吉田拓郎 / AGAIN

アルバムAGAINに収録された全15曲に対する拓郎の15のメッセージが、ライナーノーツに書かれている。例えば『まにあうかもしれない』には「理由なんてなかった/自由の意味すらわからなかった/何となくこじつけながら生きていた/今思うのは/なんて年老いた若さだったのか/なんて面倒な若者だったのか/もう間に合わない」。『わしらのフォーク村』には「初恋の人に再会する/胸がときめくのか/現実的になってしまうのか/逢わない方がいい/そうだ逢わない方が」。

さらに、『純情』には「永遠のたずね人が/いつの時代にもさまよっている/”もういいだろう”と言い聞かせながら/”まだ足りない”自分に気付いているのだ/だから旅はまだ続く/ちょっとキツイ事もあるけれど/歩かなければならない」。ラスト曲『アゲイン(未完)』を除き、残り14曲はセルフカバー。かといって、無理にアレンジや曲想を変えたりはしていない。メッセージにあるように、1曲1曲を振り返りながら、新たな気持ちで録音に臨んだのだろう。タイトルはラスト曲を示しているだけでなく、旅はまだ続くAGAINといった感じなのだ。

1. 純情
2. 裏街のマリア
3. たえなる時に
4. 爪
5. アキラ
6. 風邪
7. 僕の大好きな場所
8. サマータイムブルースが聴こえる
9. まだ見ぬ朝
10. 気持ちだよ
11. わしらのフォーク村
12. いつか夜の雨が
13. まにあうかもしれない
14. 素敵なのは夜
15. アゲイン(未完)

武部聡志 - キーボード, ピアノ
鳥山雄司 - ギター, プログラミング・キーボード
渡辺格 - ギター, バンジョー
遠山哲朗 - ギター
松原秀樹 - ベース
河村智康 - ドラムス, マラカス, タンバリン
小田原豊 - ドラムス
朝倉真司 - パーカッション
山中雅文 - シンセサイザーオペレーター
宮下文一 - コーラス
今井マサキ - コーラス
大嶋吾郎 - コーラス
大滝裕子 - コーラス
柏木広樹ストリングス - ストリングス

発売 2014年6月18日

Bob Dylan / Time Out Of Mind

アルバムUnder The Red Sky以来となる7年ぶりのオリジナル曲集アルバム。1997年9月リリース。長いトンネルをようやく抜けたディラン。菅野ヘッケル氏の解説によると、ディランはこう語っている。「わたしのアルバムを聞く人のなかには、歌詞だけを取り上げてあれこれ批評する人がかなりいるようだが、この新作は音楽を聞いてほしいと思っている。詩を分析するのではなく、演奏そのものを聞いてほしい。頭で考えるよりも、心で感じてほしい」。

この言葉は自信の表れだろう。全11曲中、9曲が5分を超えている。ラストのHighlandsは16分33秒。この時点で最長記録。そんな記録とは関係なく、1998年グラミー賞で最優秀アルバム賞を受賞。ディランは、ここに復活したのだ。しかし、ハーモニカを演奏しているは5曲目のTryin' To Get To Heavenのみで、演奏スタイルの変化を感じる。この曲では、「ドアが閉まってしまう前に天国に辿り着こう」と歌う。次のNot Dark Yetは、「まだ暗くない、だけど間もなくそうなるだろう」と歌い、タイトルTime Out Of Mindの関連性を見いだすことができる。

アルバム全体としては、固有名詞はあまり出て来ない。だが、Highlandsで一気に噴き出す。歌詞の中ではthe Highlandsと書いているので、スコットランドの高地地方を示している。そして、なんの脈略もなく「ニール・ヤングを聴いている、ボリュームを上げると、音を下げろって誰かがいつも叫ぶんだ」と出てくる。ここでも、ディランの本領発揮。ちなみに、2020年6月にリリースされたアルバムRough And Rowdy Waysの収録曲Murder Most Foulは16分54秒。23年ぶりに記録を更新したのである。

1. Love Sick
2. Dirt Road Blues
3. Standing In The Doorway
4. Million Miles
5. Tryin' To Get To Heaven
6. 'Til I Fell In Love With You
7. Not Dark Yet
8. Cold Irons Bound
9. Make You Feel My Love
10. Can't Wait
11. Highlands

Bob Dylan - guitar, harmonica, piano, vocals
Bucky Baxter - acoustic guitar, pedal steel
Brian Blade - drums
Robert Britt - Martin acoustic, Fender Stratocaster
Cindy Cashdollar - slide guitar
Jim Dickinson - keyboards, Wurlitzer electric piano, pump organ
Tony Garnier - bass guitar, upright bass
Jim Keltner - drums
David Kemper - drums
Daniel Lanois - guitar, mando-guitar, Firebird, Martin 0018, Gretsch gold top, rhythm guitar, lead guitar
Tony Mangurian - percussion
Augie Meyers - Vox organ combo, Hammond B3 organ, accordion
Duke Robillard - guitar, electric l5 Gibson
Winston Watson - drums

Recorded in 1996 - 1997 at Criteria Recording Studios, Miami, Florida.

Bob Dylan / Masked And Anonymous

映画『ボブ・ディランの頭のなか』のサントラ盤。この映画は最悪の評価だったらしく、日本では上映されていない模様。国内向けのDVDも見つからない。まぁ、ディランとは言え、ときには愚作を世に出してしまうのだ。2003年の出来事。

ところが・・・。いきなり真心ブラザーズによる日本語のMy Back Pagesからスタート。収録曲などを知らずに購入し、最初に聴いた時はビックリした。まさか、日本語の歌から始まるなんて思ってもみなかったのだ。そして、イタリア語によるLike A Rolling Stoneなども出てくる。ディランをどう聴くか。そんなことを意識させるアルバムでもある。そもそも、ディランが歌う言葉を日本人が全て理解できるはずがない。だが、ディランが伝えたいことは、数多く聴けば体に沁みてくる。「言葉」ではなく、「言葉を越えた感覚」で聴く感じだ。真心ブラザーズによるMy Back Pagesは、次のように始まる。

白か黒しかこの世にないと思っていたよ
だれよりも早くいい席でいい景色が見たかったんだ
僕を好きだといってくれた女たちもどこかへ消えた
ああ、あのころの僕より今のほうがずっと若いさ

「白か黒」の部分の原詩は、Lies that life is black and white Spoke from my skull.(人生とは白黒割り切れるものという虚言を頭蓋骨で語る)で、真心ブラザーズは感覚で捉えているのだ。

1. My Back Pages / Magokoro Brothers
2. Gotta Serve Somebody / Shirley Caesar
3. Crash On The Levee (Down In The Flood) / Bob Dylan
4. It's All Over Now, Baby Blue / Grateful Dead
5. Most Of The Time / Sophie Zelmani
6. On A Night Like This / Los Lobos
7. Diamond Joe / Bob Dylan
8. Like A Rolling Stone (Come Una Pietra Scalciata) / Articolo 31
9. One More Cup Of Coffee (Valley Below) / Sertab
10. If You See Her, Say Hello (Non Dirle Che Non E'Cosi') / Francesco De Gregori
11. Dixie / Bob Dylan
12. Senor (Tales Of Yankee Power) / Jerry Garcia
13. Cold Irons Bound / Bob Dylan
14. City Of Gold / The Dixie Hummingbirds

Released on July 21, 2003.