山下洋輔 / Sentimental

ヨーロッパではすでに認知された洋輔が、アメリカへ殴り込んだ1985年8月。その旅の仕上げは、ニューヨークのスイート・ベイジルでのソロ・ライブ。それに続き、スタジオでのソロ演奏がこのアルバムとなった。そして、スイート・ベイジルのライブの模様が、スタジオ録音の翌29日、ニューヨーク・タイムズに掲載された。以下は、ライナーノーツからの抜粋。

『火曜日の「スイート・ベイジル」は、山下洋輔のソロ・コンサートの強襲をうけて、おおいに揺れ動いた。〈中略〉山下氏のステージは、スタンダードナンバーやクラシック(その中には「チュニジアの夜」やラベルの「ボレロ」があった)を織り込み、音色のハーモニーとパーカッシブで不協和な音の広がりとの間を行き来していた。リズムとハーモニーのかもし出すプレッシャーは勢いを増し、また、かすかに原曲を感じさせる無調の楽節の中で爆発する。そして山下氏のプレイは普通のコードに戻り静まる』。火曜日は27日なので、ライブ翌日がスタジオ録音。もし、ライブでブーイングが鳴り響いたら、スタジオ録音はキャンセルになったのだろうか。なんとなく、用意周到された感じがしてならない。

1. Over The Rainbow
2. My One And Only Love
3. Humoresque
4. Autumn Leaves
5. Träumerei
6. Stardust
7. Summertime
8. Tea For Two
9. Bolero
10. Secret Love
11. Piano Concert No.2
12. P.S. I Love You
13. Good-bye

山下洋輔 - piano

Recorded on August 28, 1985 at RCA A Studio, NYC.

山下洋輔 / It Don't Mean A Thing

山下洋輔のアルバムは36枚所有している。改めて調べたところピアノソロは7枚で、その中のInvitationとIt Don't Mean A Thingがライブ。Invitationの録音は1979年2月22日でフジテレビ・ギャラリー。それから5年後に新宿ピットインでのピアノソロに挑戦。しかし、録音と編集の関係だろうか、拍手がイマイチで盛り上がりに欠けるのが気になる。

ヨースケの一つの真骨頂は、バトンの受け渡しにあると思っている。サックス(例えば坂田明)からもらったフレーズを要素分解して自分流に組み立て、剛速球でドラム(例えば森山威男)に投げつける。この受け渡しに醍醐味がある。ピアノソロで勝負するとき、ヨースケは誰と会話(キャッチボール)するのだろうか。ピットインの観客が冷静にヨースケのピアノを聴いているとなると、鍵盤の上でボールを転がすしかない。CD化で3曲増え曲順も大きく変わったが、全体的な雰囲気はLPと変わらない。

ちなみに、このアルバムのタイトルに関わらず、It Don't Mean A Thingという曲は、邦題「スイングしなけりゃ意味がない」とされ、Doesn'tではなくDon'tなのは南部黒人の方言。

1. 'Round Midnight
2. Hamp's Blues
3. My Funny Valentine
4. Mt. Senba
5. Jamaican Parrot
6. My One And Only Love
7. It Don't Mean A Thing
8. Memories

山下洋輔 - piano

録音 1984年2月12日 / 新宿ピットイン

山下洋輔 / In Europe 1983

CD化でAlone TogetherとBattle Royalの2曲が追加され、LPでは4分33秒にカットされていたPanja Suiteが17分34秒のノーカットで収録。曲順もライブ演奏通りに並べ替えられたようだ。凄みある武田和命のテナーによるスタンダード曲Alone Togetherがアルバムの中間に配置され、ひとつのアクセントとなっている。

洋輔のアルバムは36枚所有。ジャケットを眺めて見ると、彼の変遷がよくわかる。日本を制し、ヨーロッパ、そしてアメリカへと進出。その間に、日本の童謡・落語を題材にし、円周率やピカソを遊び相手にしてきた。1969年9月に山下洋輔トリオ名義でアルバムをリリース。そのブランドを14年間続け、このアルバムで終止符を打った。ある意味、彼の自信と野望を示したアルバムとも言える。ピカソを演じてブランドを脱ぎ捨てたのだ。

1. Panja Suite
2. Strawberry Tune
3. Alone Together
4. Honeymoon Suite
5. Battle Royal
6. Picasso

武田和命 - tenor saxophone
林栄一 - alto saxophone
山下洋輔 - piano
小山彰太 - drums

Recorded on July 8, 1983 at Heidelberger Jazztage.