Bob Dylan / Live 1964 - Concert At Philharmonic Hall

小倉エージ氏のライナーノーツ「特別なマジックが生まれた一夜」の冒頭。このライブアルバムの姿を見事に捉えている。

「ほとばしる熱情をそのままぶつけたようなパワフルな歌。躍動感あふれるソリッドなギターと、マシンガンのように炸裂するハーモニカ。その表情は実に快活で、生き生きとしている。凄(すざ)まじいまでの勢いがある。それでいて、前つんのめりになるほどの前傾姿勢ではなく、余裕やゆとりがある。決して冷静さを失うことはない。ジョークを飛ばし、おどけてみせたりもする。デビュー当時、ひたすら愛してやまなかったというチャップリンから学んだものなのは明らかだ。まさに奔放というにふさわしく、はつらつとした表情を見せるボブ・ディランがここにいる。1964年10月31日、ニューヨークのアップタウンにあるフィルハーモニック・ホールでの公演を収録したこのアルバムを耳にしていると、胸がときめく。という以上に、身も心も揺さぶられ、じっとしていられなくなる」。

Disc 1
1. The Times They Are A-Changin'
2. Spanish Harlem Incident
3. Talkin' John Birch Paranoid Blues
4. To Ramona
5. Who Killed Davey Moore?
6. Gates Of Eden
7. If You Gotta Go, Go Now (Or Else You Got To Stay All Night)
8. It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding)
9. I Don't Believe You (She Acts Like We Never Have Met)
10. Mr. Tambourine Man
11. A Hard Rain's A-Gonna Fall

Disc 2
12. Talkin' World War III Blues
13. Don't Think Twice, It's All Right
14. The Lonesome Death Of Hattie Carroll
15. Mama, You Been On My Mind
16. Silver Dagger
17. With God On Our Side
18. It Ain't Me, Babe
19. All I Really Want To Do

Bob Dylan - vocals, guitar, harmonica
Joan Baez - vocals (tracks 15-18)

Recorded on October 31, 1964 at Halloween show, New York's Philharmonic Hall.

Bob Dylan / Another Side Of Bob Dylan

「ディランの別の側面」とでも訳そうか。今となっては、その後のディランの軸となったアルバム。本作以後も歌い続けた曲がちりばめられている。All I Really Want To Do, Chimes Of Freedom, My Back Pages, I Don't Believe You (She Acts Like We Never Have Met), It Ain't Me Babeなど。

Chimes Of Freedomは悲痛な歌。様々な境遇に置かれた人々に対し「自由の鐘」を鳴らせとディランは淡々と語る。逃亡者、敗者、反逆者、放蕩者、衛兵、守護人、追放された人、聾唖者、盲人、虐待された人。「そして、我々は自由の鐘が光り輝くのを見つめてきた」と言葉をつなぐ。そして、My Back Pagesは極めて難解。燃え上がる炎、切り裂く憎しみ、偽りの妬み、権利と平等、善と悪。象徴的なキーワードを綴りながら、「ああ、あの頃の私は老い果てていた。今のほうがもっと若い」と結んでいく。タイトルは、ディラン自身の奥底にあった裏面(別の自分)を吐き出すことを意味しているのだろう。

1. All I Really Want To Do
2. Black Crow Blues
3. Spanish Harlem Incident
4. Chimes Of Freedom
5. I Shall Be Free No.10
6. To Ramona
7. Motorpsycho Nitemare
8. My Back Pages
9. I Don't Believe You (She Acts Like We Never Have Met)
10. Ballad In Plain D
11. It Ain't Me Babe

Bob Dylan - vocals, acoustic guitar, piano, harmonica

Recorded on June 9, 1964 at Columbia Studios, NYC.

Bob Dylan / The Time They Are A-Changin'

『時代は変わる』。極めてストレートな邦題、そしてジャケットのディランの表情。このLPを購入したのは、いつだったろう。中学生か高校生になってからか。当時、今は死語となりつつあるプロテストソングのレコードと理解していたが、ディランの内なる闘いだったのだろう。社会の様々な矛盾に対して、詩を書き、それを歌うことが彼の生きていく証だった。そして、彼は今でも歌い続けているのだが・・・。

このアルバムに収録されたOne Too Many Morningsは、1966年のRoyal Albert Hallのライブではエレキギターで再演。そして、76年のHard Rainのライブでは全く違った曲想で演奏。ディランは、曲を創り、それを自ら壊し、そして組み直してきた。過去を葬り去るのではなく、過去と向き合い、今の時代、次の時代の曲にしようと。そんなディランにはまってしまった自分は、最期まで彼と付き合わなければならない。しかし、2012年のTempest以降のアルバム、Shadows In The Night(14年)、Fallen Angels(16年)、Triplicate(17年)では、自らの作品を歌っていない。今年4月の日本公演が中止となってしまった今、ディランは過去に埋もれてしまった歌を掘り出す作業は終わりにすべきだ。「時代は変わる」。だからこそ、自分自身を歌い続けるべきディランであって欲しい。

1. The Times They Are A-Changin'
2. Ballad Of Hollis Brown
3. With God On Our Side
4. One Too Many Mornings
5. North Country Blues
6. Only A Pawn In Their Game
7. Boots Of Spanish Leather
8. When The Ship Comes In
9. The Lonesome Death Of Hattie Carroll
10. Restless Farewell

Bob Dylan - guitar, harmonica, vocals

Recorded on August 6 - October 31, 1963.