Booker Ervin / The Song Book

タイトル通りスタンダード集。ブッカー・アーヴィンのワンホーンで、十分に彼のサックスを楽しめるのだが、Alan Dawson(アラン・ドーソン)のドラミングが実に光っている。しかし、本作以外の所有アルバムの中でドーソンが参加しているのは、アーヴィンのHeavy!!!、クリフォード・ブラウンのThe Complete Paris Sessions Vol.1、ソニー・スティットのTune Up!だけと、意外に少なかった。ところで、オリジナルのライナーノーツでは、1964年5月付けでDan Morgenstern(ダン・モルゲンシュテルン)が、アーヴィンとミンガスの関係を以下のように書いている。

"There's nothing on earth I like better than playing music," Booker Ervin once told me. His playing sounds like that. It is full of fire and conviction: nothing about it strikes the ear as forced, contrived or meretricious. It is no wonder that Charlie Mingus - a man who likes his music naked - has used Booker whenever he could get him.

「音楽を演奏することほど好きなものはこの世にない」とアーヴィンはかつて私に言った。彼の演奏は、情熱と信念に満ち溢れているのだ。こじつけ、わざとらしさ、見せかけだけのものは一切ない。むきだしの彼の演奏を好むミンガスが、機会があれば、いつでも彼を使ったのも不思議でない。

1. The Lamp Is Low
2. Come Sunday
3. All The Things You Are
4. Just Friends
5. Yesterdays
6. Our Love Is Here To Stay

Booker Ervin - tenor saxophone
Tommy Flanagan - piano
Richard Davis - bass
Alan Dawson - drums

Recorded on February 27, 1964 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Billy Harper / The Believer

ビリー・ハーパーは、1973年に初リーダーアルバムCapra Blackをリリース。20枚目を2013年に出して、その後は途絶えている。その40年間は、ちょうど2年に1枚のペース。このことから、じっくりと構想を温めてアルバム創りをするタイプであることが分かる。風貌からも寡黙のジャズマンという感じ。

このアルバムは、タイトル通りBelieveという単語が入っている3曲で構成。これらは組曲と捉えたい。所有するLPのライナーノーツには、それぞれに邦題が記載されている。Is It Not True, Simply Because You Cannot Believe It?(疑惑のきざし)、I Do Believe(めざめの時)、Believe, For It Is True!(真実のふれあい)。まぁ悪くはないが、クエスチョンマークとビックリマークが活かされていない。ちなみに、プロデューサー、エンジニア、デザイナーなどには日本人の氏名がクレジットされている。邦題が先で、それを英語にしたのかも知れない。

さて、リーダーアルバムは途切れているが、ハーパーが中心となって、The Cookersというグループを2010年に立ち上げ現在も活動中。2021年9月にアルバムLook Out!をリリースした。1943年1月17日生まれのハーパーは、今も現役である。なお、本作はCD化されているが、中古市場にはほとんど出回っていない。

1. Is It Not True, Simply Because You Cannot Believe It?
2. I Do Believe
3. Believe, For It Is True!

Billy Harper - tenor saxophone
Everett Hollins - trumpet
Armen Donelian - piano
Greg Maker - bass
Malcolm Pinson - drums

Recorded on February 15, 1980 at Power Station Studios, NYC.

Bobby Hutcherson / Four Seasons

1983年12月録音。このデータは、非常に重要である。マイルスの復活によって、ジャズが一つのトンネルを抜け出した時、季節を表すスタンダード曲を並べたアルバム『四季』。これが、1950年代から60年代にかけての録音であれば、絶賛である。いや、採り上げた曲がスタンダードであったとしても、全く新しい音楽要素、インタープレイの様式が繰り広げられていれば、80年代の一つの方向性であったと書きたくなる。

ただ単に心地よいジャズのフレーズが流れていくだけ。個々のプレイヤーも朝飯前の演奏。冒険もなく、実験もない。このメンバーなら、二日酔いでも、テツマン明けでも、難なく仕上げられる。ボビー・ハッチャーソンは、実験的なアルバムに挑戦してきたプレイヤー。結局、それでは食えなかったのだろうか。ハッチャーソンのディスコグラフィーを見ると、この1枚しか83年には録音していない。そして、オランダでの録音であるが、水路のようなジャケットの写真が意味不明なのだ。

1. I Mean You
2. All Of You
3. Spring Is Here
4. Star Eyes
5. If I Were A Bell
6. Summertime
7. Autumn Leaves

Bobby Hutcherson - vibraphone
George Cables - piano
Herbie Lewis - bass
Philly Joe Jones - drums

Recorded on December 11, 1983 at Studio 44, Monster, Holland.