Herbie Hancock / Maiden Voyage

1960年代半ばでありながら、実にスリリングでスマートなアルバム。その後、ハービー・ハンコックは徐々にファンク系へ傾き、約10年後の1976年6月にV.S.O.P.で4ビートに復帰。つまり、10年間の航海に旅立ったアルバムとも言える。CDで何度も再発されているが、いわゆるボーナストラックが付いていない。この5曲構成が完璧な印だ。

ジャケット裏にハンコック自身による解説があることを発見。訳してみた。「海は芸術のすべての分野に心の想像力をかき立ててきた。海と生命の本質を示す水生生物には、謎の要素がまだ存在している。アトランティス、サルガッソ海、巨大な蛇、人魚。人間の海での経験による伝承の謎の一部だ。海の広大さと威厳、処女航海の素晴らしさ、遊び心のあるイルカの優雅さ、小さな海の生き物でさえ生き残るための闘争、ハリケーンの破壊力、復讐の女神。この音楽はそれらを捉えようとしている」。

1. Maiden Voyage
2. The Eye Of The Hurricane
3. Little One
4. Survival Of The Fittest
5. Dolphin Dance

George Coleman - tenor saxophone
Freddie Hubbard - trumpet
Herbie Hancock - piano
Ron Carter - bass
Tony Williams - drums

Recorded on March 17, 1965 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Herbie Hancock / Empyrean Isles

1964年6月。コルトレーンはアルバムCrescent、エリック・ドルフィーはアルバムLast Dateを録音。そして、ハービー・ハンコックの本作。ジャズの大きなうねりの前兆といえる時期。同月29日、ドルフィーはベルリンで客死。アルバート・アイラーは7月にアルバムSpiritual Unity、コルトレーンは12月にアルバムA Love Supremeを録音。

そんなジャズの流れの中、ハンコックは自分流ジャズの創作を開始した。タイトルは『天空の島々』。フレディ・ハバードのコルネットが上空へ突き刺さる感じだ。そして、65年3月録音の名盤Maiden Voyageへとつながっていく。マイルスは64年7月に、ハンコック、サム・リバース、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスを引き連れて来日。ライブアルバムMiles In Tokyoに収録されているのは、So WhatやWalkin'などのお馴染みの曲。この時点では、明らかにマイルスの先をハンコックが走っていた。

1. One Finger Snap
2. Oliloqui Valley
3. Cantaloupe Island
4. The Egg

Freddie Hubbard - cornet
Herbie Hancock - piano
Ron Carter - bass
Tony Williams - drums

Recorded on June 17, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Herbie Hancock / Takin' Off

1940年4月生まれのハービー・ハンコック。22歳で初のリーダーとなる本アルバムを録音。フロント陣は、23年2月生まれのデクスター・ゴードン、そして38年4月生まれのフレディ・ハバード。なぜに生まれた年を気にするかと言えば、ジャケットである。タイトルTAKIN' OFFの下にハバード、さらにその下にゴードン。デザインのバランスからという理由も考えられない。デザイナーはブルーノート専属のReid Miles(リード・マイルス)。一説によると、マイルスはジャズに興味を持っていなかったようだ。

どうでもいいことかも知れないが、所有するブルーノート盤でピアニストがリーダー、トランペットとサックスが入ったクインテットのジャケットを調べてみた。デューク・ジョーダンのFlight To Jordan、ホレス・パーランのOn The Spur Of The Moment、ソニー・クラークのLeapin' And Lopin'は、リーダー、トランペッター、サックス奏者の順に記載。少なくともブルーノートではそれが慣例なのだろう。

輸入盤CDのライナーノーツはLeonard Feather(レナード・フェザー)が担当。以下のハンコックのコメントを引用している。ハンコックは参加メンバーに謝辞を述べ、特にゴードン、その次にハバードの演奏を讃えている。ハンコックの門出を祝うアルバムではあるけれど、ゴードンにとっては腑に落ちない一枚。勝手に自分はそう思っている。

"I was happy with the way the fellows worked with each other, and with me. I particularly like Dexter Gordon's solo on 'Maze' and 'Watermelon Man,' and Freddie Hubbard's work on 'Empty Pockets' and 'Driftin'."

1. Watermelon Man
2. Three Bags Full
3. Empty Pockets
4. The Maze
5. Driftin'
6. Alone And I
7. Watermelon Man [alternate take]
8. Three Bags Full [alternate take]
9. Empty Pockets [alternate take]

Dexter Gordon - tenor saxophone
Freddie Hubbard - trumpet
Herbie Hancock - piano
Butch Warren - bass
Billy Higgins - drums

Recorded on May 28, 1962 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.