Wynton Marsalis / J Mood

1980年代の半ば、新主流派の旗頭として脚光を浴びたマルサリスであった。確かに洗練されたジャズを演奏したものの、新しいエネルギーを感じなかった。いわば、安全第一のジャズ。すでに、この録音から35年以上経過しているももの、彼は今の時代を切り開いてはいない。ライナーノーツでは、小川隆夫氏が次のように締め括っている(1986年8月24日付け)。

「伝統に立脚した80年代の感性、それが新伝承派の音楽的コンセプトであるが、本作はまさしくこのことを踏襲した上で、さらに3歩も4歩も前進させたものとなっている。そこにウィントンの創造者としての非凡なる才能を見ずにはいられない。本作は限りなく前進を続ける80年代のジャズ・クリエイター、ウィントン・マルサリスが新境地を示す傑作だ」。そもそも「伝統に立脚」とは何なのか。当時のスイングジャーナルが勝手に叫んでいただけで、ジャズは古典芸能ではないのだ。結局のところ、マルサリスは前進ではなく、狭い井戸の中をぐるぐる回っていただけに過ぎない。

1. J Mood
2. Presence That Lament Brings
3. Insane Asylum
4. Skain's Domain
5. Melodique
6. After
7. Much Later

Wynton Marsalis - trumpet
Marcus Roberts - piano
Bob Hurst - bass
Jeff "Tain" Watts - drums

Recorded on December 17, 18, 19 & 20, 1985 at RCA Studios, NYC.

Wayne Shorter / Native Dancer

このアルバムのWikipediaには、「ブラジル音楽色の強いフュージョンの傑作」「明らかにショーターの最重要作の一つであるアルバム」と書かれている。聴く人によっては、そう感じるのだろう。自分としては、ブラジル音楽は良く知らないし、フュージョンには興味がないので、駄作としか思えない。

ショーターなら、ミルトン・ナシメントと組んで新たなジャズの可能性を示してくれると思い、購入したのだが…。言葉は悪いが余興としか思えない。1970年8月に録音したショーター名義のアルバムOdyssey Of Iskaから4年振りに取り組んだリーダーアルバム。在籍中のウェザー・リポートとは180度異なる色を出そうとしたのだろう。その答えの一つが「ブラジル」というのは、安易に思えて仕方ないのだ。

1. Ponta De Areia
2. Beauty And The Beast
3. Tarde
4. Miracle Of The Fishes
5. Diana
6. From The Lonely Afternoons
7. Ana Maria
8. Lilia
9. Joanna's Theme

Wayne Shorter - soprano saxophone, tenor saxophone
Milton Nascimento - guitar, vocals
David Amaro - guitar
Jay Graydon - guitar
Herbie Hancock - piano, keyboards
Wagner Tiso - organ, piano
Dave McDaniel - bass
Roberto Silva - drums
Airto Moreira - percussion

Recorded on September 12, 1974 at The Village Recorder, Los Angeles, CA.

Wes Montgomery / California Dreaming

例えば、ボブ・ディラン。フォークギターからエレクトリックギターに持ち替えて、大きな非難を浴びた。しかし、彼は自分の音楽を貫き通し、今では、他の追従を許さぬ最高峰のアーティストである。

ウェス・モンゴメリーは、独自のオクターブ奏法を生み出し、ジャズギターに新たな可能性を見出した。このアルバムを通して、それをポップ音楽にも展開した。時代の流れに乗ったとも言える。海の満ち引きには逆らえない。美女がたたずむジャケットとして、人気があるようだが、ものは考えよう。こういう音楽でいいのかと彼女は思い悩んでいるとも感じ取れる。

仮に自分がジャズ喫茶をやっているなら、昼間のコーヒータイムには、鳴らすことができないアルバム。日が暮れて、ちょいと酔いが回りはじめたお客に、会話と酒を勧めるための音楽。売上貢献ということだな。ウェスは、自分に納得して、このアルバムを録音したのだろうか。それは果かない「カルフォルニアの夢」だったと思いたいのだが。

1. California Dreaming
2. Sun Down
3. Oh, You Crazy Moon
4. More, More, Amor
5. Without You
6. Winds Of Barcelona
7. Sunny [alternate take]
8. Sunny
9. Green Peppers
10. Mr. Walker
11. South Of The Border

Wes Montgomery - guitar
Bernie Glow, Mel Davis, Jimmy Nottingham - trumpet
Wayne Andre, Johnny Messner, Bill Watrous - trombone
Stan Webb - clarinet, English horn, saxophone
Raymond Beckenstein - flute, piccolo, saxophone
James Buffington - French horn
Jack Jennings - castanets, scratching, vibraphone
Don Butterfield - tuba
Bucky Pizzarelli, Al Casamenti - guitar
Herbie Hancock - piano
Richard Davis - bass
Ray Barretto - percussion
Grady Tate - drums

Recorded on September 14, 15 & 16, 1966 at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, New Jersey.