Dollar Brand / African Marketplace

ご機嫌である。ダラー・ブランドは、黒人の音楽をルーツにして表現してきた。ここにあるのは、あまり難しいことを言わずに音楽を、そしてジャズを楽しもうよ、という姿勢。収録曲のすべてが、アフリカの情景を示しているようで魂を揺さぶる音楽。スピリチュアル・ジャズとでも呼びたくなる。

1979年12月録音。70年代最後を飾る名盤。間違いなし。残念なのは、わずか35分55秒で終わってしまうこと。もっとどっぷりと浸りたくなる演奏なのだ。さらに言えば、曲名の意味が分からないこと。英文ライナーノーツでは、1曲目のWhoza Mtwanaには括弧書きでCome Childrenと記載しているが、MoniebahとUbu-Sukuに関しては記載なし。演奏を聴きながら、それらを想像してみるのも悪くない。

1. Whoza Mtwana
2. The Homecoming Song
3. The Wedding
4. Moniebah
5. African Marketplace
6. Mamma
7. Anthem For The New Nation
8. Ubu-Suku

Abdullah Ibrahim - keyboards, soprano sax, conga
Carlos Ward - alto saxophone, soprano saxophone
Jeff Jawarrah King - tenor saxophone
Dwayne Armstrong - tenor saxophone
Kenny Rogers - baritone saxophone
Malindi Blyth Mbityana - trombone
Craig Harris - trombone
Gary Chandler - trumpet
Cecil McBee - bass
Miguel Pomier - percussion
Andre Strobert - drums, percussion
Lawrence Lucie - banjo

Recorded in December 1979 at Atlantic Studios NYC.

Dollar Brand / Banyana

どのピアノトリオと比べても、全く違ったスタイル。ピアノ、ベース、ドラムが遊離している感じ。それぞれが勝手に自己主張している訳でもなく、寄り添っている訳でもない。かといって、一つの方向を目指しているとも感じない。「遊離感漂う調和」とでも表現してみたい。

「現在はアブドゥーラ・イブラヒムとして活躍する南アフリカ出身のピアニスト、ダラー・ブランドがセシル・マクビー(b)とロイ・ブルックス(ds)という最強のリズム隊をバックに豪腕ぶりを発揮した最強の黒ジャズ・ピアノトリオ作品!」とCD帯にあるのだが、敢えて「黒ジャズ」としたのは何の意味があるのだろう。

1. Banyana - The Children Of Africa
2. Asr
3. Ishmael
4. The Honey-Bird
5. The Dream
6. Yukio-Khalifa

Dollar Brand - piano, soprano saxophone, vocals
Cecil McBee - bass
Roy Brooks - drums

Recorded on January 27, 1976 at Downtown Sound Studio, NYC.

Dollar Brand / African Breeze

ダラー自身は、ピアノのパターンを繰り返すことで自分を解放していく。このことは、自分が学生時代にジャズ研で学んだこと。演奏時に自然と体が舟を漕ぐのは、パターンの繰り返し。ときに、意識的になり過ぎるとパターンがくずれ、それまでのパターンを取り戻すことに無駄な力をそそぐ。

LPのライナーノーツは油井正一氏。ダラー・ブランドが来日した1974年2月のインタビューが一部掲載されている。「ダラー・ブランドの音楽は、執拗なまでの繰り返しに特徴がある。この点について彼自身に解説してもらおう。〈リピートすることは、人間の最も自然な生活の一部である。心臓の鼓動、規則正しい呼吸、歩行・・・すべてが単純で正確な繰り返しである。太陽が東から出て西へ沈むのも、四季が一年ごとにめぐってくるのも繰り返しである。ジャズのリフはその具現だ〉」。

このアルバムは、1974年2月21日の東京・郵便貯金ホールでのライブ。全11曲だが、休憩を挟んだ前半がAfrica、後半がReflectionと題された2つの組曲。

※ラスト曲Tintinyanaは、アルバムAnatomy Of A South African VillageとAfrican Pianoでは、Tintiyanaと”n”を抜いて表記されていた。

Africa
1. Nim Vlula (The Rain Song)
2. Msunduza
3. Salaam (Peace)
4. Ancient Africa
5. Salaam (Peace)

Reflection
6. Single Petal Of A Rose
7. Come Sunday
8. Monk From Harlem
9. Cherry
10. African Sun
11. Tintinyana

Dollar Brand - piano, bamboo flute

Recorded on February 21, 1974 at Yuhbin Chokin-Hall, Tokyo.