Cecil Taylor / Silent Tongues

1974年7月2日。モントルー・ジャズ・フェスティバルでのセシル・テイラーによるピアノソロ。一時間近い圧倒的なパフォーマンス。一つの素材を縦横無尽に展開していく。テイラー自身は、展開させる数式が頭の中に入っていたのだろう、決して手癖では演奏していない。

聴衆は、突然変異のごとく展開していく音楽に圧倒され魅了される。テイラーの数式に追従できれば、さらに彼に一歩近づけるのだ。これを「テイラーの定理」という・・・かどうか別として、壮大という意味で極めて大雑把な多項式ピアノソロであることは間違いなし。

1. Abyss (First Movement) / Petals And Filaments (Second Movement) / Jitney (Third Movement)
2. Crossing (Fourth Movement) Part One
3. Crossing (Fourth Movement) Part Two
4. After All (Fifth Movement)
5. Jitney No.2
6. After All No.2

Cecil Taylor - piano

Recorded on July 2, 1974 at Montreux Jazz Festival, Switzerland.

Cecil Taylor / Solo

セシル・テイラーにとっては初のソロアルバム。しかも日本での録音。さすがのテイラーといえども緊張したのではないかと想像する。所有していたLPは国内盤ではあるものの、中古だったためかライナーノーツは付属していなかった。最近、CDを購入。原田和典氏がライナーノーツで録音に至ったエピソードを書いている。プロモーターの鯉沼利成氏がソロをテイラーに提案したが、「ソロほど難しいものはない」と拒絶。マッコイ・タイナーのソロアルバムEchoes Of A Friend(1972年11月録音)を聴かせたところ、テイラーは感激して「10時間練習をやらせてくれ」と猛練習を始めたそうだ。

テイラーの持っている創作力や技術力は十分に伝わってくるアルバム。だが、それを受けて聴き手が想像を膨らます余裕がない。千本ノックの嵐。テイラーは練習の成果を披露しようと常に鍵盤を叩き、聴き手はそのアタックを聴くことになる。空間に広がっていく「音」を聴く余裕はない。ということで、ソロピアノであるが、ソロ・打楽器のアルバムと位置付けたい。ちなみに、録音はイイノホールだが無観客。

1. Choral Of Voice (Elesion)
2. Lono
3. Asapk In Ame
4. Indent

Cecil Taylor - piano

Recorded on 29 May 1973 at Iino Hall, Tokyo, Japan.

Cecil Taylor / Akisakila - Cecil Taylor Unit In Japan

2枚組LPで1973年に発売されたが、当時の自分にとっては高価すぎて手を出せなかった。LPの計4面で1曲82分という構成。ジャズ喫茶のターンテーブルには載らなかったはずだ。ジャズ喫茶の親父達も手を出せなかったに違いない。最近、比較的安価な1,980円でCD化されていることを知り、迷わず購入。録音から47年経って初めて聴く音源。

圧倒的という表現は安易に使いたくないが、他の言葉が見つからない。だが、圧倒されたのは厚生年金に足を運んだ人だけだろう。82分1本勝負の演奏、そして視覚から飛び込んでくるパフォーマンスがあるからだ。82分はあっという間の出来事だったかも知れない。このライブから一週間後、セシル・テイラーにとっては初のソロアルバムを無観客のイイノホールで録音。このアルバムを「千本ノックの嵐」と自分は評したが、本作はノック練習に先立つ「過酷な筋トレ」と言いたい。

1. Bulu Akisakila Kutala Part.1
2. Bulu Akisakila Kutala Part.2

Cecil Taylor - piano
Jimmy Lyons - alto saxophone
Andrew Cyrille - drums

Recorded on 22 May 1973 at Koseinenkin Dai-Hall / 厚生年金大ホール, Tokyo, Japan.