Gary Peacock / December Poems

アルバムの邦題は『12月の詩(うた)』。そのままであるが、あえて「詩」を「うた」と読ませている。ゲイリー・ピーコックがこのアルバムを録音した時は42歳。1977年12月のオスロ。日付は明記されていない。ヤン・ガルバレクが2曲に参加しながらも、多重録音による実験的なベースソロを試みている。

「実験的」と書いたのは、5曲目のFlower Crystalsには、クレジットされていないピアノが聴こえるからだ。これがピーコックによる演奏なのかは不明。つまり、録音日の記載もないことを含め、多重録音の実験段階で未完成のままリリースしてしまったような気がする。まぁ、年を越したくなかったのだろう。なお、本作はCD化されているが、完全に廃盤状態。

1. Snow Dance
2. Winterlude
3. A Northern Tale
4. December Greenwings
5. Flower Crystals
6. Celebrations

Gary Peacock - bass
Jan Garbarek - tenor saxophone, soprano saxophone (tracks 2,4)

Recorded in December 1977 at Talent Studio, Oslo, Norway.

George Wallington / Jazz For The Carriage Trade

英文ライナーノーツには、こんな一文がある。As modern pianist and group leader extraordinaire, George Wallington is a prime caterer to the carriage trade.(現代のピアニストであり、優れたグループリーダーであるジョージ・ウォーリントンは、上得意客のサービス係だ)。アルバムタイトルThe Carriage Tradeを引用してウォーリントンを形容している。

確かにジャケットを見ると、スーツを着て馬車に乗り、しかもウォーリントンはなぜか傘を差している。サービス精神旺盛ということだろうか。さらによく見ると、アート・テイラーが写っていない。このこともライナーノーツに記載があった。「テイラーは、表紙に写っているドラマーJunior Bradley(ジュニア・ブラッドリー)が町から離れていたので、録音に参加した」。ならば、録り直せ!と言いたのだが、もっとよく見ると、馬の足首が不自然なのだ。つまり、準備にかなり手間をかけた撮影。そして、A radio "ham", his call letters are W2DSE. (アマチュア無線の彼のコールサインはW2DSE)と紹介されている。となると、傘ではなく、彼自身が考案した変形アンテナかもしれない。

1. Our Delight
2. Our Love Is Here To Stay
3. Foster Dulles
4. Together We Wail
5. What's New
6. But George

Phil Woods - alto saxophone
Donald Byrd - trumpet
George Wallington - piano
Teddy Kotick - bass
Arthur Taylor - drums

Recorded on January 20, 1956 at Rudy Van Gelder Studio, Hackensack, New Jersey.

Gil Evans / Where Flamingos Fly

誰が最初に言い出したのか知らないが、ギル・エバンスは「音の魔術師」と呼ばれることがある。何となくギルのイメージが伝わってくるが、決してトリッキーなアレンジをする訳ではない。聴き手の想像を超えるような楽器の特性を導き出すことが特徴。本作のように、時にはボイスも使う。ここでは、ビリー・ハーパーを中心とした力強いパフォーマンスが展開されるものの、スコアに縛られている感じ。だからこそ、ギルの本領発揮なのだろう。だが、エネルギーが伝わってこない。こればかりは聴き手の感性の問題。少なくとも、自分にとっては作られ過ぎたジャズ、音楽としか思えないのだ。

スイングジャーナルのディスク大賞・銀賞を1981年に受賞。録音は1971年。この10年経過の意味は、録音当時にギルはレコード会社との契約がなかったため、テープを自身で保存していたことによるそうだ。発売当時の国内盤LPジャケットは、独自に制作された模様で「星図」を示している。そして、フラミンゴの群れが飛ぶ。ジャケット裏には"Front Cover Art & Design: Koichi Satoh"と表記。輸入盤はCD化されたようだが、廃盤状態で手が出せない価格。

1. Zee Zee
2. Nana
3. Love Your Love
4. Jelly Rolls (mistitled "Hotel Me" on the original release)
5. Where Flamingos Fly
6. El Matador

Gil Evans - piano, electric piano, tack piano, arranger, conductor
Billy Harper - tenor saxophone, chimes
Howard Johnson - tuba, baritone saxophone, flugelhorn
Johnny Coles, Stan Shafran (tracks 2-5) - trumpet
Trevor Koehler - soprano saxophone, baritone saxophone (tracks 2-5)
Hannibal Peterson, Jimmy Knepper - trombone (tracks 2-5)
Don Preston, Phil Davis (tracks 2-5) - synthesizer
Harry Lookofsky - tenor violin (tracks 1,6)
Joe Beck - guitar, mandolin (tracks 1,6)
Bruce Johnson - guitar (tracks 2-5)
Richard Davis - double bass (tracks 2-5)
Herb Bushler (tracks 1,6), Bill Quinze (tracks 2-5) - electric bass
Lenny White (tracks 1,6), Bruce Ditmas (tracks 2-5) - drums
Sue Evans - percussion, marimba (tracks 1,2,6)
Airto Moreira, Flora Purim - vocals, percussion (tracks 2,6)

Recorded in 1971 in NYC.