Art Ensemble Of Chicago / Reese And The Smooth Ones

先日、中野宏昭著『ジャズはかつてジャズであった。』を読み直し、気になっていたアルバムが中古輸入CDでようやく見つかった。ジャケット内には、Art Ensemble Of Chicagoのメンバーの一人、ジョセフ・ジャーマンによる長い詩が(CDなので、かなり小さい文字だが)載っている。中野氏は、その詩に彼らの在りかたが示されていると感じ、訳詩を同書に掲載している。中野氏自身は極めて難解な詩であると述べているが、その中の一節「アフリカ あらゆる黒人たち、全色に輝ける者とその子供たちの母国」に、一つのメッセージを自分は感じた。

このアルバムの解説の最後に、中野氏はこう書いている。「彼等の音楽の予測不能の哄笑や狂気の中には、死の影が何時も漂っており、生命の讃歌の絶頂の向こうには、得体の知れない大きな裂け目が口を開けて待ちうけているのが感じられはしないだろうか? この感覚こそ、彼等が私の内部の音楽家となった理由なのである」。中野氏の感性が素晴らしい。1976年、31歳でこの世を去ってしまったことが惜しまれる。

1. Reese / The Smooth Ones Part 1
2. Reese / The Smooth Ones Part 2

"Reese" composed by Roscoe Mitchell
"The Smooth Ones" composed by Lester Bowie

Lester Bowie - trumpet, percussion instruments
Malachi Favors Maghostut - bass, percussion instruments, vocals
Joseph Jarman - saxophones, clarinets, percussion instruments
Roscoe Mitchell- saxophones, clarinets, flute, percussion instruments

Recorded on August 12, 1969 at Studio Saravah, Paris.

Abbey Lincoln / Abbey Is Blue

アビー・リンカーンの唄はストレート。技巧に走ることもなく、感情をむき出しにすることもなく。飾らないジャズ、飾らないボーカルである。プロデューサーの一人であるオリン・キープニュースがライナーノーツを書いていて、次のように締め括っている(訳:小川隆夫氏)。プロデューサー自身の言葉なので、多少はオーバーな表現があるが、錚々たるミュージシャンの参加によって、単なるボーカルアルバム以上の作品に仕上がっていることは事実。

「このシンガーと曲目と演奏が溶け合った、並々ならぬ見事な調和の総合的な成果が、深い温かさと穏やかにスイングするビートを併せ持つこのアルバムなのだ。わたしが思うに、この作品はアビーがこれまでに残してきた作品の中で最高の歌唱を記録したものではないだろうか。そしてわたしがいま考えているのは ― レコーディング中も随分考えていたのだが ― どんなシンガーが生み出した印象的で感動的なアルバム群にもおいても、この作品はぬきんでていて、長い間色褪せることはない」。

1. Afro-Blue
2. Lonely House
3. Let Up
4. Thursday's Child
5. Brother, Where Are You?
6. Laugh, Clown, Laugh
7. Come Sunday
8. Softly, As In A Morning Sunrise
9. Lost In The Stars
10. Long As You're Living

Abbey Lincoln - vocals
Julian Priester - trombone (tracks 1,3,6,10)
Stanley Turrentine - tenor saxophone (tracks 1,3,6,10)
Kenny Dorham - trumpet (tracks 2,4,7-9)
Tommy Turrentine - trumpet (tracks 1,3,6,10)
Les Spann - flute (track 5), guitar (tracks 2,4,7-9)
Wynton Kelly - piano (tracks 2,4,5)
Cedar Walton - piano (tracks 3,6)
Phil Wright - piano (tracks 7-9)
Bobby Boswell - bass (tracks 1,3,6,10)
Sam Jones - bass (tracks 2,4,5,7-9)
Philly Joe Jones - drums (tracks 2,4,5,7-9)
Max Roach - drums (tracks 1,3,6,10)

Recorded in Spring and Fall 1959 in NYC.

秋吉敏子 / My Long Yellow Road

秋吉敏子、米寿記念の2枚組CD。全18曲ピアノソロ(ただし、4曲はベースとのデュオ)。2018年4月11日のコンサートで購入。その場で、秋吉さんにサインをいただいた。CDのラベルには「米」と「88」の文字。

2018年12月29日は、ジャズドラマー渡辺文男さんの80歳バースデーライブだったが、それを上回る現役日本人ジャズプレイヤーがいることを改めて認識。88歳を前にして、88歳を前にして、88鍵のピアノでソロに挑戦した気概に拍手を送りたい。

Disc 1
1. Long Yellow Road
2. I Loves You Porgy
3. No Moon At All
4. Invention In 2 Voices D Minor
5. Count Your Blessing Instead Of Sheep
6. Repose
7. That Old Devil Moon
8. Polka Dots And Moonbeams
9. Tempus Fugit

Disc 2
1. I'm Old Fashioned
2. Desert Moon
3. It Was A Very Good Year
4. Memory
5. Sophisticated Lady
6. The Village
7. Feast In Milano
8. Hope
9. Ten Ten

Toshiko Akiyoshi - piano
Yasushi Nakamura - bass (disc 1 tracks 3,8, disc 2 tracks 1,2)

Recorded on September 6-7, 2017 at Sear Sound "C", NYC.