このアルバムを聴くと、学生の頃に通っていた東京・中野のジャズ喫茶『ビアズレー』を思い出す。一杯のコーヒーとハイライト。バイトで稼いだ金は、楽器とLP、ジャズ喫茶のコーヒー代、そして焼き鳥屋に消えていった。本作はマイルスの金字塔となったアルバム。そして、60年代ジャズの方向性を決定づけた歴史的名盤と言われている。だが、マイルス自叙伝①には「オレはモード手法を、ギニアのアフリカ・バレエ団の公演を見ていて考えじめた」とあり、本作についての自己評価を以下のように書いている。マイルス自身は失敗作と位置付けているのだ。
「Kind Of Blueの時は、楽譜は書かずに、全員が演奏すべきスケッチだけを持っていった。あのアフリカ・バレエ団のダンサーとドラマーと、フィンガー・ピアノの間に存在していたインタープレイのような、自然発生的な要素が欲しかったからだ。すべてがファーストテイクで完了したところに、あのバンドのメンバーの、レベルの高さが示されている。実際、ビューティフルだった。だが結果的には失敗だった。オレがKind Of Blueで、やろうとしていたことをやり損なったとか、アフリカのフィンガー・ピアノのサウンドを再現し損ねたと言うと、みんな、頭がおかしんじゃないかという。あのレコードは、誰もが大傑作だと信じていたから、オレがかつごうとしているとでも思ったんだろう。オレだってKind Of Blueが好きなことは好きだ。だが、特にAll BluesとSo Whatでオレがやろうとしたことは、完全な失敗だった」。
1. So What
2. Freddie Freeloader
3. Blue In Green
4. All Blues
5. Flamenco Sketches
Miles Davis - trumpet
John Coltrane - tenor saxophone
Cannonball Adderley - alto saxophone (tracks 1,2,4,5)
Bill Evans - piano (tracks 1,3-5)
Wynton Kelly - piano (track 2)
Paul Chambers - bass
Jimmy Cobb - drums
Tracks 1, 2 & 3
Recorded on March 2, 1959 at Columbia 30th Street Studios, NYC.
Tracks 4 & 5
Recorded on April 22, 1959 at Columbia 30th Street Studios, NYC.