohemia(1955年録音)やAt The Jazz Corner Of The World(59年)、マイルスの下ではAt The Blackhawk(61年)を残したのだが…。逆に言えば、そういう経験があったからこそ、一発勝負のライブアルバムの怖さを知ったのかも知れない。

しかし、本作に収録された曲をライブで演奏していれば、観客から熱い声援と拍手が乱れ飛んだことだろう。ジャケットdippin'の文字も飛び跳ね、「i」の上のポイントも回転しているのに。プロデューサーのアルフレッド・ライオンは、Live Dippin'の制作をモブレーに提案し、モブレーはやんわりと断ったと想像してしまう。

1. The Dip
2. Recado Bossa Nova
3. The Break Through
4. The Vamp
5. I See Your Face Before Me
6. Ballin'

Hank Mobley - tenor saxophone
Lee Morgan - trumpet
Harold Mabern, Jr. - piano
Larry Ridley - bass
Billy Higgins - drums

Recorded on June 18, 1965 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.