加川良 / A Live.

このアルバムの正式タイトルは『加川良、ウィズ、村上律。(A Live.)』。タイトルというより概要になっている。つまり、加川良と村上律がスタジオでライブ。ただし、一日で仕上げたのではなく、データによると1982年9月から10月となっている。新曲は入っていないが、内容が素晴らしいだけにタイトルを工夫して欲しかった。

加川良の唄は、そして詩は、自分を自然と振り返させてくれる。だが、何度聴いても懐メロにならない。このアルバでは、村上律のラップ・スティール・ギターが、それを一層強調する。

1. 北風によせて
2. 駒沢あたりで
3. コスモス
4. 偶成
5. 今晩はお月さん
6. オレンジ・キャラバン
7. 祈り
8. ばびぶぶべべ
9. 女の証し
10. ゴスペル

加川良 - vocals, acoustic guitar
村上律 - lap steel guitar, vocals

Recorded in September - October 1982 at Sunrise Studio.

吉田拓郎 / LIVE'73

歌詞カードの最後には、拓郎自身の長文のコメントが載っている(1973年11月29日付け)。ライブ・レコーディングには満足した拓郎であるが、仕上がったアルバムでは、ボーカルの音量がオフ気味である。

「このライブレコードが店頭に並ぶ頃には僕も一児の父親になっている筈である。この父親は、だらしないのだ。生まれくる子供に何をしてやればよいのかという事さえ知らない。ましてや立派に育てていく自信などないのだ。否、子供はきっと自力で立ちあがるだろう。自力で大きくなっていくに違いない。〈中略〉僕は古い船に乗り込む新しい水夫である。しかし、子供は新しい船に乗り込む新しい水夫なのだ」。
〈中略〉
「さて、僕はライブレコーディングというものについて、いささか自信を失いつつあったので、改めて音を聴き直してみるまではレコードにしてしまう事と非常に不安を抱いていた。しかし、今回のライブレコーディングに関しては、少々大袈裟な云い方をすれば、自分としてはあまりにうまくいきすぎたと思っている。賛否両論ある事とは思うが、満足している事は否定しない」。

1. 春だったね '73
2. マークⅡ '73
3. 君去りし後
4. 君が好き
5. 都万の秋
6. むなしさだけがあった
7. 落陽
8. 雨が空から降れば
9. こうき心 '73
10. 野の仏
11. 晩餐
12. ひらひら
13. 望みを捨てろ

よしだたくろう - vocal
石川鷹彦 - acoustic guitar, banjo, dobro, flat mandolin
田中清司 - drums
岡澤章 - electric bass
高中正義, 常富喜雄 - electric guitar
栗林稔 - electric piano
松任谷正隆 - hammond organ
田口清, 吉田拓郎 - acoustic guitar
内山修 - percussion
ウイルビーズ - back ground vocals
村岡健, 羽鳥幸次, 村田文治, 佐野健一, 新井英治 - brass section
新音楽協会 - strings section

録音 1973年11月26,27日 / 東京中野サンプラザホール

Bob Dylan / "Love And Theft"

アルバムタイトルには引用符が付いて『"Love And Theft"』(愛と盗み)。つまり、書物などからの引用を暗示している。2001年9月11日、全米発売。同時多発テロとは無関係だが、『浅草博徒一代』(佐賀純一著)から借用した表現が見られる箇所が、6曲もあることはよく知られている。文庫版のあとがきで、佐賀氏は「ボブ・ディランという偉大な歌手が新しい命を吹き入れてくれたことを、私は心から感謝している」と書いている。英訳はJohn Besterで、書名はConfessions of a Yakuza(あるヤクザの告白)。ディランはYakuzaという言葉を知っていて、興味を持ち読み始めたのだろう。

そして、気になる表現をもとに曲作りに取り掛かった。それだけではない、1曲目はイギリスの童謡Tweedledum and Tweedledeeをヒントにしている。8曲目Moonlightには、It takes a thief to catch a thief(蛇の道は蛇)、For whom dose the bell toll(誰がために鐘は鳴る)のセンテンス。格言とヘミングウェイの小説から引用。最終曲Sugar Babyの歌詞の最後には、ソングライターGene Austinの作品Lonesome Roadからのパクリが出てくる。"Love And Theft"は"Lyric And Theft"でもあるのだ。

だが、そんな盗用の部分だけを着目しても意味が無い。Mississippiの歌詞はこう始まる。「一歩一歩、わたしたちは歩き続ける/きみが生きられる日は限られているし、このわたしもそうだ/時間は積み重なり、もがきながらもどうにか暮していく/誰もが閉じ込められ、逃げ場所はどこにもない」。そして、「わたしのたった一つの間違い/それはミシシッピに一日多く留まってしまったこと」と繋げていく。ノーベル文学賞の決め手となった一曲。そう断言したい名曲である。結局のところ、自力で歌詞を訳さないとディランに近づけないことを実感させられるアルバムなのだ。

1. Tweedle Dee & Tweedle Dum
2. Mississippi
3. Summer Days
4. Bye And Bye
5. Lonesome Day Blues
6. Floater (Too Much To Ask)
7. High Water (For Charley Patton)
8. Moonlight
9. Honest With Me
10. Po' Boy
11. Cry A While
12. Sugar Baby

Limited edition bonus disc
1. I Was Young When I Left Home / recorded on December 22, 1961.
2. The Times They Are a-Changin' (alternate version) / recorded on October 23, 1963.

Bob Dylan - vocals, guitar, piano
Larry Campbell - guitar, banjo, mandolin, violin
Tony Garnier - bass guitar
David Kemper - drums
Augie Meyers - accordion, Hammond B3 organ, Vox organ
Clay Meyers - bongos
Charlie Sexton - guitar

Recorded in May 2001.