Hank Mobley / Reach Out!

1968年1月録音のアルバムで、R&BグループFour Topsのヒット曲Reach Out I’ll Be Thereを主題にして構成している。さらには、Little Anthony & The ImperialsのGoin' Out of My Headも収録。中学生の頃、どちらもラジオからよく流れていた曲。だからと言って、ジャズの要素が薄れているハンク・モブレーのアルバムではない。メンバーを見ても、オイオイ!凄いじゃないかというメンツ。ジョージ・ベンソンのギターが全体に光る。

だが、どうにもこうにも、先の2曲はビートに乗れていない。特にドラムのビリー・ヒギンスがもたついている。ベースのボブ・クランショウも、やる気のないベースライン。むしろ、これらを除いた4曲(3曲はモブレーの作品)で、メンバー全員が本領発揮。エッフェル塔をバックに主役のモブレーは、ポップス曲のよい材料を仕入れたけど、料理の仕方がよく分からないと苦笑いしている感じだ。

1. Reach Out (I'll Be There)
2. Up, Over, And Out
3. Lookin' East
4. Goin' Out Of My Head
5. Good Pickin's
6. Beverly

Hank Mobley - tenor saxophone
Woody Shaw - trumpet, flugelhorn
George Benson - guitar
Lamont Johnson - piano
Bob Cranshaw - bass
Billy Higgins - drums

Recorded on January 19, 1968 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

本田竹曠 / Another Departure

CD化されているが、中古市場に全く姿を現さないアルバム。名盤とまでは言わないものの、所有者にとっては貴重な愛盤なのだろう。収録された5曲は、すべて本田竹曠の作品。いずれも印象深い曲で、ピアニストだけでなく、コンポーザーとしての本田の才能を発揮したアルバムである。グレート・ジャズ・トリオのビレッジ・バンガードのライブは1977年2月。それから3ヶ月後に、ハンク・ジョーンズから本田に交代して録音した形になる。ただし、このメンバーでのセッションは、この1回限り。

LPのライナーノーツは油井正一氏が担当。最後にこう締め括っている。「〈このセッションを契機に、また自分の音楽に新しいステップが生まれる感じ〉と語る本田の言葉通り、彼の諸作を通じてもモニュメンタルな作品となった。まだ他にもこのセッションで演じられた6曲が残っているが、遠からぬ日に発表されることとなろう」。このノーツが書かれてから45年が経過したが、いまだに残り6曲は未発表のままだ。

1. Calypso Street
2. Spirits Flow
3. Wonder
4. Longing
5. Puddle

Takehiro Honda - piano
Ron Carter - bass
Tony Williams - drums

Recorded on May 2 & 3, 1977 at at Vanguard Studio, NYC.

★ 2022年5月6日に、「さくらのブログ」へ以下のコメントをいただいた。感謝。

いつも楽しく拝見しています。本田さんのアルバムですが、Reaching For Heaven というのがあり、これが同じ録音日なので、続編ではないでしょうか。スタンダードナンバーもあり、You Are My Heart's Delight というのがいいですね。

Hampton Hawes / The Green Leaves Of Summer

ハンプトン・ホーズは1958年から5年間、麻薬中毒で収監。復帰後の第一作。クリーンなイメージを出そうとしたことが、ジャケットに表れている。ホーズのアルバムは、本作を含めて4枚所有。55年から56年に録音されたThe Trio Vol.2のジャケットに写るホーズとは別人のようだ。ホーズは1928年11月生まれ。つまり、30代前半を棒に振ったことになる。ホーズとしては、5年振りにセッションができること、そして録音に臨むことの喜びを感じたに違いない。だが、当時のジャズ界は大きなうねりの中にあった。

マイルスはアルバムKind Of Blueを59年にリリース。60年にはコルトレーンのGiant Steps、61年にはコールマンのFree Jazzが続けてリリースされた。そういう流れの中で、64年2月に録音された本作。ここでの演奏には新鮮さを感じる一方、時代に取り残されたとも言えるのだ。ましてや、ロリンズ作のSt. Thomasを取り上げたことが、安易な感じがしてマイナス評価になってしまった気がする。

1. Vierd Blues
2. The Green Leaves Of Summer
3. Ill Wind
4. St. Thomas
5. Secret Love
6. Blue Skies
7. The More I See You
8. G.K. Blues

Hampton Hawes - piano
Monk Montgomery - bass
Steve Ellington - drums

Recorded on February 17, 1964 at Contemporary Records' Studio, Los Angeles.

The Trio Vol.2