Bobby Hutcherson / Four Seasons

1983年12月録音。このデータは、非常に重要である。マイルスの復活によって、ジャズが一つのトンネルを抜け出した時、季節を表すスタンダード曲を並べたアルバム『四季』。これが、1950年代から60年代にかけての録音であれば、絶賛である。いや、採り上げた曲がスタンダードであったとしても、全く新しい音楽要素、インタープレイの様式が繰り広げられていれば、80年代の一つの方向性であったと書きたくなる。

ただ単に心地よいジャズのフレーズが流れていくだけ。個々のプレイヤーも朝飯前の演奏。冒険もなく、実験もない。このメンバーなら、二日酔いでも、テツマン明けでも、難なく仕上げられる。ボビー・ハッチャーソンは、実験的なアルバムに挑戦してきたプレイヤー。結局、それでは食えなかったのだろうか。ハッチャーソンのディスコグラフィーを見ると、この1枚しか83年には録音していない。そして、オランダでの録音であるが、水路のようなジャケットの写真が意味不明なのだ。

1. I Mean You
2. All Of You
3. Spring Is Here
4. Star Eyes
5. If I Were A Bell
6. Summertime
7. Autumn Leaves

Bobby Hutcherson - vibraphone
George Cables - piano
Herbie Lewis - bass
Philly Joe Jones - drums

Recorded on December 11, 1983 at Studio 44, Monster, Holland.

Bobby Hutcherson / Oblique

不思議なアルバム。1967年7月の録音で、プロデューサーはアルフレッド・ライオン。ところが、リリースされたのは1980年。所有する輸入盤ジャケット裏にはOriginally issued in 1980 as GXF-3061 in Japanという記載がある。なぜに、ライオンはリリースを躊躇したのか。そして、日本の誰が本作の音源を発掘したのか。以下は想像でしかない。

66年2月録音のアルバムHappeningsもライオンが手掛け、ベース以外は同じメンバー。つまり、本作はHappeningsを超えるハプニングを狙ったのだが、思い通りには行かずリリース後の酷評を恐れた。一方、本作のポイントはハービー・ハンコック作の3曲目Theme From Blow Upにある。67年公開の映画Blow Up(邦題:欲望)のテーマ曲。ハンコックがV.S.O.P.として70年代後半に来日した際、ボビー・ハッチャーソンと録音した自分の曲が埋もれている、と日本のレコード会社に漏らしたのではないだろうか。さて、真相は?

1. 'Til Then
2. My Joy
3. Theme From Blow Up
4. Subtle Neptune
5. Oblique
6. Bi-Sectional

Bobby Hutcherson - vibraphone
Herbie Hancock - piano
Albert Stinson - bass
Joe Chambers - drums

Recorded on July 21, 1967 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.

Bobby Hutcherson / Stick-Up!

前作Happeningsは1966年2月8日録音。それから5ヶ月後、メンバーを一新してボビー・ハッチャーソンは本作の録音に臨んだ。前作はハービー・ハンコックが持ち込んだMaiden Voyage以外、全てハッチャーソンの作品。そして、今回もオーネット・コールマン作Una Muy Bonitaを除いてハッチャーソン作である。この曲はアルバムChange Of The Centuryに収録されていて、そこではビリー・ヒギンスがドラムを叩いたので、彼が持ち込んだのだろう。

前作が空気を凍らせるような緊張感があったのに対し、本作はある種の躍動感を表現しようとしている。それが、アルバムタイトルとジャケットに示されているのだが、今一つ物足りない。それは、一曲一曲を作り込み過ぎてしまい、メンバーがスコアを追いかけているように感じるからだ。それにしても、そんな全6曲の録音を1日で終わせることができたと言うのは、この参加メンバーだからである。

1. Una Muy Bonita
2. 8/4 Beat
3. Summer Nights
4. Black Circle
5. Verse
6. Blues Mind Matter

Bobby Hutcherson - vibraphone
Joe Henderson - tenor saxophone (except track 3)
McCoy Tyner - piano
Herbie Lewis - bass
Billy Higgins - drums

Recorded on July 14, 1966 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.