Chick Corea / Piano Improvisations Vol.1

まさに奇遇である。新品ながら安価なピアノソロのCDをAmazonで続けて見つけた。かつてはLPで所有していたが、すでに手元にはなく購入。キース・ジャレットのFacing Youと、チック・コリアのこのアルバムが順に届いた。どちらも、ECMレーベルによるオスロの同じスタジオの録音で、前者が1971年11月、後者が71年4月。

優劣をつけることに意味はないが、タイトルを敢えてImprovisation(即興)としてしまったことで、チックの負けである。ジャズの本質は即興でしかないのに・・・。さらに、この即興演奏の中で、チック自身が高揚していく様を感じ取ることができない。つまり、まとまっている。「即興=破綻」という構図がどこにも表れていないのである。LPのジャケット裏にはチックの言葉が載っている(なぜか、CDでは削除)。「This music was created out of the desire to communicate and share the dream of a better life with people everywhere.(あらゆる人と共に、より豊かな人生を語り、夢を分かち合うことを願って演奏した)」。青二才のチックがここにいる。

1. Noon Song
2. Song For Sally
3. Ballad For Anna
4. Song Of The Wind
5. Sometime Ago
6. Where Are You Now? - A Suite Of Eight Pictures
6-1. Picture 1
6-2. Picture 2
6-3. Picture 3
6-4. Picture 4
6-5. Picture 5
6-6. Picture 6
6-7. Picture 7
6-8. Picture 8

Chick Corea - piano

Recorded on April 21 & 22, 1971 at Ame Bendiksen Studio, Oslo, Norway.

Chick Corea / A.R.C.

非常に完成度の高い「フリージャズ」である。と書き出してしまったが、フリージャズに完成度という尺度はそもそも合わない。フリーとは完成させないこと、とも言えるのだ。もう50年前の録音。果たして、チックはこういうジャズの形態を標榜していたのか。彼のアルバムのその後の変遷を見れば分かる。

で、このアルバムをどう捉えるか。マイルスのアルバムBitches Brewに参画しての半年後。エレクトリックの対極としてアコースティックで、しかもピアノトリオでの新境地を目論んだのかもしれない。だが、一発花火で終わった感じがする。そもそもA.R.C.が何を意味しているのか分からない。

1. Nefertiti
2. Ballad For Tillie
3. A.R.C.
4. Vedana
5. Thanatos
6. Games

Chick Corea - piano
David Holland - bass
Barry Altschul - percussion

Recorded on January 11, 12 & 13, 1971 in Ludwigsburg, West Germany.

Chick Corea / Now He Sings, Now He Sobs

チック・コリアは1941年6月生まれ。本作を録音した時はまだ26歳。前作Tones For Joan's Bonesでは、全曲ではないがフロント2管で臨んだ。本作はピアノトリオで真っ向勝負。さらに、ジャケットにはメンバーや曲名などの録音データを一切掲載せず、コリア自作の詩を見開きジャケット内に大きくプリントした(すでに手放したLPのラベルには、曲名とメンバーが書いてあったような気がする)。以下は、詩の前半の部分。国内盤CDライナーノーツから和田政幸氏による訳。コリアは、「喜び」と「哀しみ」を表現しようしたように思える。

Clinging to Beauty; Clinging to Ugliness
Depending on Love and Loving; lingering with hate and hating
Rejoicing to high heaven; then sad unto death
Now he sings; now he sobs
Now he beats the drum; now he stops.

美に執着すれば、結果として醜にもこだわることになる。
愛、または愛の行為をあてにする者には、愛の陰画たる憎悪がかならずつきまとう。
天空をつきぬけるほどの喜びは、死に至るほどの哀しみと表裏一体をなす。
ある者は謳歌し、ある者は泣きぬれる。
ある者は進撃の太鼓をならし、ある者は逃げ腰になる。

1. Matrix
2. My One And Only Love
3. Now He Beats The Drum - Now He Stops
4. Bossa
5. Now He Sings - Now He Sobs
6. Steps - What Was
7. Fragments
8. Windows
9. Pannonica
10. Samba Yantra
11. I Don't Know
12. The Law Of Falling And Catching Up
13. Gemini

Chick Corea - piano
Roy Haynes - drums
Miroslav Vitous - bass

Recorded on March 14, 19 & 27, 1968 at A&R Studios, NYC.