Ahmad Jamal / The Ahmad Jamal Trio

正確な録音データが見つからない。ギターはRay Crawford(レイ・クロフォード)だが、ベースはIsrael Crosby(イスラエル・クロスビー)一人ではなく、2曲はEddie Calhoun(エディ・カルホーン)に交代している模様。それはよしとして、ドラムレスのトリオとして評価されるアルバムではあるが、明らかに打楽器(ボンゴ?)が加わっている。クロフォードがギターと打楽器を持ち替えているのだろうか。全10曲中の7曲は打楽器の音が入る。ドラムレスではあるもの打楽器レスではないアルバム。さらに、3曲目のRica Pulpaには、ギターをバックにマラカスのような音も遠くに聴こえる。

アーマッド・ジャマルとしては、ドラムは省いたものの効果的な味付けとして打楽器を使おうとした訳である。それを見事に表現できたのが4曲目の「枯葉」。キャノンボール・アダレイ名義のアルバムSomethin' Elseで演じたマイルスの枯葉は、ジャマルのこの演奏がヒントになっていることで有名。

1. Perfidia
2. Love For Sale
3. Rica Pulpa
4. Autumn Leaves
5. Squeeze Me
6. Something To Remember You By
7. Black Beauty
8. The Donkey Serenade
9. Don't Blame Me
10. They Can't Take That Away From Me

Ahmad Jamal - piano
Ray Crawford - guitar
Israel Crosby - bass (tracks 2,4-10)
Eddie Calhoun - bass (tracks 1,3)

Recorded on October 25, 1955 at Columbia 30th Street Studio, NYC.

Cannonball Adderley / Know What I Mean

いろいろと気になることが多いアルバム。まずは、ジャケット。タイトル下には少し小さなフォントでwith Bill Evansとあるので、キャノンボール・アダレイ名義ながらも、エバンスとの合作であることがわかる。しかし、アダレイの表情が妙に硬い。人の足を逆さにした置物が意味不明でもある。その下には、エバンスの写真。これは、エバンスのアルバムSunday At The Village Vanguardに使われたジャケット写真と同じ。ジャケット全体からは、まるでエバンスの追悼アルバムのように思えてしまう。

そして、エバンス作の名曲Waltz For Debbyからスタート。本作が録音された時点では、エバンスの同名のライブアルバムは、まだ録音されていない。エバンス自身による初演は、1956年9月録音のピアノトリオによるアルバムNew Jazz Conceptionsで、本作が2回目のセッション。エバンスは、アダレイをフロントに加えたらどんな感じの曲想になるのか試したかったのだろう。つまり、エバンスの実験アルバムのような気がしてくる。アダレイの表情が硬いのは、実験台にされたKnow What I Mean(オレの気持ちを分かってくれ)ということなのだ。

1. Waltz For Debby
2. Goodbye
3. Who Cares? [take 5]
4. Who Cares? [take 4]
5. Venice
6. Toy
7. Elsa
8. Nancy (With The Laughing Face)
9. Know What I Mean? [re-take 7]
10. Know What I Mean? [take 12]

Cannonball Adderley - alto saxophone
Bill Evans - piano
Percy Heath - bass
Connie Kay - drums

Recorded on January 27, February 21 and March 13, 1961 at Bell Sound Studios, NYC.

Max Roach / Percussion Bitter Sweet

ブッカー・リトルのアルバムOut Frontと同様、書籍『エリック・ドルフィー』を読み直して、購入したアルバム。運よく、Amazonで安価な中古CDを見つけた。2つのアルバムには共通点が多い。どちらも、1961年半ばの録音。Out Frontはリトル、本作はマックス・ローチの作品を並べている(本作のMendacityのみはローチとC. Bayenによる合作)。そして、この2人以外にエリック・ドルフィー、アート・デイビス、ジュリアン・プリースターが、両方のアルバムに参加。

Out Frontは重苦しい空気が漂うが、本作はアフロキューバンのリズムが根底。では、本作は単純にリズムに主眼を置いているかと言うと、各曲のタイトルに主張があることに気付く。曲順に訳すと、「Gavey(ガービー)の幽霊、ママ、優しい戦士、殉教者を称え、虚偽、南アフリカから来た男」となる。唯一の固有名詞がGaveyで、以下に世界大百科事典・第2版から抜粋。常に人種差別と闘ってきたローチらしいアルバムなのだ。

「Marcus Moziah Garvey, 1887‐1940 ― ジャマイカ生れの黒人運動指導者。1914年万国黒人改善協会UNIAを創設。16年渡米し、ニューヨークを根拠地に黒人大衆運動を展開。20年代前半に〈アフリカへの帰還〉運動を組織したが、リベリア政府の背信により挫折。27年アメリカから追放され、ロンドンで客死。広く欧米・アフリカの黒人に人種的誇りと向上への希望を植えつけた功績は大きい」。

1. Garvey's Ghost
2. Mama
3. Tender Warriors
4. Praise For A Martyr
5. Mendacity
6. Man From South Africa

Booker Little - trumpet
Julian Priester - trombone
Eric Dolphy - alto saxophone, flute, bass clarinet
Clifford Jordan - tenor saxophone
Mal Waldron - piano
Art Davis - double bass
Max Roach - drums, percussion
Carlos "Potato" Valdés - congas (tracks 1,3,6)
Eugenio "Totico" Arango (credited as Carlos Eugenio) - cowbell (tracks 1,3,6)
Abbey Lincoln - vocal (tracks 1,5)

Recorded on August 1 (tracks 1 & 5), 3 (tracks 2 & 3), 8 (track 4) and 9 (track 6), 1961 in New York City.