Duke Ellington / The Popular Duke Ellington

1曲目の「A列車で行こう」のイントロは、ワルツのアレンジでデューク・エリントンのピアノから始まる。このイントロを聴いた瞬間、「このアルバムは上出来!まさしくポピュラー・エリントンだ」と感じた。だが、ジャズ評論家Leonard Feather(レナード・フェザー)の英文ライナーノーツは、次のように始まるのだ。

Somehow this album title seems redundant. Can anyone recall an unpopular Duke Ellington? A period in his career when he did not enjoy, at one level or another, a substantial measure of popularity?(このアルバムタイトルは、どうもすっきりしない。ポピュラーでない ― 不人気なデューク・エリントンを思い出せはしないだろう。彼が恵まれなかった時期でさえ、しっかりした人気があったはずだ)。そして、次の一文がある。

What is meant, then, by THE POPULAR DUKE ELLINGTON is that works have been selected which have endured most steadfastly through the decades.(このアルバムには、何十年にもわたって最も不動の人気を誇る作品が選ばれた)。つまり、レナード・フェザーは、"Beyond the popular"とすべきだったと言いたかったのだろう。

1. Take the "A" Train
2. I Got It Bad (And That Ain't Good)
3. Perdido
4. Mood Indigo
5. Black And Tan Fantasy
6. The Twitch
7. Solitude
8. Do Nothin' Till You Hear From Me
9. The Mooche
10. Sophisticated Lady
11. Creole Love Call

Jimmy Hamilton - tenor saxophone, clarinet
Paul Gonsalves - tenor saxophone
Russell Procope - alto saxophone, clarinet
Johnny Hodges - alto saxophone
Harry Carney - baritone saxophone
Cat Anderson, Mercer Ellington, Herb Jones, Cootie Williams - trumpet
Lawrence Brown, Buster Cooper - trombone
Chuck Connors - bass trombone
Duke Ellington - piano
John Lamb - bass
Sam Woodyard - drums

Recorded on May 9 (tracks 1, 2 & 9), May 10 (tracks 5, 6, 10 & 11) and May 11 (tracks 3, 4, 7 & 8), 1966 at RCA Hollywood Recording Studio B in Los Angeles, CA.

Duke Ellington / This One's For Blanton

ある種、企画モノのアルバム。タイトルに引用されているJimmy Blanton(ジミー・ブラントン)は、モダンベースの開祖と言われている。ブラントンの英文Wikipediaには、次のようなことが書いてある。「1918年10月5日生まれ。ブラントンは39年にエリントンのバンドに参加。同年11月22日に、ピアノとベースのデュオによる商業的な録音を最初に行なった。エリントンは、このベーシストをバンドの正面と中央に毎晩配置。これは前代未聞だった。健康の悪化により、41年末にバンドを離れ、42年7月30日に結核により他界。享年23」。

いくつかの日付を抜き出したのは、1972年12月5日に本作を録音した理由を知りたかったから。ブラントン没後30年なのだが、半年ほどタイミングを逃している。一方、レイ・ブラウンの英文Wikipediaによると、ブラウンが最初に影響を受けたのはブラントンとのこと。つまり、エリントン、ブラウン、そしてプロデューサーのノーマン・グランツの誰かが、72年の終わり近くになって、ふと没後30年に気付いたのだろう。

1. Do Nothin' Till You Hear From Me
2. Pitter Panther Patter
3. Things Ain't What They Used To Be
4. Sophisticated Lady
5. See See Rider
6. Fragmented Suite For Piano And Bass: First Movement
7. Fragmented Suite For Piano And Bass: Second Movement
8. Fragmented Suite For Piano And Bass: Third Movement
9. Fragmented Suite For Piano And Bass: Fourth Movement

Duke Ellington - piano
Ray Brown - bass

Recorded on December 5, 1972 at United Recording Studios, Las Vegas, Nevada.

Duke Ellington / Money Jungle

このアルバムは、聴き手に対して様々な印象を与えるだろう。音の厚みが中途半端ではない。ピアノ、ベース、ドラムを横に並べたのではなく、縦に積み上げた感じ。自分としては、デューク・エリントンのピアノ、マックス・ローチのドラムにしびれる以上に、ミンガスのベースを中心に聴いてしまうのだ。

大学のジャズ研に入った時、ウッドベースをやることにした。特に理由はなかったが、「お前、ベースに向いているよ」と先輩から言われたからである。さて、このアルバムをどこのジャズ喫茶で初めて聴いたのかは覚えていないが、1曲目のタイトル曲Money Jungleでのミンガスのベース奏法に不思議な感覚を持ったことは、今でも忘れられない。弦が共鳴するような演奏スタイル。その奏法が未だに分からない。ジャズ研の頃、弓で弾くだけでなく、弓をベースの弦に連打する奏法にチャレンジしたことはあるのだが。

この奏法に関して、いろいろと調べていたら、ダウンビート2013年6月の記事"Money Jungle: 50 Years After the Summit"に出会った。以下がその一文。これだけでは正確に分からないが、弦をつまみ上げて指板に弾き放つと同時に、ベース本体を揺さぶるようなイメージ。ウッドベースはすでに手放してしまったので、チャレンジできないのが残念。

The bassist plays with uncanny force on that edgy opener, practically mugging his instrument by thumping a single note repeatedly, then literally pulling the string off the fingerboard at one point.(ベーシストは、鋭く弾き放つ超人的な力で演奏し、1つの音を繰り返し叩いて楽器を奪い取り、文字通り指板から弦を一点で引き離す)。

1. Money Jungle
2. Le Fleurs Africaines (African Flower)
3. Very Special
4. Warm Valley
5. Wig Wise
6. Caravan
7. Solitude

Duke Ellington - piano
Charles Mingus - bass
Max Roach - drums

Recorded on September 17, 1962 at Sound Makers, NYC.