金本麻里 / ジェリコの戦い

金本麻里の前作With The Bop Bandに続き、CD制作協力会員(ジョニーズディスクファンクラブ)の一人として、あれこれと語ることはできないアルバムなのだ。だが、いやだからこそ、盛岡ジャズの喫茶『開運橋のジョニー』のオーナーであり、本作のプロデューサーである照井顕さんに届くかどうかは別にして、2点だけ語っておきたい。

まずは、ベースを何故に入れなかったのか。ボーカル、ピアノ、フルートという構成で、全体的に重心が浮いてしまった感じがする。残念ながら、熱い鼓動が伝わってこないのだ。やはり、底辺を支える楽器が必要だったのではないかと思ってしまう。そして、ジャケット。麻里さんの特徴を捉えているのは事実だが、前作のジャケットと比べてしまうと、ある種の威圧的な感じを受けてしまう。アルバムの内容は、ポップ的な要素を取り入れたジャズ。もう少し工夫して欲しかった。「ジェリコの戦い」をイメージしたジャケットなのかも知れないのだが…。照井さん、正直に書きました。

1. Joshua Fit The Battle Of Jericho
2. Love Is A Many Splendored Thing
3. A Lover's Concerto
4. Stardust
5. The Shadow Of Your Smile
6. Do You Know What It Means To Miss New Orleans
7. Almost Like Being In Love
8. Moon River
9. Over The Rainbow
10. It's All Right With Me
11. Nobody Knows The Trouble I've Seen
12. HOPE

金本麻里 - vocal
武藤晶子 - piano
小川恵理紗 - flute
照井顕 - producer

録音 2018年8月29日 / 北上さくらホール(中ホール)

ジャケットに記載されたCD制作協力会員リスト抜粋

坂田明 / Nano Space Odyssey

坂田明自身が、このアルバムについて2009年2月4日付けで語っている。抜粋したものを以下に掲載。武満徹、坂田明、ビル・ラズウェルの3人が、新宿の居酒屋で朝5時まで飲むきっかけを作ったアルバム。

NHKの「ナノ・スペース」という画期的な科学番組の音楽を制作することになった。ナノ・メートルという単位を知ったのは、番組の映像を見てからである。1ナノ・メートル(nm)は10億分の1メートルである。水素原子の直径は0.1nmで、水分子が約0.2nm、DNAの2重螺旋の径は2nmであります。〈中略〉私たちの住むこの世界はミクロとマクロに向かってとんでもない広がりと深さを持っている。極限ミクロ10のマイナス23乗は漢数詞で浄。極大マクロ10の68乗は漢数詞で無量大数。唖然だ。その世界の中で私たちは自分で感じたり、思ったり、フォン・ユクスキュル言うところの環世界からの体験、学習なり、思い込みなり、洗脳なり、錯覚なり、想像なりを駆使している。その結果、正義は勝つだの、神はわれわれに味方してくれるとか、諸行無常だの、生々流転、色即是空とか、判ったような判らない人生を生きて死んでいくことになる。

このCDは、91年11月末、モンゴル高原より戻った後にNHKのスタジオへ1ヶ月通いつめて録音したものである。今は亡き武満徹さんにこのCDを送ったところ、ハガキでご丁寧な返事を頂き、とても嬉しかった。武満さんに聴いてもらっただけでもういいやと思っていた。その前後だったと思うが、あるコンサートを聴きに行ったあと、打ち上げで同席しておられた武満さんに「どっか飲みに行きませんか」とお誘いしたら「うん、行こう」といわれてびっくりした。横に居たビル・ラズウェルに「おい、武満徹さんと飲みに行くぞ!」と、「なに?!」とビル。さっさと3人でタクシーに乗って新宿の居酒屋だ。朝5時まで飲んでしまった。貴重な思い出は私とビルの間で語り草である。

1. Cosmic Zoom
2. Grandeur Of Microcosm Under The Chaos
3. Psy-Field:A
4. A Strange Life Of Daphnia
5. T4-Phage Landed On The Moon
6. Phase Transition Of Kci
7. Psy-Field:B
8. Micro-Robot Breaking Into Laughter
9. Vicissitudes
10. Voices Of "Super Strings"
11. Nano Space Odyssey

Akira Sakata - soprano saxophone, alto saxophone, synthesizer, piano
Tamai Toyooka - mukkuri
Asuka Kaneko - violin
Kyoko Kuroda - piano
Hiroshi Yoshino - contrabass
Yu Fujii - electric bass
Kiyohiko Semba - drums, percussion
Atuy - voice (song 1)
Fusae Doi - voice (song 2)
Mishio Ogawa - voice (song 9)
Shigeri Kitsu - voice (song 3,7,10)
Norihiko Yamanuki - sound programming

Recorded in November & December, 1991 at NHK-604-Studio.

Woody Shaw / Dr. Chi

1985年4月、ウディ・ショウはアルバムWith Tone Jansa Quartet(トーン・ヤンシャ・カルテット)をオランダで録音。翌86年7月、同じメンバーにより、ヤンシャの母国スロベニアで本作を録音。今度はヤンシャ名義になっている。リリースは1989年。

前作に比べて、より一層モーダルな演奏を繰り広げる。その立役者はベースのPeter Herbert(ピーター・ハーバート)。アグレッシブなベースを展開し、まさしく司令塔の存在になっている。フロント2管だけでなく、ベースを中心に聴くと、重量感ある本作を十分に楽しめる。

ところで、ジャケットの手書きによる「趙醫生」は、何を意味しているのだろうか。ライナーノーツやWikipediaでは、そのことには一切触れられていない。「趙」は「チョウ、ジョウ」で、「醫」は「イ、エイ」と読む。「チョウ・エイショウ」という人の名前の気がする。その人の愛称が「ドクター・チ」で、ショウが世話になっていた医者なのかも知れない。ショウは、1989年2月にブルックリンで地下鉄のホームから転落。左腕を切断し、その後の経過が悪く同年5月に死去。本作のリリースが、死去の前なのかは不明だ。

1. Dr. Chi
2. Odra
3. Stroll And Flight
4. Nostalgia
5. Chain
6. Zoltan

Woody Shaw - trumpet, flugelhorn
Tone Jansa - tenor saxophone, soprano saxophone, flute
Renato Chicco - piano
Peter Herbert - bass
Dragen Gajic - drums

Recorded on July 1986, Radio Ljubljana Musical Center 26, Slovenia.