Bill Evans / Moonbeams

1962年5月と6月の3回のセッションは、アルバムMoonbeamsとHow My Heart Singsに分けられリリースされた。これらのアルバムに関しては、ライナーノーツで次のように書かれている。「スコット・ラファロの1961年7月6日の事故死に動揺したビル・エバンスは演奏活動を休止し、新しいベーシストを迎えて演奏する気力を取り戻したのは、それから1年後のことだった」。

しかしながら、ハービー・マンに本作と同じチャック・イスラエルとポール・モチアンによるトリオを加えたアルバムNirvanaを61年12月に録音している。ラファロの死に精神的には落ち込んでいたのかも知れないが、決して演奏を1年間中止していた訳ではない。62年2月には、このトリオでバードランドでのライブアルバムThe Vibes Are On Bill Evans Trioも残しているのだ。エバンスというピアニストに対して、ジャズ評論家が勝手にイメージを作ってきたことが分かる。そういう背景を取り除いて本作を聴くと、何の変哲もないピアノトリオのアルバムなのだ。

1. Re: Person I Knew
2. Polka Dots And Moonbeams
3. I Fall In Love Too Easily
4. Stairway To The Stars
5. If You Could See Me Now
6. It Might As Well Be Spring
7. In Love In Vain
8. Very Early

Bill Evans - piano
Chuck Israels - bass
Paul Motian - drums

Recorded on May 17 & 29 and June 5, 1962 at Sound Makers Studio, NYC.

Bill Evans / Undercurrent

ピアノとギターのデュオの最高峰。というか、この組み合わせのアルバムで他に所有するのは、元岡一英と橋本信二のアルバムI'll Remember Aprilしかなかった。特質が似た楽器同士なので、デュオ作品は少ないのだろう。互いに主張し過ぎるとデュオの意味がなくなるし、譲り合っていればそれぞれの楽器の特性を活かせない。ビル・エバンスとジム・ホールは、曲の流れを創り出すことに集中している。

つまり、二人はアルバム全体を通してUndercurrent(底流)でつながっているのだ。その流れの上にピアノとギターが緩やかに漂っている。LPでは青が基調のモノトーンのジャケットだったが、なぜか購入したCDでは黒の基調に変わってしまった。自分の中では、ブルーのイメージのアルバムが黒く濁ってしまった感じなのだ。

1. My Funny Valentine
2. I Hear A Rhapsody
3. Dream Gypsy
4. Romain
5. Skating In Central Park
6. Darn That Dream

Bill Evans - piano
Jim Hall - guitar

Tracks 1, 3 - 6
Recorded on May 14, 1962 at Sound Makers, NYC.
Track 2
Recorded on April 24, 1962 at Sound Makers, NYC.

Bill Evans / Waltz For Debby

1961年6月25日、ビレッジ・バンガードでのライブは2つのアルバムSunday At The Village VanguardとWaltz For Debbyに収録された。どちらもスコット・ラファロの名演が光る。インタープレイや三位一体と称して評価されてきた訳である。しかし、繰り返し聴くと、ポール・モチアンのドラムだったからこそ成り立った形態。モチアンのドラムは、エバンスとラファロのやり取りをしっかり支えている。不用意に入り込んでこない。三位一体の底辺にはモチアンがいるのだ。

エバンスのピアノに絡みついてくるラファロのベース。もし、自分がピアノを弾いていたら、うるさくて仕方ない。ジャズベースを少しかじってきた自分なので、ピアノがもっと自由に発想できるような演奏を試みたい。まぁ、ラファロのようなテクニックがない言い訳でもあるのだが。ところで、多重露光のような印象的なジャケットは、Ken Deardoffというデザイナーによる。この名盤の影の功労者とも言えるが、この人物に関する情報はほとんど入手できないのだ。

1. My Foolish Heart
2. Waltz For Debby
3. Detour Ahead
4. My Romance
5. Some Other Time
6. Milestones
7. Waltz For Debby [take 1]
8. Detour Ahead [take 1]
9. My Romance [take 2]
10. Porgy (I Loves You, Porgy)

Bill Evans - piano
Scott LaFaro - bass
Paul Motian - drums

Recorded on June 25, 1961 at The Village Vanguard, NYC.