Chick Corea / Crystal Silence

2021年2月9日、チック・コリア逝く。享年79。また一人、1960年代以降のジャズを支えて来た偉大なミュージシャンが去ってしまった。コリアを偲び、CD棚から取り出したのは本作。1972年11月録音。コリアのピアノとゲイリー・バートンのヴァイブによるデュオ。機能的に良く似ている二つの楽器でのデュオは極めて珍しい。

演奏の中で、それぞれの役割を演じ、瞬時に攻守を切り替えるのは簡単なことではない。録音データによれば、全9曲を一日で仕上げたことになる。あっぱれだった。そして、合掌。

1. Senor Mouse
2. Arise, Her Eyes
3. I'm Your Pal
4. Desert Air
5. Crystal Silence
6. Falling Grace
7. Feelings And Things
8. Children's Song
9. What Game Shall We Play Today

Chick Corea - piano
Gary Burton - vibraphone

Recorded on November 6, 1972 at Arne Bendiksen Studio, Oslo, Norway.

Chick Corea / Return To Forever

今日は「海の日」。すぐに思い付いたのは、坂田明のアルバム『海』。しかし、2019年1月14日のブログですでに取り上げていた。次に思い付いたのが本アルバム。リアルタイムで聴いたことを覚えている。高校に入ったばかりで、まだジャズ喫茶通いはしていなかったが、江古田駅近くにあったロック喫茶(店名は忘れた)で最初に聴いた記憶がある。LPのライナーノーツは油井正一氏が担当。タイトルを「20年周期で展開するジャズの歴史」として、本アルバムが録音されるに至った経緯を述べている。以下は、その抜粋。

ポスト・フリーはまだ端緒を切ったばかりだが『ビチェズ・ブリュー』に参加したマイルスのサイドメンの多くがその重要な担い手となっていることを見逃すわけにはゆかない。チック・コリアもその一人だ。マイルスの許を離れてつくった『サークル』というクワルテットは、70年代のジャズを指向したというよりも、60年代を総括したラスト・グループという見方を私はとる。サークルは、フリージャズの余熱がさめやらぬヨーロッパでは好評を得たが、アメリカに戻った途端に解体を迫られた。

この新作『リターン・トゥ・フォーエヴァー』は、あまりにも耳に快適な作品であるため、コリアの前作に比して、よりコマーシャルづいた作品のように受けとる向きもあるかもしれぬ。それは絶対に誤りである。常に歌心を失わぬコリアの真骨頂がここにある。

1. Return To Forever
2. Crystal Silence
3. What Game Shall We Play Today
4. Sometime Ago - La Fiesta

Chick Corea - electric piano, Fender Rhodes
Joe Farrell - soprano saxophone, flute
Stanley Clarke - acoustic bass, electric bass
Airto Moreira - drums, percussion
Flora Purim - vocals, percussion

Recorded on February 2 & 3, 1972 at A&R Studios, NYC.

Chick Corea / Piano Improvisations Vol.2

何気なく棚から取り出したアルバム。自分のブログを調べたところ、ちょうど一年前の2019年4月25日、Vol.1について書いていた。そのときは、LPのジャケット裏に載っているコリアの言葉「This music was created out of the desire to communicate and share the dream of a better life with people everywhere.(あらゆる人と共に、より豊かな人生を語り、夢を分かち合うことを願って演奏した)」は、CDではなぜか削除されているとコメントしたが、このVol.2のCDには掲載されていた。

Vol.1は組曲を含む全曲がコリアの作品であったが、Vol.2にはセロニアス・モンクのTrinkle, Tinkleとウェイン・ショーターのMasqualeroを収録(それ以外はコリアの作品)。タイトルがPiano Improvisationsであるものの、題材は必要だったということだろうか。特にMasqualeroは、1970年3月と4月のマイルスのライブアルバムIt's About That TimeとBlack Beautyでコリア自身がピアノを弾いている。名盤Return To Foreverは、このピアノソロの翌72年2月に録音。「夢を分かち合うことを願った」のかも知れないが、「自分の夢を見つけ出すことを願った」ような気がする。

1. After Noon Song
2. Song For Lee Lee
3. Song For Thad
4. Trinkle, Tinkle
5. Masqualero
6. Preparation I
7. Preparation II
8. Departure From Planet Earth
9. A New Place: Arrival, Scenery, Imps Walk, Rest

Chick Corea - piano

Recorded on April 21 & 22, 1971 at Ame Bendiksen Studio, Oslo, Norway.