高田渡 / 貘

さて、高田渡のアルバムであるが、渡だけのアルバムではない。多くのミュージシャンが関わっている。サブタイトルは「詩人・山之口貘をうたう(監修・高田渡)」となっている。そして、CDの帯にはこう書いてある。「ボクは今、やっと山之口貘さんに逢えた様な気がします。ステキな詩は反芻(はんすう)しながら生きていくと思っています」。

この反芻という言い方が、渡らしい。渡の生き方は反芻だったような。決して唄を作り続けるとは思っていなくて、自分の「唄」を探し続けてきた人生ではなかったのか。ライナーノーツには、こうも書かれている。「山之口貘さんの詩に出会ったのは、ボクが十八の頃。一年程本棚の片隅に眠っていた。…気がつくと貘さんのトリコになっていた、いつの間にか歌っていた」。その代表曲が「生活の柄」。渡が最初に録音したのは、1971年のアルバム「ごあいさつ」。それから人生を終えるまで歌い続けてきた。1曲目「年齢」以外は、全て貘の詩。ブックレットには、その原詩が載っている。いわば、このアルバムは貘の詩集とも言えるのだ。

1. 年齢・歯車
2. 結婚
3. 深夜
4. たぬき
5. 座布団
6. 告別式 I
7. 玩具
8. 第一印象
9. 鮪に鰯
10. 頭をかかえる宇宙人
11. 貘
12. 会話
13. 紙の上
14. 告別式 II
15. ものもらい
16. 石
17. 夜景
18. 生活の柄

・ 参加ミュージシャン:高田渡, 大工哲弘, 佐渡山豊, 石垣勝治, 嘉手苅林次, つれれこ社中, 大島保克&オルケスタ・ボレ, ふちがみとふなと, 渋谷毅, 内田勘太郎(from憂歌団), ローリー, 関島岳朗, 中尾勘二, 桜沢有理
・ 録音:1997.12 - 1998.4 国際貿易スタジオ(那覇・泊), ふぉるく(東京・大森), SPACE VELIO(東京・阿佐ヶ谷)
・ 発売:1998年5月23日

Bob Dylan / Springtime In New York: The Bootleg Series, Vol.16 (1980-1985)

2021年9月にリリースされたディランの『ブートレッグ・シリーズ第16集』。国内盤は2枚組4,180円、5枚組19,800円と非常に高価で、しかもディランの低迷期のアウトテイク集ということもあり、購入を見送っていた。それから半年後、輸入盤2枚組が1,926円と安価になり、遅まきながら手に入れた。タイトル通り、1980年から85までに録音された3枚のアルバムShot Of Love, Infidels, Empire Burlesqueからのアウトテイク12曲、別テイク10曲、そしてリハーサル2曲。ライブ1曲という構成。

そもそも、ディランのアルバムとしてはワーストの部類に入る3枚。そこから零れ落ちたセッションの寄せ集め。Infidels収録曲Jokermanについての1991年のインタビューでは、「自分からは過ぎ去ってしまった曲であり、アルバムInfidelsの多くの曲も同じだ」とディランは答えている。この答えには、Shot Of LoveとEmpire Burlesqueも含まれていると想像できる。結局のところ、この第16集からの新しい発見は自分にはなかった。Shot Of Loveの傑作Every Grain Of Sandの別テイクが入っていれば、見方が違ったのに。

Disc 1
1. Angelina [Shot Of Love Outtake]
2. Need A Woman [Rehearsal]
3. Let's Keep It Between Us [Rehearsal]
4. Price Of Love [Shot Of Love Outtake]
5. Don't Ever Take Yourself Away [Shot Of Love Outtake]
6. Fur Slippers [Shot Of Love Outtake]
7. Yes Sir, No Sir [Shot Of Love Outtake]
8. Jokerman [Infidels Alternate Take]
9. Lord Protect My Child [Infidels Outtake]
10. Blind Willie McTell [Take 5 - Infidels Outtake]
11. Don't Fall Apart On Me Tonight [Version 2] [Infidels Alternate Take]
12. Neighborhood Bully [Infidels Alternate Take]
13. Too Late [Band Version] [Infidels Outtake]

Disc 2
1. Foot Of Pride [Infidels Outtake]
2. Sweetheart Like You [Infidels Alternate Take]
3. Someone's Got A Hold Of My Heart [Infidels Outtake]
4. I And I [Infidels Alternate Take]
5. Tell Me [Infidels Outtake]
6. Enough Is Enough [Live from Slane Castle, Ireland]
7. Tight Connection To My Heart (Has Anyone Seen My Love) [Empire Burlesque Alternate Mix]
8. Seeing The Real You At Last [Empire Burlesque Alternate Take]
9. Emotionally Yours [Empire Burlesque Alternate Take]
10. Clean Cut Kid [Empire Burlesque Alternate Take]
11. New Danville Girl [Empire Burlesque Outtake]
12. Dark Eyes [Empire Burlesque Alternate Take]

Released on September 17, 2021.

加川良 / プロポーズ

2015年9月27日付けのブログで次のように書いた。久しぶりに聴いたが、今でも同じ気持ちだ。

困った。加川良は言葉で聴いてきた。このアルバムはリズムで聴かせようとしている。歌い手は変わっていく。それはそれで自然。聴き手は歌い手を常に追いかけていないと、変曲点を捉えきれない。加川良の歌は本質的には変わっていない。だけど、リズムに力点を置いた理由が分からない。それでも、「ゴスペル ―嘘でもいいから―」は加川らしい心に沁みる唄。満月の夜にふさわしい。

1. コスモス
2. HELP!
3. 通りゃんせ
4. ラブソング
5. 道
6. セリフ
7. HIGH-GEAR
8. 日本海が広がっている
9. ゴスペル ―嘘でもいいから―
10. 誕生日

発売 1981年4月21日