Gato Barbieri / El Pampero

1971年6月のモントルー・ジャズ・フェスティバルでのライブ。ガトー・バルビエリのアルバムは12枚所有しているが、ライブアルバムは本作とChapter Fourのみ。ガトーの正式なディスコグラフィーが見つからないので、何とも言えないが、ライブアルバムは多く遺していないようだ。そういう意味では、貴重な音源である。

原田和典氏のライナーノーツによると、ライブの当日(6月18日)は、ボブ・シールが69年に設立した独立レーベルFlying Dutchman所属のアーティストによるステージだったらしい。従って、ガトー・グループはその中の1つ。全4曲41分40秒のアルバムで、ライブの全貌を捉えていると思える。観客は酔いしれ、鳴りやまない拍手があったに違いないし、アンコールの手拍子も続いただろう。ところが、演奏の終わりに入る観客からの歓声は、各曲とも同じパターン。明らかに被せた感じだ。なお、pampero(パンペロ)とは、アルゼンチン・ウルグアイで吹き降ろす西または南西の突風のこと。ガトーは、突風をスイス・モントルーに巻き起こしたのだ。

1. El Pampero
2. Mi Buenos Aires Querido
3. Brasil
4. El Arriero

Gato Barbieri - tenor saxophone
Lonnie Liston Smith - piano
Chuck Rainey - electric bass
Bernard Purdie - drums
Sonny Morgan - congas
Naná Vasconcelos - berimbau, percussion

Recorded on June 18, 1971 at Montreux Jazz Festival, Switzerland.

Gato Barbieri / Fenix

ガトー・バルビエリとマイルス・デイビスの接点は見いだせない。マイルスのディスコグラフィーに、ガトーは一度も出てこない事実からも明らかだ。しかし、本作の参加メンバーから、間接的なつながりがあったことが分かる。

エレキベースながらロン・カーター。マイルスのアルバムBitches Brew(1969年8月録音)に参加したレニー・ホワイト。アルバムBig Funの収録曲Ife(72年6月録音)に参加したロニー・リストン・スミス。さらに、本作では1曲のみの参加だが、マイルスバンド初のエレキギタリスト(67年12月から68年2月のセッション)であったジョー・ベック。Ifeは本作の録音1年後であるため、マイルスの洗礼を受けた、もしくは受けることになるミュージシャン達である。

そんな彼らを見事に統率したガトー。前作のThe Third Worldではトロンボーンとのフロント2管であったが、本作では1管に絞って不死鳥を演じようとした。ジャケットを見ると、不死鳥がガトー、しっかり掴まっているのがマイルスのように思えてくる。

1. Tupac Amaru
2. Carnavalito
3. Falsa Bahiana
4. El Dia Que Me Quieras
5. El Arriero
6. Bahia

Gato Barbieri - tenor saxophone
Lonnie Liston Smith - piano, electric piano
Joe Beck - electric guitar (track 1)
Ron Carter - electric bass
Lenny White - drums
Gene Golden - congas, bongos
Naná Vasconcelos - berimbau, bongos

Recorded on April 27 and 28, 1971 at Atlantic Recording Studios, New York.

Gato Barbieri / The Third World

ボブ・シールが1969年に設立した独立レーベルFlying Dutchmanは、78年の活動停止まで約100点のアルバムをリリース。そして、2017年10月に第1期30アルバム、18年1月に第2期30アルバムが国内で復刻された。ジャズのポテンシャルが下がっている時代での快挙。その中から、ガトー・バルビエリのアルバム5枚をまとめ買いした。合計は5千円也。そんなマニアがいるはずだと見込んだ販売戦略だったのかもしれない。

アルバムタイトルとなったThe Third World(第三世界)という曲は、収録されていない。つまり、この「第三世界」にガトーのポリシーが込められているということなのだろう。ジャケットにも、そんな雰囲気が感じられる。その裏面には、英文の短い解説が書いてあり、次のようなガトーのコメントを引用している。

"It was originally used by de Gaulle to represent an independent political force, a third force, between the American and Russian blocs. But after de Gaulle, Third World has come to mean the common interests of Asia, Africa and Latin America. As an Argentinian, I am part of that Third World."(この言葉は、もともとド・ゴールによってアメリカとロシアに挟まれた塊としての独立した政治勢力、第三勢力を表すために使用された。しかし、ドゴール以降、第三世界とはアジア、アフリカ、ラテンアメリカの共通の利害関係を意味するようになった。アルゼンチン人である私は、第三世界の一部なんだ。)

1. Medley: Introduction / Cancion Del Llamero / Tango
2. Zelao
3. Antonio Das Mortes
4. Medley: Bachianas Brasileiras / Haleo And The Wild Rose

Gato Barbieri - tenor saxophone, flute, vocals
Roswell Rudd - trombone
Lonnie Liston Smith - piano
Charlie Haden - bass
Beaver Harris - drums
Richard Landrum - percussion

Recorded on November 24 & 25, 1969 at New York City.