Archie Shepp / Steam

後藤雅洋氏の『一生モノのジャズ名盤500』では、こう紹介されている。「ベース、ドラムスだけのシンプルなトリオ編成で、アーチー・シェップがテナー奏者としての実力を見せつけた名演。とりわけ19分に及ぶA Message From Traneの吹きまくりは圧巻。〈中略〉アイデアの赴くままひたすらに前進するさまは感動的」。この紹介だけで十分であるが、さらに付け加えたいのは演奏曲のこと。

6曲中、シェップ自身の作品はSteamのみ。A Message From Traneはトランペッターであり作曲家、そしてシェップのアルバムAttica Bluesに参加したCal Massey(カル・マッセイ)の作品。残り4曲中には、エリントン、パーカー、モンクの曲があることに注目。どれもスタンダード。シェップの豪快な料理の仕方に舌鼓。なお、本作が録音されたジャズ・フェスティバルに関して、ドイツ語版Wikipediaを発見。「1966年から2年ごとにニュルンベルグで開催。冷戦時代、このフェスティバルは当初、西と東のジャズミュージシャンの出会いの場として機能していた。1990年代に、フェスティバルは重要性を失い視聴者数が減少。最後の開催は2002年」。ドイツ統一により、失われた文化があったことを知った。

1. A Message From Trane
2. Solitude
3. Invitation
4. Ah-Leu-Cha
5. Steam
6. 52nd Street Theme

Archie Shepp - tenor saxophone, piano
Cameron Brown - bass
Beaver Harris - drums

Recorded on May 14, 1976 at The East-West Jazz Festival, Nurnberg, West Germany.

Art Farmer / To Duke With Love

イースト・ウィンド・レーベル設立40周年記念。2015年2月に生産限定盤で再リリースされたCD。限定であったにもかかわらず、一年半経ってもアマゾンで新品を購入できた。マーケティングに失敗したということよりも、音楽はCDやレコードといった媒体で購入するのではなく、ダウンロードする時代になったということだろうか。そして、7年経った今でも新品が流通している。ジャズのポテンシャルの問題と捉えた方がよさそうだ。

本作は、1974年5月24日に他界したデューク・エリントンの追悼盤。いかにも日本人の企画である。CD帯にはこう書かれている。「まろやかな音色を持つ人気トランペッターが、シダー・ウォルトン・トリオと共に、録音の前年に亡くなったデューク・エリントンを偲んで録音した追悼作。〈スイングしなけりゃ意味がない〉をはじめ、エリントンの代表曲を収録」。これは間違いではないが、アート・ファーマーは全曲フリューゲルホーンを吹いているのだ。

1. In A Sentimental Mood
2. It Don't Mean A Thing (If It Ain't Got That Swing)
3. The Star Crossed Lovers
4. The Brown Skin Gal In The Calico Gown
5. Lush Life
6. Love You Madly

Art Farmer - flugelhorn
Cedar Walton - piano
Sam Jones - bass
Billy Higgins - drums

Recorded on March 5, 1975 at Blue Rock Studio, NYC.

Art Blakey / Ugetsu

所有する輸入盤CDの裏面には、本作のプロデューサーであるオリン・キープニュースのライナーノーツが記載されている。しかし、あまりにも小さい字なので、ほとんど判別不明。Wikipediaで調べたところ、「このライブの数か月前、日本ツアーがあった。そして、日本へのオマージュとして、2つのトラックUgetsuとOn The Ginzaをバードランドで演奏した」とあった。Ugetsuはシダー・ウォルトン、On The Ginzaはウェイン・ショーターの作品だが、命名はアート・ブレイキーのような気がする。小さいながら、Art explains, that's Japanese for "fantasy".という箇所を見つけたからである。

更なる情報を探すため、ブレイキーのディスコグラフィーを参照。このライブの翌月、ジャズ・メッセンジャーズとは全く異なるメンバーでスタジオ録音していることが判明。混乱させるようなA Jazz Messageというタイトルである。こちらのアルバムには、日本にちなんだ曲名は見つからなかった。さて、バードランドでのライブアルバムに収録された全10曲は、いずれも名演である。しかしながら、観客の盛り上がりがイマイチ。ジャケットの写真もピンボケ。Fantasy(幻想)をイメージしたとは思えないのだが。

1. One By One
2. Ugetsu
3. Time Off
4. Ping-Pong
5. I Didn't Know What Time It Was
6. On The Ginza
7. Eva
8. The High Priest
9. Conception
10. The Theme

Wayne Shorter - tenor saxophone
Freddie Hubbard - trumpet
Curtis Fuller - trombone
Cedar Walton - piano
Reggie Workman - double bass
Art Blakey - drums

Recorded on June 16, 1963 at Birdland, NYC.