Bob Dylan / Together Through Life

完全生産限定盤を所有。ディランがDJを務めるラジオ・アワーを収録したCD、初代マネージャーのロイ・シルバーが「風に吹かれて」が生まれた頃を語る日本語字幕付きDVD、そしてポスターとステッカーがパッケージされた。アルバムというより、まるで福袋。Together Through Life(人生を共に)。ポスターやステッカーにまでして、ディランはこの言葉を伝えたかったのか。

収録された10曲の中で、This Dream Of Youを除く9曲の歌詞がRobert Hunter(ロバート・ハンター)との共作。ハンターは作詞家で、ディランと同じ1941年生まれ。2019年9月に78歳で亡くなった。Grateful Dead(グレイトフル・デッド)は、ハンターの歌詞を多く使ってきた。1994年、デッドと共にThe Rock and Roll Hall of Fame and Museum(ロックンロールの殿堂)入りしている。

歌詞の共作とはどんな作業になるのだろう。ディランが先に書き、ハンターが手を加えていくのだろうか。それともその逆か。いずれにしても、ディラン特有の「体臭」が消え去ってしまい、言葉が軽くなってしまった。その中で、This Dream Of Youで繰り返されるフレーズに注目したい。

All I have and all I know / Is this dream of you / Which keeps me living on(私が手にした全て、知っている全て/それは君の夢見ること/それで私は生き続けられる)。ライナーノーツにディランが語った言葉が掲載されている。「夢は潜在意識から生まれる。夢を分析すれば、自分を知ることができるし予測することもできる。夢は恐怖と未来に結びついている」。「恐怖と未来」にディランらしい表現を感じる。

1. Beyond Here Lies Nothin'
2. Life Is Hard
3. My Wife's Home Town
4. If You Ever Go To Houston
5. Forgetful Heart
6. Jolene
7. This Dream Of You
8. Shake Shake Mama
9. I Feel A Change Comin' On
10. It's All Good

Bob Dylan - guitar, keyboards, vocals
Mike Campbell - guitar, mandolin
Tony Garnier - bass guitar
Donnie Herron - steel guitar, banjo, mandolin, trumpet
David Hidalgo - accordion, guitar
George Receli - drums

Recorded in December 2008.

Disc 2 - Theme Time Radio Hour: Friends & Neighbors
1. Howdy Neighbor - Porter Wagoner & The Wagonmasters
2. Don't Take Everybody to Be Your Friend - Sister Rosetta Tharpe
3. Diamonds Are a Girl's Best Friend - T-Bone Burnett
4. La Valse de Amitie - Doc Guidry
5. Make Friends - Moon Mullican
6. My Next Door Neighbor - Jerry McCain
7. Let's Invite Them Over - George Jones & Melba Montgomery
8. My Friends - Howlin' Wolf
9. Last Night - Little Walter
10. You've Got a Friend - Carole King
11. Bad Neighborhood - Ronnie & The Delinquents
12. Neighbours - The Rolling Stones
13. Too Many Parties and Too Many Pals - Hank Williams
14. Why Can't We Be Friends - War

Disc 3 - DVD
1. Roy Silver - The Lost Interview

Ry Cooder / The Prodigal Son

アルバムThe Prodigal Sonは、2012年8月のアルバムElection Specialから、6年振りの18年5月にリリース。自分は同年10月に輸入盤を入手。長年待たされ続けただけにあって、期待が高かった。だが、裏切られたとまでは言わないものの、今一つ熱さが伝わってこなかった。自分の感性が衰えたとも言えるが、それぞれの収録曲に込められたメッセージを受け止めるには、自力で歌詞を訳さなければならないと言う事なのだ。そうでないと、このアルバムには迫れない気がする。

例えば、アルバムタイトルにしたトラディショナル曲The Prodigal Son(放蕩息子)。この曲をタイトルにした理由は、歌詞を読み取るしかない。そして、そこからジャケットのデザインも見えてくるはずだ。ところで、このアルバム以降、ライ名義のアルバムは世に出ていない。それが気になる。写真は、所有するライのアルバム20枚。

1. Straight Street
2. Shrinking Man
3. Gentrification
4. Everybody Ought to Treat A Stranger Right
5. The Prodigal Son
6. Nobody's Fault But Mine
7. You Must Unload
8. I'll Be Rested When The Roll Is Called
9. Harbor Of Love
10. Jesus And Woody
11. In His Care

Ry Cooder - vocals, guitar, banjo, mandolin, bass, keyboard
Joachim Cooder - drums, percussion
Robert Francis - bass on "you must unload"
Aubrey Haynie - violin on "you must unload"
Terry Evans, Arnold McCuller, Bobby King - vocals

Bob Dylan / Tempest

デビュー50周年に通算35作目となるオリジナルアルバム。1曲目Duquesne Whistleは、ロバート・ハンターとの共作。2008年12月録音の前作Together Through Lifeは、全10曲中の9曲が彼との共作だったが、Tempestはこの曲のみ。録音は12年初頭。この約3年の間に、ディランはじっくりと新作の構想を練ったに違いない。

ジャケット内には参加メンバーの集合写真。詳しく調べていないが、アルバムにメンバーの写真を掲載するのは珍しいだろう。「ディラン組」という感じだ。写真左から、ドニー・ヘロン、トニー・ガーニエ、ボブ・ディラン、ジョージ・リセリ、スチュ・キンボール、チャーリー・セクストン。アコーディオンなどを担当したデイヴィッド・イダルゴが写っていない。つまり、イダルゴが撮ったスナップ写真ではないだろうか。

全10曲を日本語のタイトルにしてみた。「デューケインの汽笛」、「真夜中を過ぎたばかり」、「狭い道のり」、「長くつらい日々」、「血で支払う」、「スカーレット街」、「昔のローマの王様たち」、「ブリキの天使」、「大嵐」、「転がり続けろ、ジョン」。どの曲名も興味深いが、特に「血で支払う」は謎を秘めている。繰り返されるフレーズはI pay in blood, but not my own(わたしは血で支払う、でもわたしの血ではない)。誰に何のために支払うのか? 自分の血でなければ誰の血なのか? ディランは、12年11月から19年11月まで、ライブでこの曲を477回も歌い、血を流し続けてきた。だが、他人の血なのだ。

ところで、発売と同時に購入したアルバムには、TEMPESTと題された60ページの小型手帳が同梱されていた。改めてページをめくってみると、76年4月号の「ヤング・ギター」の表紙がある。Tempestのリリースは12年9月。その36年前に発行された日本の雑誌の表紙をどうやって探したのだろう。「血で支払う」と同様に謎なのである。

1. Duquesne Whistle
2. Soon After Midnight
3. Narrow Way
4. Long And Wasted Years
5. Pay In Blood
6. Scarlet Town
7. Early Roman Kings
8. Tin Angel
9. Tempest
10. Roll On John

Bob Dylan - guitar, piano, vocals, production
Tony Garnier - bass guitar
Donnie Herron - steel guitar, banjo, violin, mandolin
David Hidalgo - guitar, accordion, violin
Stu Kimball - guitar
George G. Receli - drums
Charlie Sexton - guitar

Recorded in January - March 2012 at Groove Masters Studios, Santa Monica, CA.